日本語専門家 派遣先情報・レポート
カンボジア日本人材開発センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
カンボジア日本人材開発センター
Cambodia-Japan Cooperation Center (CJCC)
派遣先機関の位置付け及び業務内容
CJCCはカンボジアと日本政府間の無償資金協力及び技術協力プロジェクトにより、王立プノンペン大学内に設立。日本の知識や経験を活かし、カンボジアの市場経済化を担う実務人材育成、カンボジアと日本の相互理解の深化を目的としている。主な事業はビジネストレーニング、日本語人材育成、文化交流。2013年までは国際協力機構(JICA)経由で、2014年から国際交流基金(JF)より直接専門家を派遣している。日本語コースは2014年10月よりJF日本語教育スタンダードに基づいたJF日本語講座を開講。スダンダードに基づいた日本語教育の普及、教師研修、カンボジアの日本語教育拠点としての役割が期待されている。
所在地
Russian Confederation Blvd., Toul Kork, Phnom Penh, CAMBODIA
国際交流基金からの派遣者数
専門家:1名 調整員:1名
日本語講座の所属学部、学科名称
日本語講座の概要

日本語教師の卵に『まるごと』を!

カンボジア日本人材開発センター
レイン幸代

 カンボジア日本人材開発センター(以下、CJCC)は、「ビジネス」「日本語」「日本文化」の3本の柱を中心に運営される教育青年スポーツ省傘下の独立運営組織です。国際交流基金はここで2004年から日本語関連の活動サービスを始め、2014年からは『まるごと 日本のことばと文化』(以下、『まるごと』)を用いた日本語講座の運営を支援してきました。
 しかし、カンボジアではCJCC以外で『まるごと』を教材として使っている日本語教育機関は、非常に少ないと言わざるを得ません。今回は、プノンペン大学外国語学部日本語学科(以下、日本語学科)の協力のもと、初めて実現した「まるごと教育実習コース」についてご紹介します。

グループワーク中の写真
グループワーク中

 CJCCでは、過去に『まるごと』の使い方をテーマにした教師研修を開催したこともありますが、上述の通り、『まるごと』を使っている教育機関は、カンボジアではとても少ないです。もちろん、どんな教科書を使うかは、その機関の教育目的に沿って決められるものです。でも、もし「食わず嫌い」で『まるごと』が使われていないのであれば、それはもったいない。報告者は、『まるごと』の良さを知ってもらうチャンスを作りたいと考えました。
 しかし、教育機関に持っていって「使ってください」とお願いするのは不可能です。それならば、将来日本語教師になる「卵」たちに、この教科書のことを知ってもらうのはどうだろう?
 そこで日本語学科に派遣されている松田朋子専門家に相談し、2023年3月の新学期から始まる日本語学科4年生の教育実習クラスのシラバスの一部に、「『まるごと』を使って模擬授業をするクラス」を組み込んでもらうことになりました。ここの学生さんたちは、卒業して日本語教師になる人が多いです。在学中に『まるごと』について知ってもらい、将来日本語を教えるときに「そういえば、在学中にあんな教科書のことを勉強したな。使ってみようかな」と、選択肢の一つとなれば、と思ったのです。

 このコースには、CJCCに勤務する常勤日本語講師2名(カンボジア人、日本人)も講師として参加しました。CJCCでは『まるごと』を使って実際に授業をしていますが、模擬授業をする学生に対して『まるごと』について講義をするためには、いつもとは違う角度から『まるごと』を分析する必要があります。日本語教師としての成長にも役立つと思われたので、話を持ちかけたところ、「ぜひやってみたい」と快諾してくれました。

 元々存在する学科のシラバスに組み込んでもらうため、あまり多くの回数はできません。教育実習コース担当者の先生と相談を重ね、6回のクラスをさせてもらうことになりました。報告者は、一緒に担当する日本語講師とともに、シラバス内容を検討し、具体的な授業案を考えていきました。

 結果として、日本語学科の学生さんの熱意と真面目さ、学科の先生方の協力のもと、当初の目的通り、学生さんたちが『まるごと』の模擬授業を行って、6回のクラスを終えました。終了後にアンケートを実施し、学生さんや先生方からも、ポジティブなフィードバックを多くいただきました。同時に、今後の改善ポイントについて示唆に富んだコメントをいただき、ぜひ次回の実施に活かしたいと考えているところです。

 以上、「まるごと教育実習コース」についてご報告しました。すぐにはその成果は見えないかもしれないけれど、何年後かにもしかしたら『まるごと』を使う機関や先生が増えるかもしれない。今は種まきの時期と考え、このクラスを継続的にできればと考えています。最後になりましたが、今回の新しい試みに賛同してくださり、快く受け入れてくれた日本語学科の先生方と学生の皆さん、協力してくれたCJCCの先生方、どうもありがとうございました。

授業終了後の集合写真
模擬授業終了!

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