日本語専門家 派遣先情報・レポート
マラヤ大学予備教育センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
マラヤ大学予備教育センター日本留学特別コース
Special Preparatory Programme to Japan (RPKJ), Center for Foundation Studies in Science, University of Malaya
派遣先機関の位置付け及び業務内容
本コースは1981年、マハティール首相(当時)によって提唱された東方政策に基づきマラヤ大学内に創設した日本留学特別コースである。学生は全てブミプトラ(マレー系、サバ・サラワクの諸民族)で、当コースで日本語・数学・物理・化学・英語を2年弱学ぶ。日本留学試験もしくは修了試験の結果で日本留学資格を得た後、国費留学生として日本の国立大学理工学部へ進学する。専門家の派遣も40年目となるが、一大学教員として現地教員と協力してコース運営にあたることが求められる。なお理系科目は文部科学省から派遣された高校教員を中心に指導が行われている。
所在地
AAJ, Pusat Asasi Sains, UNIVERSITI MALAYA, 50603, KUALA LUMPUR, MALAYSIA
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家:2名、専門家5名、指導助手1名
日本語講座の所属学部、学科名称
マラヤ大学予備教育センター日本留学特別コース
日本語講座の概要

対面授業の再開

マラヤ大学予備教育センター日本留学特別コース
武井康次郎、崖高延、髙尾まり子、朽方修一

2022年度からマラヤ大学予備教育センター日本留学特別コース(以下、「AAJ」)は、ようやく対面での授業が再開されました。開始当初は、教師も学生もお互いにマスクをしながらの授業でしたが、マレーシアのコロナ対策が緩くなり、教室でもマスクの使用は自由となりました。昨日までマスクを着けていた学生が、突然マスクを外すと、「えっ?誰?」と思う瞬間もありました。しかし、授業中に教師も学生もお互いの喜怒哀楽が見えることで、以前よりも通じ合えるような気がしました。そして、スポーツ大会やビジターセッションなどのイベントも対面で行うことができ、ただ日本語を教えるだけでなく、学生とのコミュニケーションが取れることに喜びを感じています。

<1年生>

どこの国の日本語教育でも同じような悩みを持っているかもしれません。日本語学習者と日本人をいかにつなぐか、日本語を使って日本人教師以外の日本人と話す機会をどうやってつくるかということです。マレーシアには在留邦人が2万人以上いますが、教師以外の日本人と話したことがないという学生がほとんどです。そこで、オンライン上で日本語でおしゃべりをする「オンラインサロン」、マレーシアにいる日本人に大学へ来てもらって交流する「ビジターセッション」を開催しています。
「オンラインサロン」は、国際交流基金クアラルンプール日本文化センターに日本人を募集してもらい、日本人1人に学生4、5名がオンライン上で日本語だけで話をするというものです。授業中はほとんど発言をしない静かな学生も、授業中には見せない楽しそうな顔で、いきいきと話していました。日本語ができずに、黙ってしまう学生がいるのではないかと危惧していましたが、杞憂に終わりました。
「ビジターセッション」は、マレーシアにいる日本人との交流会で、日本語での会話を楽しみながら、日本の文化・慣習への理解を深めること、マレーシアの文化を紹介することを目的として、毎年1回行っています。今年度は3年ぶりに対面で実施することができました。学生たちは、最初はとても緊張していましたが、自分たちで準備したマレーシアのゲーム、衣装、食べ物などを紹介する際には、自信を持って日本語で発言していました。日本人にも質問したり、おしゃべりしたり積極的な姿勢が見られました。今まで勉強してきた日本語で日本人とコミュニケーションできることを実感できたのではないでしょうか。
「オンラインサロン」、「ビジターセッション」がこれからの日本語学習、日本留学へのモチベーションにつながってくれたらうれしい限りです。

ビジターセッションの写真
ビジターセッションの様子

<2年生>

40期生は2022年5月から2年生の授業がスタートしました。このとき、日本語のレベルは中級前半。ここから11月の日本留学試験(以下、EJU)に向けて、試験対策中心の授業が進んでいきます。40期生は入学が遅かったため、過去最短の半年で成果を出さなければなりませんでした。どちらかと言えばコツコツ型の40期生。朝早くから夜遅くまで、そして学校でも寮でもひたむきに努力を続けました。しかし、読解や聴解では思うように点数が伸びず、多くの学生が苦戦しました。私たち教師は時には学生と面談を行い、不安を感じる学生に声をかけ続けました。その結果、EJUでは、特に伸び悩んでいた学生が素晴らしい結果を出すことができました。

EJU、そして12月の修了試験が終わると、留学準備に向けて動き出します。授業も、数か月後に始まる日本での留学生活を見据えたものに変わります。また、マレーシア在住の日本人家庭訪問もこの時期に行われました。教師の付き添いはなく、学生はグループで日本人家庭を訪問します。準備として、日本人家庭訪問のマナーを学び、いざ出発!当日は訪問先のご家族が様々な工夫を凝らし、学生を迎え、様々な体験をさせてくださいました。例えば、日本料理、将棋や書道、浴衣の着付け、雛祭りの飾りつけ、赤ちゃんの命名書きなどです。先生以外の日本人と長く話すのは初めて、という学生がほとんどでしたが、ご家族との楽しいゲームやおしゃべりで、日本語で話す自信がついたと実感した学生もおり、日本留学への期待がさらに高まったようでした。そして、2023年3月、40期生は日本へ向け、元気に出発しました。学生を見送る人々の中に、家庭訪問を受け入れてくださったご家族の姿もあり、日本での再会を約束する姿が印象的でした。

日本人家庭訪問の写真
日本人家庭訪問

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