日本語専門家 派遣先情報・レポート
ラオス教育スポーツ省教育科学研究所
派遣先機関の情報
- 派遣先機関名称
- ラオス教育スポーツ省教育科学研究所
- Research Institute for Educational Sciences (RIES),
Ministry of Education and Sports (MoES) - 派遣先機関の位置付け及び業務内容
- RIESは初・中等教育の教科書・カリキュラム開発などを行っている教育スポーツ省の機関である。2010年のカリキュラム改訂で日本語が中等教育の選択第二外国語科目の1つになったことを受け、2016年より国際交流基金の日本語専門家派遣が始まった。中等教育機関における日本語学習向けに制作している教科書『にほんご』は現在5巻（『にほんご1』～『にほんご5』）まで完成し、ビエンチャン市内の4つの公立中等教育機関で使用されている。
中等教育支援のための専門家の業務：
- 1. カリキュラム・シラバスの作成・改訂
- 2. 教科書の作成・改訂
- 3. 教師研修の実施
- 4. 対象校での日本語教育実施状況のモニタリング・評価
- 5. 中等教育における日本語教育導入に向けた中期計画への助言
- 6. ラオスにおける日本語教育普及事業への協力
- 所在地
- Mahosot Road, Chanthabuly District, Vientiane Capital, Lao P.D.R
- 国際交流基金からの派遣者数
- 専門家：1名
- 国際交流基金からの派遣開始年
- 2016年
中等教育機関における日本語学習者向け教科書『にほんご』
ラオス教育スポーツ省教育科学研究所
中井 千晴
日本語教育が実施されている中等教育機関（前期4年と後期3年）はラオスに6機関あり、その6機関における学習者数は1,555人、教師数は27人となっています（国際交流基金2021年度日本語教育機関調査）。その6機関のうち公立4機関における学習者が最も多く、2022年11月時点で学習者数は1年生から7年生の1,466人（ラオス教育スポーツ省教育科学研究所実施調査）となっています。
筆者はその公立中等4機関における日本語教育に携わっています。具体的にはラオス中等教育機関における日本語学習者向けの教科書『にほんご』の制作とそれを使用する教師への研修を行っています。
『にほんご』は国際交流基金とラオス政府の協力のもと2016年に制作が開始され、筆者は『にほんご4』の途中から引き継ぎました。『にほんご』は全7巻からなり、これまでに1年生用『にほんご１』から5年生用『にほんご5』の5巻が国定教科書としてラオス政府に承認され、印刷されました。教科書の他、ラオス語で書かれた指導書も制作しており、『にほんご１』から『にほんご5』の指導書も国定として承認されています。
『にほんご5』教科書（左）と指導書（右）
『にほんご』の教科書と指導書は現在も制作中です。筆者、日本語上級専門家、ラオス国立大学文学部日本語学科教授（ラオス人）、ラオス日本センター日本語講師（ラオス人）の4人で『にほんご6』と『にほんご7』を制作しています。筆者らは先ず試行版を作り、それを公立中等4機関で使用してもらいます。その授業を1年（学校年度9月～5月）見学しながら加筆修正を行い、正規版を完成させます。試行版『にほんご』を、それを使用するラオスの中等教師や学習者に適した量と質の教科書にするために1年の見学は欠かせません。机上で制作した試行版『にほんご』は実際の授業で分かりにくかったり、ラオスの中等教師や学習者に合わなかったり、見学を通して分かることや気づくことがたくさんあります。
中等教師に試行版『にほんご』を使用してもらう前に必ず教師研修でそれを使用した授業を中等教師に行います。中等教師は自分が授業を行う前に学習者として体験することで、自分が授業を行う際のイメージがしやすくなり、初めて教える内容でも自信持って教えることができるようになります。研修で見せた授業をそのまま行う中等教師もいれば、研修での授業をアレンジして行う中等教師もいます。『にほんご』制作者にとって教師研修での中等教師の反応や意見もまた試行版『にほんご』をラオスの中等教師や学習者に適した教科書にするために必要な要素となっています。
中等日本語教師を対象にした教師研修
『にほんご』の制作も残りあと2巻です。『にほんご6』は、6年生と7年生に対して2022年9月～2023年5月に試行版による授業を実施し、2023年度中に正規版の完成と国定承認を得る国の会議を予定しています。『にほんご7』は、試行版による授業を2023年9月より7年生で開始させます。2016年に開始したラオス中等学習者向け教科書『にほんご』が全巻（1～7）そろう日ももうすぐです。