世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)中部ジャワ 高校日本語教師養成の現場から

インドネシア スマラン国立大学
三宅直子

暑い国の熱い人々とともに

広い広いインドネシア、その中心的存在ジャワ島の真ん中に位置する中部ジャワ州、その州都スマラン。インドネシアの人たちの間でも「スマラン=暑い」というイメージが定着しているほど暑い場所に、熱い志を持つ人たちが集うキャンパスがあります。それが、私の職場であるスマラン国立大学(以下、UNNES)です。エアコン無しの教室(「環境に優しい大学」を標榜する故)にみっしり机を並べた学生たちが、教師目指して日々勉学に励んでいます。

国際交流基金による『2012年度日本語教育機関調査』では、インドネシアの日本語学習者数は87万人以上と世界第2位。その約96%を占めるのが、中等教育機関で学ぶ生徒たちです。同調査によると、中等教育において日本語を教えている機関数は2049、教師1人あたりの生徒数は271.6人とのこと。数字を見ただけでも「先生、大変そう!」と思ってしまいます。中等教育の教師育成は、インドネシアにおける日本語学習者の質・量の確保に不可欠です。UNNESの日本語教育プログラムは、中部ジャワ州における中等教育日本語教師養成機関として地域の中核的役割を担っています。未来の日本語教師を育てるべくコースシラバスを整え教員をサポートするのが、ここでの国際交流基金日本語専門家(以下、専門家)の仕事です。

教師養成の要 教育実習

反省会の写真
反省会の様子。実習生は揃いのバティックで
気合い充分

UNNES日本語教育プログラムの柱となるのが教育実習です。4年生前期になると、2~6名のチームを組んだ学生たちが中部ジャワ州内の各種高校へ実習に行きます。実習生が実際に授業を行う時期には、個々の学生を担当するUNNES教員とともに、専門家も各校へ足を運びます。教壇に立つ実習生は、さっきまで控え室で「緊張します~」と顔を強ばらせていたのが信じられないほど堂々とした先生ぶりを発揮する者が多く、感心させられます。授業のあとは反省会。授業の進め方やクラスコントロールのヒントなど、高校の指導教諭とUNNESの担当教員からフィードバックをもらいます。私もいくつかの反省会で実習生に直接コメントする機会がありましたが、皆真剣そのもので、学生というより後輩の新人日本語教師にアドバイスしている気持ちになります。

実習先の見学からコース改善のヒントが

専門家にとって実習先を見学する一番の目的は、日本語教育プログラムのコース内容が現場に即したものかどうかチェックし、必要に応じてシラバスや教え方の改善に活かすことです。今回の見学では、高校でのPowerPoint使用率が予想以上に高いことがわかり、それへの対応が急務であると実感しました。プレゼンテーションソフトを使った授業が奨励あるいは義務化されている高校が多いことは事前に聞いてはいたのですが、「そうはいっても、機材の故障や停電のリスクを考えると、今はまだ掛け声止まりだろう」と思っていたのです。ところが実際には、見学したほとんどの学校でPowerPointを使用(扇風機も電気もつけずにプロジェクタ最優先という教室も)。中には機材の故障で授業が中断するケースもあり、PowerPointを効果的に使った授業と同時に、PowerPointがなくても乗り切れる授業運びが求められていると感じました。

高校を取り巻く環境の変化という点では、国家カリキュラム改訂によって授業そのものの目的も「人間力の育成」に移行しつつあります。このような現場の変化をコース内容に反映させるべく、UNNES教員とも相談した上で、教育実習前の3年生が履修するいくつかの科目の内容を改めました。教育実習前に心構えだけでも持たせて不安を払拭できれば、卒業後の進路を考える際に躊躇せず教職を選べるのではと期待しています。このように、現場で活躍できる人材を育てるにはどうすればいいか、同僚教員との試行錯誤が続いています。

インドネシアと日本をつなぐ人材を育てる

ここで学んだ学生が、将来この地域の日本語教育を担う人材となる。それがインドネシアの日本語教育界を支え、ひいてはインドネシアと日本の良好な関係を支える一人一人を育てることにつながる。そう考えると、目の前で黙々と額に汗して作文など書いている学生たちを見ているだけで、胸が熱くなることがあります。そんな学生たちを堂々と送り出せるよう、コースをより良くしたいという熱い志を持った同僚たち。このような場で仕事ができることを、とても有難く思います。専門家はいつかいなくなる存在ですが、何をどうすれば後々コースの役に立つかを常に意識しながら、目の前の業務にあたっています。

外国語教育プログラム学舎の写真
外国語教育プログラム学舎。壁には「日本祭り」の垂れ幕が

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Semarang State University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
旧教育大学のスマラン国立大学は、2005年に中部ジャワ州・ジョグジャカルタ特別州地区で唯一の日本語教育専攻プログラムを開講、高校日本語教師養成機関として地域の中心的役割を担う。2009年からは資格不足の現役高校日本語教師を対象とした 2年制日本語教育プログラムを開始。日本語専門家は教員と協力して日本語教育プログラムのカリキュラム改善にあたるとともに、教員の教授力・日本語力向上に対する支援、学生の学習動機維持サポートを行う。その他、域内大学の日本語教員に対するコンサルティングなどの支援を行っている。
所在地 Kampus Sekaran Gunungpati Semarang 50229 Jawa Tengah INDONESIA
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名、指導助手:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
言語芸術学部 外国語外国文学科 日本語教育プログラム
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年 3年制:2000年から
4年制:2005年から
  国際交流基金からの派遣開始年 2009年
 
コース種別
  専攻(日本語教育)
 
現地教授スタッフ
  常勤14名(うち邦人0名)、非常勤1名(うち邦人1名)
学生の履修状況
  履修者の内訳 1~4年生:各60名強
5年生以上:約90名
  学習の主な動機 教員を目指す
  卒業後の主な進路   高校日本語教諭
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N2を受験できる程度
  日本への留学人数 2014年度 1名

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