世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語・日本を楽しく学ぼう!

国際交流基金バンコク日本文化センター
三浦 多佳史・渋谷 実希・古内 綾子

 2012年5月21日、本年度も国際交流基金バンコク日本文化センター(以下、JFBKK)で実施されている「中等学校(日本の中学、高校)現職教員日本語教師新規養成講座」(以下、新規研修)が始まりました。今年度の新規研修参加者(以下、研修生)は12名。中等学校で他教科を教えている現職のタイ人教員がJFBKKに集まり、10か月間、日本語や日本文化、日本語の教え方を学びます。

中等学校の日本語教員は、まだ、足りない

 新規研修は、1994年より中等学校の日本語教員不足解消を目的にタイ国教育省との共催で始まり、これまでに239人の教員が修了しています。今年度で16期を迎える研修ですが、まだまだ日本語の教員は十分ではありません。タイの中等教育段階の日本語学習者は近年、増加しているからです。増加の背景には、2010年に教育省から全国の中等学校を対象に出された「WORLD-CLASS STANDARD SCHOOL」という新しい方針があります。この方針により文系の学生だけでなく理数系も含め全ての学生が英語以外の第二外国語を履修できるようになりました。その結果、中等学校で日本語を学ぶ学生が増加し、日本語の教員もさらに必要になってきたというわけです。

ゲームで/歌で/踊って、楽しく日本語!

 外国語を学ぶことは楽しい半面、「単語や文法を覚える」「発音の練習をする」など、地道な努力が必要な面があるのも事実です。ましてや、中等学校では大学入試のための勉強や評価のためのテストなど、学生にとっては「楽しくない」ことも多いです。一方で、タイの中等学校の現場では学校行事によって日本語の授業が予定通りに十分に行えず、時間が足りないということもよくあります。

 さらに、先にご紹介した「WORLD-CLASS STANDARD SCHOOL」により、週2コマ程度日本語を勉強する日本語選択コース(以下、選択コース)で日本語を学ぶ学生も増えています。

 「日本語は難しい」「授業の時間が足りない」「学生はなかなか日本語が覚えられない」。そのような状況で、「学生がやる気を持てるような楽しい授業がしたい」「学生に日本語を覚えてほしい」というのがタイ人の先生方の希望です。そこで、新規研修でも楽しい授業の アイディアとして、ゲームや歌、体を使った活動などを紹介しています。

 歌は、日本人の子供向けの簡単で歌いやすい歌、「て形の歌」など日本語の文法学習を助ける歌、最近人気のJ-POPなどを取り上げて紹介し、一緒に歌っています。新規研修の模擬授業では、日本語の言葉を覚えるために、英語の歌の歌詞を日本語に変え、それに合ったダンスも考えて披露した研修生もいます。大人になると踊りながら歌うなんて恥ずかしくてできないという人もいると思いますが、タイ人の先生方に関してはそんなことはありません。学生がより楽しくできるように、まずは、自分たちが歌い、踊って、楽しみながら日本語を学んでいます。

日本人との交流で、日本語を使えるという自信を!

 新規研修では週に1度、バンコク在住の日本人の方にご協力いただき、日本人と研修生との交流学習を行っています。学んだ日本語を実際に使って会話をしたり、海苔巻き作りや風呂敷の使い方体験などの文化体験を一緒にしたりしています。学んだ日本語を使う機会を増やすことで実際に使えるという自信を持ってほしい、そしてメディアからだけでは分からない生きた日本文化を感じ、学んでほしいと考えて実施しています。

 JFBKKでは新規研修以外にも、様々な形でタイの中等教育の日本語教育支援を行っています。特に、最近は選択コースで楽しく効果的に学べる教材(『こはるといっしょに』シリーズ※1)の開発が進められています。『こはるといっしょに』シリーズには対応するWebサイトもあり、フラッシュカードや授業で使用するプリントなどが簡単にダウンロードできるようになっていて、日々の業務に忙しい現場の先生方にも使いやすいように現在も開発が進められています。そして、JFBKKのホームページでは教室活動のアイディアも紹介※2しています。授業でそのまま使用することを考え、「ドラえもん音頭」や「アルゴリズム体操」のやり方を動画で紹介したり、大人数でできる楽しいゲームなどのやり方も紹介したりしています。

 私がタイ人の先生方を見て感じていることは、非常に熱心に、明るく楽しく日本語教育に取り組まれているということです。これからも、そのような先生方と共に、学生が「楽しく日本語が学べる」ように取り組んでいきたいと思っています。

ボランティアの方と海苔巻きを作る様子の写真
ボランティアの方と海苔巻きを作る様子

ボランティアの方から風呂敷の包み方を習いました。記念に1枚!の写真
ボランティアの方から風呂敷の包み方を習いました。
記念に1枚!

  1. ※1 『こはるといっしょに ひらがなわぁ~い』(2011年3月出版)
    『こはるといっしょに にほんごわぁ~い1・2』
    (1巻 2012年5月出版、2巻2012年12月出版予定)
  2. ※2 「日本語キャンプ 活動アイディア集」
派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Bangkok
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
タイ国全土及び近隣諸国(ラオス、カンボジア、ミャンマー)の日本語教師・学習者支援のためさまざまな事業を行っている。教師支援としては各種の研修(集中、水曜、金曜、新規養成)や半日または1日のセミナーを企画・実施している。学習者支援としては一般講座の開講、中等教育日本語選択コースの教材制作など。また、コンサルタント業務、紀要やニューズレターの発行を通して情報センターとしての機能を果たしている。
所在地 Serm Mit Tower, 10F, 159 Sukhumvit 21 (Asoke Road) Bangkok 10110, Thailand
Tel:66 (2) 260-8560~64 Fax:66 (2) 260-8565
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:2名、専門家:1名、指導助手:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1994年

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