日本語専門家 派遣先情報・レポート
ジャカルタ日本文化センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
国際交流基金ジャカルタ日本文化センター
The Japan Foundation, Jakarta
派遣先機関の位置付け及び業務内容
インドネシアの各機関・団体と連携をとりながら、幅広い日本語教育支援を行っている。中等教育では各地域や全国レベルの教師会と、高等教育では主にインドネシア日本語教育学会とその各地域の支部と連携し、勉強会やセミナーを実施しており、「にほんご☆キラキラ」や「にほんご☆ラクラク」など当センターで作成した教科書を積極的に紹介している。生活チームでは「いろどり 生活の日本語」の紹介・普及、教師研修やコンサルティングを行っている。JF日本語教育スタンダードに準拠した「JFにほんごeラーニング みなと」講座、日本語パートナーズ派遣事業、EPAに基づくインドネシア人看護師・介護福祉士候補者日本語予備教育事業を実施しているほか、近年、需要が高まっているオンライン教材の開発・普及にも力を入れている。
所在地
Summitmas (2) Lt. 1-2, Jl. Jenderal Sudirman, Kav. 61-62 Jakarta 12190, Indonesia
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家:3名、専門家:5名、生活日本語コーディネーター2名
国際交流基金からの派遣開始年
1980年

ジャカルタ日本文化センターの日本語教育支援(2023)

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター
執筆者名:中等教育担当:今井智絵
NP事業担当:對尾幸華
高等教育・「みなと」担当:森田衛
EPA担当:江森悦子、大脇元、竹田恒太、吉田恭子
特定技能担当:手島利恵

ジャカルタ日本文化センター(以下、JFJA)では、日本語教師支援、JF にほんごeラーニング「みなと」講座、経済連携協定(以下、EPA)に基づくインドネシア人看護師・介護福祉士候補者日本語予備教育(訪日前研修)、在留資格「特定技能」に対応し日本で生活・就労するために必要な日本語教育の支援、日本語パートナーズ事業を行っています。コロナ禍で制限されていた対面での研修や授業がインドネシアでも再開され、JFJAの日本語教育支援もオンラインと対面を組み合わせたハイブリッド型に移行しています。

高校日本語教師会と共催で教授法ワークショップを実施

JFJAでは2020年に中等教育教師向け教授法オンライン自習コース「きらめき」を開発・「みなと」で公開しました。2022年にはインドネシア中学校・高校全国日本語教師会(AGBJI)と共催で全国の高校教師を対象の「きらめき」を活用した教授法研修をオンラインで実施しました。28名の教師が参加し、自分の授業を振り返りながら教授法のブラッシュアップを行いました。
ワークショップは全7回で、事前学習で勉強した「きらめき」のモジュールに沿ってディスカッションが行われました。まとめとして模擬授業を参加教師が撮影し、一部をグループで視聴しコメントし合いました。対面授業が再開される中、オンラインでの研修と対面の授業実践をつなげる試みでしたが、参加教師の普段の授業の様子や工夫が見られ、参加教師同士で学び合いが起こる実り多い研修となりました。

きらめきワークショップの写真
きらめきワークショップの様子

EPA訪日前研修:チューター講師の力を借りて自律学習力を上げる

EPA訪日前研修は16期目となり、今期も314名が看護師、介護福祉士候補者として日本で就労するため、6か月の研修を受けています。後半から一部の候補者は研修所に集合し、対面授業も開始していますが、大部分の候補者はオンラインで授業を受けています。オンラインによる研修も3期目となり、オリジナル教材が充実し、講師側もオンライン授業の力量を上げていますが、最終的には候補者の自律学習力(自分の学習を計画、実行、評価する力)を高めることが重要です。授業後も日常の誘惑に打ち勝ち、継続的に学習を維持しなければならないからです。そこで、今期は1日のスケジュールのうち、自律学習に取り組む時間にインドネシア人チューター講師8名を配置し、復習や学習の見守りを行うようにしました。チューター講師は駆け出しの新人さんが多いのですが、みな日本語教育に意欲的で、今やEPAになくてはならない存在です。自律学習の時間もオンラインで緩やかにつながることで、候補者からは「授業でわからないことがあれば、先生に直接聞けるので助かる」「学習時間をよりよく管理できる」という声が上がっています。チューター講師の存在が安心感につながっているのでしょうか、今期は辞退者が1人しか出ていません。候補者たちはチューター講師の見守り支援を受けながら自律学習力を高め、日本で働きながら国家試験合格を目指すための基礎を身につけています。

EPA研修所での自立学習中の教師の写真
研修所の自律学習時間

特定技能:いよいよ人の流れが活発に

『いろどり生活の日本語』(以下、『いろどり』)の教え方ワークショップをスマラン、バリ、ジャカルタ、メダン、スラバヤの5つの地域を対象に行いました。オンラインでの学習者体験と対面での模擬授業を組み合わせたハイブリッド方式で、それぞれの体験から得られた気づきや課題をディスカッションにより共有・解決していきます。活動全体を通して教え方のポイント理解を目指しました。また、ワークショップの開催地やジャカルタ近郊で、職業訓練センターをはじめ多くの日本語教育機関を訪問できたことも大きな収穫です。オンライン中心の支援ではわからなかった各地の現状に触れることで、労働者の動きや求められる日本語教育の支援が具体的に見えてきます。在インドネシア日本国大使館、インドネシア労働省と共催で行った「特定技能制度とJFT-Basic説明会」にも多くの申し込みがあり、いよいよこの制度での人の流れが活発になりそうです。センターのSNSで連載している4コマ漫画「ミナとギノ」では、2022年度、特定技能制度によって日本で働く「ギノ」の姿が中心に描かれました。日本の慣習や文化にとまどい奮闘するギノの頑張りと明るさが、日本で働く外国人の象徴となるように願っています。

JFF(Japanese Film Festival)来場者と日本語で交流

毎回、映画ファンでにぎわうJFFJapanese Film Festival)に協力し、3つの日本語イベントをジャカルタ会場で行いました。
1.Pelajaran Bahasa Jepangku yang Pertama(はじめての日本語学習)
日本語学習経験のない人を対象に日本語授業体験の機会を提供。簡単な自己紹介と自分の名前をカタカナでカードに書いて、相手と交換する活動を行いました。
2.Ayo Ngobrol Bahasa Jepang(日本語で話そう)
日本語を使って日本人と楽しく会話を楽しむ場を提供。日本語パートナーズ(NP)がホストを務め、相手の日本語レベルに合わせてインドネシアや日本に関する話をしました。
3.JFF Movie Review Challenge(映画レビュー)
会場受付にレビューシートを置き、見た映画の感想を記入してもらいました。
 JFFでの日本語の交流について、合計200名以上が参加し、アンケート回答者の98%以上の方が高評価を付けていました。「はじめての日本語学習」に参加した8歳の女の子は母親と来てくれました。大人と並んで授業を受け最初は緊張していましたが、自作のカードを手に頑張って日本語で自己紹介をしていました。授業が終わった後、ほっとして見せた笑顔が印象に残っています。

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