世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 熱帯フィリピンからのホットなニュース

国際交流基金マニラ日本文化センター
雄谷 進・青沼 国夫・大舩 ちさと・森 美紀・桑野 幸子・鈴木 恵理・早川 直子・松井 孝浩

国際交流基金マニラ日本文化センターは移転して1年が経過しました。今年のホットな話題を4つ、お届けします。

ただ今『まるごと』教師養成中!

『まるごと』を見学する研修生たちの写真
『まるごと』を見学する研修生たち
グループプレゼンテーションの様子の写真
グループプレゼンテーションの様子

当センターでは昨年4月から国際交流基金が作成した『まるごと 日本のことばと文化A1かつどう』(以下、『まるごと』)をテキストに、文法や日本語の文字を学習しない会話のみに特化したコースがスタートしました。気軽に日本語に触れてみたい話し好きなフィリピン人学習者の需要にうまくマッチしたようで、開講から一年、コースは軌道に乗り始めています。ところが、進級クラスが望まれる中、『まるごと』を教えられる教師が足りないという現実に直面しました。そこで、当センターでは『まるごと』を使った教師養成に踏み切りました。研修は教案提出、授業見学、ディスカッション、教案の再提出の流れを繰り返し、最後に模擬授業をするというハードな内容ですが、14名の申し込みがありました。この4月にはついに一人目がデビューし、7月からも続々と新しい教師が「『まるごと』デビュー」する予定です。現地講師の指導力の底上げ、JF日本語教育スタンダードへの理解促進をすすめ、今後多様なコースが展開できるよう、当センターでは現地講師の育成に力を注いでいきます。

師範大学での教員養成、第一歩!

フィリピンの教育界で最も大きなニュースは、基礎教育を2年間延長する制度「K to 12」が2013年5月15日に法案化されたことです。この制度の導入に伴い、高校における外国語教育の時間数の大幅な増加が現実的になってきました。これまでは、日本語学習経験のない高校教員を対象に日本語教師養成研修を実施してきましたが、今後は日本語学習経験のある高校教員を増やしていくことを検討する必要がありそうです。その第一歩といえるのが、2012年6月に当センターがフィリピン師範大学(以下、PNU)と共同で開講した、選択科目として年間108時間実施する日本語コースです。PNUはフィリピンの教員養成の中核を担う大学で、卒業生の多くが教職に就きます。週1回、『まるごとA1 かつどう』と『同 りかい』を用いるクラスに、2年生から4年生までの学生が集まりました。3月に卒業し教職についた学生たちは、いつか自分の働く高校で日本語教育にも携わりたいと言ってくれています。

第2回日本語教育会議 in セブ

セブではヴィサヤ地域日本語教師会(ANT-V)の主催で4月6・7日に第2回日本語教育会議が開催されました。これは昨年ミンダナオ島ダバオ市にあるミンダナオ国際大学で開かれた第1回の日本語教育会議を引き継ぐ形で行なわれたものです。今回はテーマを「学習者中心の目標を設定するための効果的なコースデザインの方法」と定め、日本の大学から講師を招きコースデザインについて2日間集中的に学びました。普段このようなセミナーに参加する機会の少ない地方の先生方にとっては大変刺激的な機会であったようで、今後もぜひこのようなセミナーを特に地方で継続的に開催してほしいとの声が上がりました。また、ANT-Vにとってもはじめてのセミナー主催ということで大変でしたが、今回の企画と実施を通して多くのことを学ぶことができたようです。

看護師・介護福祉士候補者のための日本語研修 -自律学習支援に力を入れて -

ポートフォリオの写真
「これが私のポートフォリオです!」

2011年1月から日比EPA(経済連携協定)に基づいた看護師・介護福祉士候補者に対する日本語予備教育を実施しています。今回は第3回目で、2012年12月から6か月間マニラ首都圏内の研修施設で行いました。看護師候補者が65名、介護福祉士候補者が83名、計148名が参加しています。

前回と比べて50名の増加、期間も3か月から6か月に延びました。この研修は来日後の研修、就労を効果的に行うための準備段階として、「基礎的な日本語の4技能の習得」「日本社会文化理解と日本語運用」「自律学習の養成」を目標としています。

「自律学習」とは、自分で教材を選び、学習方法を考え実行するためのプロセスを学ぶことです。候補者は病院や施設で働きながら、日本の看護師・介護福祉士の国家試験を目指します。日本語学習のみならず国家試験の準備やその後の勉強のためにも自律学習の力を身に付けておく必要があります。

自律学習の時間で候補者たちは目標や計画を立てたり、学習の振り返りを行ったりしながら自律学習の習慣を身に付けていきます。また、この研修中に行ったクイズやテスト、学習計画表や振り返りシートなどの成果物を保存するポートフォリオの作成も自律学習の一環として行っています。このポートフォリオは候補者自身の学習過程を評価することができます。また、次の研修機関とのアーティキュレーション(連携)を可能にするなど重要な役割を果たしています。

注1:http://www.jfmo.org.ph/newsletter

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Manila
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
フィリピンでは日本語教育分野の人材育成が求められている。日本語教育専門家は、マニラ日本文化センター付アドバイザーとして、事務所主催の教師研修や日本語教師フォーラム(年2回)、一般向けの日本語学習講座、全国スピーチコンテストなどの企画・開催、現地団体の主催する日本語関係のプログラムへの協力などを行っている。また、本年度の最重要課題である中等教育における日本語教育導入・展開プロジェクトの下、現役高校教師対象教師養成講座や教材作成、巡回指導などを行っているほか、EPAに基づくフィリピン人看護師・介護福祉士候補者日本語予備教育事業にも取り組んでいる。ニューズレター『みりえんだ』発行。
所在地 The Japan Foundation, Manila
12th Floor, Pacific Star Bldg, Sen.Gil J.Puyat Ave. cor Makati Ave.
Makati City, 1226 Philippines
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:5名、専門家:3名、指導助手1名(うち専門家1名はセブ島に派遣)
国際交流基金からの派遣開始年 2000年

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