日本語専門家 派遣先情報・レポート
ヤンゴン日本文化センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
ヤンゴン日本文化センター
The Japan Foundation,Yangon
派遣先機関の位置付け及び業務内容
2019年に開設された国際交流基金の海外拠点のひとつで、ミャンマー日本語教育界のハブ機関としての機能を担っている。2021年4月以降は専門家全員が国内業務委嘱になっている(2023年9月からは赴任再開)ため、オンラインで日本語教師を対象としたセミナーや勉強会を行なっている。主に、日本語教師育成コース、定期勉強会、日本語ブラッシュアップコースなど。また、在ミャンマー日本国大使館と協力しての弁論大会、日本文学翻訳コンテストなども実施している。日本語学習者や日本語学習の入り口となる文化紹介など、学習者への直接支援活動も行っている。
所在地
No.70, Nat Mark Lane 1, Bahan Township, Yangon, Myanmar
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家:1名 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年
2019年

リモートでできることを探して。

ヤンゴン日本文化センター
阿部康子、植田一栄

 ミャンマーでは、2021年2月1日に軍事クーデターが起き、派遣日本語専門家(以下、専門家)は日本へ避難帰国となりました。クーデター以降は軍事政権が続いており、私たちは日本からのリモート勤務の状態が2年以上続いています。現地に赴けないままの業務は難しい面も多々ありますが、その中でもなんとかできることを探して取り組んでいます。前年度に続いて、今回もリモートで行っている業務についてご報告いたします。

日本語教師育成コース 第4期・第5期スタート

 日本語教師育成コース(以下、本コース)は、2021年12月からオンラインで第3期を開始し、2022年9月に28名の受講生とともに無事終了しました。
 現在は2022年12月から開始した第4期(平日2日、各3時間、全60回9か月、受講生24名)と2023年3月から開始した第5期(土日夜、各2時間、全70回10か月、受講生35名)が並走しています。この2つのコースは、経験の浅い先生が大半であった第3期とは異なり、どちらも指導経験ゼロの人から15年以上の長いキャリアの先生など、多様な層が参加するコースとなりました。そのためもあってか、第3期以上に授業中のグループワークの時間がとても有意義で勉強になっているとの感想をいただいています。教師育成コースの受講生の大半は、教師が数人の小規模な日本語学校に勤務している先生や、個人で教えている先生です。ミャンマーでは、教師同士でともに学ぶ場も日本語教師の横のつながりも未だ少ない印象です。そのような中でさまざまな経験やキャリアを持つクラスメートと話し合う時間はとても貴重なものとなっているようです。
 一方で、ミャンマーの先生方に共通する課題も見えてきました。それは、彼らが行う日本語の授業での学習者の発話量の少なさです。第3期、第4期と、コースの後半に、グループで教案を考えて模擬授業をしてもらいました。導入を工夫したり、インプット理解のための練習やシャドーイングなどを取り入れたりと、コースの中で学んだことを生かしている様子が見られ、また、教師による一方的な説明のみという場面もほとんどありませんでした。にもかかわらず、どのグループの模擬授業でも学習者が口を動かしている時間が非常に少なかったのです。これは本コースの今後の課題の一つとも言えます。
 本コースの「コースデザイン」の授業では毎回、「計画」→「実行」→「評価」→「計画」(以降、繰り返し)のサイクルを紹介しています。このコースを教えている私たちにも、このサイクルは重要です。私たちにとっての「評価」は、受講生たちの参加度や反応、試験や模擬授業から見えてくる課題、などに当たります。これらを丁寧に分析し、好評な部分はさらにより良いものに、課題と思われる部分は後半の授業に再度取り入れるなど、常にコースの改善を心がけ実行していくことで、少しでもこれからのミャンマーの日本語教育に貢献していければと考えています。

日本語教師育成コースの授業内容の写真
日本語教師育成コースの授業内容

ミャンマー人教師のための会話ブラッシュアップコースの実施

 N3・N4レベル程度のミャンマー人日本語教師を対象に、会話に磨きをかける機会を提供すると共に『いろどり』の会話指導の流れを体験する全8回(2か月)のオンラインコースを実施しました。2022年9月・10月と11月・12月の2回実施し、定員各20名、合計40名の先生方にご参加いただきました。各回の受講定員は20名でしたが、募集を開始してからわずか1日で200名程の申込みがあり、驚きと同時に今のミャンマー人日本語教師に求められているコースであることが分かりました。
 ミャンマーでは2020年にコロナウイルスが蔓延し、オンライン授業を行う民間日本語学校やプライベートレッスンが増えてきました。そのため、Zoomで授業を行うことや、オンライン上でのやり取りに不安はないと想定していましたが、実際はネット環境がネックになりました。また、地域や時間帯によっては停電も頻発し、授業中に受講生が入退室を繰り返すなど順調にいかないこともありました。それでも、コース終了後のアンケートでは受講者自身が日本語会話力の向上を実感し、授業の教え方の参考になったと満足度が高く、講師としても手応えを感じました。また、このコースがきっかけとなり、民間日本語学校で『いろどり』を使用した会話コースを開設した受講生もおり、困難な状況下でもチャレンジをするミャンマー人教師の一助になったことに喜びを感じています。
 今後もミャンマー人日本語教師の能力の底上げのために、『いろどり』を使った短期コースを継続して行っていく予定です。

会話ブラッシュアップコースの受講生との記念写真
会話ブラッシュアップコースの受講生と記念撮影

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