世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 一期一会(いちごいちえ) ―タイ北部中等日本語教育機関支援―

国際交流基金バンコク日本文化センター
(北部中等教育機関)
高塚 直子

 タイのチェンマイに日本語専門家として着任し、早くも3年目を迎えました。お陰様で、毎日充実した日々を過ごしています。今回は、タイ北部で日本語を教えている中学校と高校のこと、そして、先生方の学びの場である研修のことについてお話します。

1.タイ北部で日本語を教えている中学校と高校

チェンマイ県での日本語キャンプで浴衣の着付けを体験の写真
チェンマイ県での
日本語キャンプで浴衣の着付けを体験

 現在タイ北部では、約60校の中学や高校が日本語を専攻科目や選択科目として教えています。私が担当している地域は、北部タイの8県(チェンマイ、チェンライ、ランパーン、ランプーン、プレー、ナーン、パヤオ、メーホンソン県)です。近年、タイ国内では日本語を閉講し、中国語や韓国語などを新たに開講している学校もありますが、北部では日本語の人気は根強く、今年度から新しく日本語コースを開講している学校もあります。また、私は、配属校以外にも日本語学習をしている学校を訪問していますが、タイ人の生徒や先生方からは、「日本へ旅行に行ってみたいです」、「日本製品は品質がいいので大好きです」、「日本人はかわいいです」などとよく言われます。日本に対して、いいイメージを持っているタイの方が多い地域だと思います。日本人がほとんど住んでいない北部のある学校では、なんと中学校1年生から高校3年生までの全校生徒約2600人のうち、1000人以上の生徒が専攻科目や選択科目として日本語を学んでいます。この学校では、中国語とフランス語も学べるそうですが、日本に興味を持っている生徒が非常に多いそうです。日本人を見たことがない生徒たちが、日本人である私を初めて見て、「コンイプン マーレ~オ!!(日本人が来たよ!)」と言いながら、嬉しそうに駆け寄って来る姿を見るたびに、学校訪問をしてよかったと感じています。

2.タイ北部の中学校と高校のネットワーク

 タイ北部では、毎年、教育省からの予算配分に応じて、様々な日本語教育関連のイベントが行われています。例えば、日本語コンテストや、日本語キャンプなどがあります。日本語キャンプは、泊りがけですることが多く、1日から2日かけて日本語のゲームや日本文化体験などをします。

 現在のタイの公立校のシステムは、隣接する県がまとまって一つの教育区になり、それぞれの教育区の中にリーダー的存在の「センター校」があります。このシステムでは、それぞれの教育区が独立して、日本語や日本文化のイベントを行うことができるという利点があります。

 また、これらの教育区の枠を超えて、タイ北部で日本語を教えている学校が協力し合い、毎年2月には北部最大規模の「北部タイ中高生日本語コンテスト」をチェンマイで開催しています。昨年度で8回目のコンテストを無事に終えました。 タイ北部から約500名の教員と生徒の参加があり、準備からコンテスト当日まで笑いあり、涙あり、いろいろあり(苦笑)でしたが、教員と生徒が一つになり、毎年充実した内容のコンテストになっていると思います。

3.タイ北部中等教育機関教師研修

パヤオ県での和太鼓研修で曲を発表する先生と生徒のグループの写真
パヤオ県での和太鼓研修で曲を発表する
先生と生徒のグループ

 私の重要な任務の一つとして、タイ北部の中学や高校で日本語を教えている先生方のための教師研修の実施があります。昨年度から、地方支援を強化するために、チェンマイ市内での日本語ブラッシュアップのための教師研修に加え、一ヶ月に一回、北部の地方の担当地域でも研修をしました。昨年度は、担当地域8県のうち7県で、合計8回の地方研修を行うことができました。

 この地方研修の内容は、日本語教授法と日本文化体験の二本柱で、私が担当する研修に加え、日本語教授法は、タイ北部やイサーン地方で日本語教育に関わっていらっしゃる先生方、日本文化の講師は、チェンマイ在住の日本人の方々にもお願いしました。昨年度は、「ダンスを取り入れた日本語教授法」や「和太鼓」の研修もしました。これらの研修は、教師に限らず、生徒の参加も受け入れ、学校、教師、生徒の枠を超えた交流ができました。研修では、日本語教授法や日本文化について学ぶことはもちろん大切な目的ですが、参加した先生方からは、「自分と同じ県で日本語を教えている先生に一度も会ったことがなかったので、研修で会えてよかった」という声や「普段、タイ人の先生方とゆっくり話す機会がないので、今日はみなさんとお話できてよかった」など、研修での出会いについてもいろいろなコメントをいただきました。引き続き、参加者のみなさんがつながっていくきっかけになるような研修を目指していきたいです。

4.一期一会(いちごいちえ)

 3年目を迎え、毎日の業務の中で一番楽しいのは、先生方や生徒のみなさんにお会いすることです。人と人との出会いは本当に不思議ですが、私は、出会いとは人生がより一層豊かになる「スパイス」のようなものだと思っています。今年度も、一つ一つの出会いを大切にして、楽しみながら毎日を過ごしたいです。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 ユパラート・ウィッタヤライ校
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
専門家の派遣先機関はチェンマイ県の伝統ある有名校で、タイ北部において、中等日本語教育のリーダー的役割を担うセンター校である。日本語コースは今年度で9年目で、日本語専門家(旧ジュニア専門家)派遣も9年目に入る。日本語専門家はタイ人日本語教員のための教師研修会運営や学校訪問、巡回指導、教員間のネットワーク形成支援といた地域全体に対する支援と、派遣機関に対する日本語教育全般における支援を行う。
所在地 238 Praplokkloa Rd,. T.Sripoon, A.Muang, CHIANGMAI 50200
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
第二外国語グループ
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2004年
国際交流基金からの派遣開始年 2004年
コース種別
専攻:高校1,2,3年
選択必修:高校1,2,3年
現地教授スタッフ
常勤4名(うち邦人1名)
学生の履修状況
履修者の内訳   専攻:約125名
選択必修:約505名
学習の主な動機 ひらがな、日本旅行、日本語の音、日本のアニメやマンガなど
卒業後の主な進路 大学進学
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
初級終了を予定
日本への留学人数 2名

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