日本語専門家 派遣先情報・レポート
ラオス国立大学

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
ラオス国立大学
National University of Laos
派遣先機関の位置付け及び業務内容
ラオス国立大学文学部日本語学科は、ラオス初の日本語主専攻の高等教育機関として、今後のラオスの日本語教育を牽引して行く立場にある。ここに派遣されている日本語上級専門家は、カリキュラムシラバス作成や教員の日本語力・教授力のスキルアップに協力し、学生の日本語力向上を目指している。
所在地
Dongdok, Vientiane, Laos
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家:1名
日本語講座の所属学部、学科名称
ラオス国立大学文学部日本語学科
日本語講座の概要

響け!ラオスの声

ラオス国立大学
小松原 奈保

新しい校舎に響く声

 ネット環境がよいとは言えないラオスでも、コロナの影響で、オンライン授業を行ってきましたが、2022年5月から全面的に対面授業を再開し、大学には日本語で話す学習者の元気な声が響いています。
 2022年11月には、在ラオス日本国大使館より草の根文化無償資金協力で贈られた新校舎での授業が始まりました。(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/musho/kyoryoku_1b.html
学習者たちは今まで2人掛けの机に3人で座り、身を寄せ合って勉強していましたが、新校舎では余裕をもって席に座り、ときには机を合わせてグループワークをするなど、恵まれた環境で楽しく日本語を学んでいます。

新校舎で学ぶ学生の写真
新校舎で学ぶ学生

大学の外に響く声

 2023年3月には4年ぶりに対面でラオス日本語スピーチ大会を実施することができました。今までは当たり前すぎて気がつかなかったお客様とアイコンタクトを取りながらスピーチできることの喜びをかみしめるように、出場者は堂々とそれぞれの考えや思いを自分の言葉で届けることができました。
 ラオス国立大学はこの大会で、なんと3分スピーチ部門の1位から3位すべてと1分スピーチ部門の1位、2位に入賞しました。今までの学びの成果を発揮することができて、入賞者たちは誇らしい顔をしています。ぜひ、彼らの声をお聞きください。(https://www.facebook.com/LaoJapaneseSpeechContest

第20回スピーチ大会入賞者の写真
第20回スピーチ大会入賞者

日本に響く声

 コロナが収束して、日本に留学する学習者も徐々に増加傾向にあります。今まで難しいとされていた文部科学省の日本語・日本文化研修留学生奨学金に合格し、留学する学生も増えてきています。少しずつですが、ラオス国立大学の学習者の日本語能力が向上しているのを肌で感じます。
 また、最近では、日本へ働きに行く卒業生も増えています。在留資格「特定技能」を有する外国人に係る制度の適正な運用のための情報連携の基本的枠組みに関する協力覚書の署名式が行われるなど、ラオス人が日本で働くための制度の整備も進んでいます。
 ソーシャルメディアを通じて、夢を叶え日本で活躍している卒業生の声を耳にするのは、私たち教師にとってもうれしい瞬間です。

学習者の声を守り育てる

 国際交流基金の海外日本語教育機関調査によると、ラオスの学習者数は2019年に1,995名であったのに対し、2021年には3,118人と3年間で1,000人以上増加しています。それに対して、教師数は2019年に58人、2021年には74人と、たった16人しか増えていません。(https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/index.html
この数字から、学習者の増加や成長に合わせた、教師の確保ができていないことがわかります。
 実は、これは日本語教育だけの話ではなく、ラオスの教育全体の問題です。ラオスではコロナの影響で経済状況が悪化し、公務員数が大幅に削減されています。公務員採用を待ちながら、無給でボランティア講師を続けていた先生たちは今、自分の生活や、将来のために、一人、また一人と教師の道を諦めて、他の道を歩み始めています。
それにより、現在、日本語を教えている先生方は一人一人が大きな責任と負担を背負っています。
 来年はいよいよ、中等教育で日本語を学んだ学習者が大学入学を迎える年。今まで以上に、高等教育の学習者数の増加、能力向上が見込まれています。
 ラオスの日本語学習者の声が途絶えることのないように、そして、その声がもっと強く大きく響きわたるように、少人数で奮闘しているラオス人日本語教師を助け、ラオスの日本語教育を支えていくのが日本語専門家の大切な役割です。

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