世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ミャンマーにおける日本語教師ネットワークの萌芽

ヤンゴン外国語大学
田邉知成

2012年9月にアメリカによる経済制裁が全面解除されて以降、ミャンマーは国際社会に向けて大きく門戸を開き、多くの日系企業もミャンマーに進出してきました。それに伴い、企業駐在や留学などでの在留邦人数も一気に増え、日本という国がミャンマーでもより身近な存在となってきたのかなと感じています。先日公表された今年度の『海外在留邦人数調査統計』では、日系企業数が346社(2015年10月1日現在、対前年比33.6%増)、在留邦人数が1776名(同33.5%増)となり、在留者数の対前年比増加率33.5%は上位50か国中第1位で、ミャンマーは昨年度世界で最も在留日本人の増えた国ということになります。そのような環境の中で、ミャンマーでの日本語学習者数も年々増加傾向にあります。昨年度の日本語能力試験受験者数は6000名を超え、現在は日本語学習者数が1万人ほどいると見られています。

それほどの学習者数を抱える国でありながら、この国にはこれまで日本語の先生たちの公式なネットワークがありませんでした。何しろこの国にはつい3年前まで公の場での5人以上による集会を禁止する法律規定があったのですから無理もありませんが、2013年1月にその規定が廃止された後も、国際交流基金はもちろん、日本大使館のほうでもこれまで日本語教師を結ぶネットワークの構築をいろいろと働きかけてきたものの、なかなか実現には至りませんでした。報告者も2013年12月に着任以来、この国に日本語教師の教師会組織を立ち上げることをひとつの目標としてきましたが、昨年あたりから少しずつ動きが出てきました。

現在、ヤンゴンには教師会と呼べる組織がふたつ活動をおこなっています。ひとつはヤンゴン日本語教師会、そしてもう一つがミャンマー日本語教師会です。

ヤンゴン日本語教師会月例学習会のようすの画像
ヤンゴン日本語教師会月例学習会のようす

前者のヤンゴン日本語教師会は、もともと日本人同士のコミュニティから生まれたものです。先述のとおりヤンゴンにはたくさんの日本人が在住していますが、ヤンゴン市内で配布されている日本語のフリーペーパーには在留日本人のためのいろいろなクラブ活動や県人会などのコミュニティメンバーを募集するページがあります。ミャンマーでの教師会をすぐに立ち上げるのは難しいと考えていた報告者は、自身まだ右も左もわからぬミャンマーで同業の友人を増やしたいと思い、すでに知り合っていた日本人日本語教師数人と「ヤンゴン日本語教師の会」としてフリーペーパーに募集を載せました。当初は「日本語を教えていらっしゃる方、飲んだり食べたり、喋ったり、ヤンゴンの日本語のこと情報交換・意見交換しましょう。」という感じで、食事会の案内でしたが、第1回の会合は2014年6月におこなわれ、11名の日本人が集まりました。この会は定期的な集まりを重ねる中で、今では会則も揃え、毎月1回食事会と、同じく毎月1回の学習会を主催できるまでになりました。メンバーにはミャンマー人教師も多くなり、登録上は100名近い会員の組織になりました。もっとも、月例の食事会や学習会に参加してくださっているのはまだまだ少数で、日本人教師が中心です。今後、特に学習会の内容をどのようにしていくかは思案のしどころです。日本語教育に対する悩みや疑問点はどうしてもネイティブ教師とノンネイティブ教師で異なる部分もあるので、どのような運営が望ましいのかいろいろな人の意見を聞きながら運営していきたいと思っています。

ミャンマー日本語教師会月例学習会のようすの画像
ミャンマー日本語教師会月例学習会のようす

後者のミャンマー日本語教師会ですが、こちらはミャンマー人の先生方が自主的に集まって始まった勉強会がその母体となっています。中心となっているのは、ミャンマーで日本語能力試験の実施を担当しているMAJA(ミャンマー元日本留学生協会)という団体に属している先生たちなのですが、これまでMAJAとしておこなってきたセミナーや勉強会のメンバーを拡大させ、今後はミャンマー日本語教師会として広くいろいろな学校に呼びかけて勉強会を実施していこうということで、昨年(2015年)の9月から勉強会を実施しています。これまで、『みんなの日本語』の教師用指導書をミャンマー語に翻訳する作業をしたり、日本語力の関係で大使館や国際交流基金が主催するセミナーに参加できずにいた経験の浅い先生に教授法を指導したりするなどの活動を重ねてきました。今年度からは報告者もこのミャンマー日本語教師会の勉強会に参加し、技術面でのアドバイスをおこなっていくことになりました。

両者とも、まだ自前のオフィスも持たない同好会的組織ではありますが、少しずつ活動も板についてきました。政治的にも自由の風がこの国に吹き始めており、今後ますます増えていくであろう日本語学習者数を背景に、日本語教師たちの自主的な活動もさらに活発になっていくことでしょう。今後が楽しみなミャンマー日本語教育会です。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 ヤンゴン外国語大学
Yangon University of Foreign Languages
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
姉妹校であるマンダレー外国語大学と共に、国内に二校しかない国立の外国語大学であり、この国の外国語教育の中枢機関である。2009年より新たに修士課程が開講し、日本語専門家は主に修士課程での講義を担当している。また同一カリキュラムで進行するマンダレー外国語大学のほうへも集中講義として出講している。ヤンゴン、マンダレー両大学の修士課程は現在現職の日本語教員を対象に運営されているが、2016年6月からは一般学生を迎えたコースとして再スタートする予定。
所在地 No.119/131, University Avenue Road, Kamayut Township, Yangon, 11041, MYANMAR
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年 1964年
  国際交流基金からの派遣開始年 2013年
 
コース種別
  主専攻
 
現地教授スタッフ
  常勤28名(うち邦人0名)、日本語パートナーズ1名
学生の履修状況
  履修者の内訳 主専攻で各学年80名程度(現4年生のみ33名)
  学習の主な動機 日本企業等への就職
  卒業後の主な進路 日本企業等への就職
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級受験可能レベル
  日本への留学人数 例年3名程度

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