世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)“日本語パートナーズ”たちの活躍を願って

国際交流基金バンコク日本文化センター
佐藤五郎

“日本語パートナーズ”とは?

日本語パートナーズ”(以下、パートナーズ)とは、ASEAN10か国の、主に中等教育機関(日本の中学・高校に相当)に派遣され、現地日本語教師のサポートを行う人たちのことです。日本の中学や高校にいるALT(Assistant Language Teachers)の日本人版と言えばわかりやすいでしょうか。2014年に始まった本事業は、東京オリンピック開催の2020年まで続きます。ASEAN諸国に3000人以上を派遣する予定で、タイには2014年度・2015年度に総勢81名が、2016年度は60名が派遣され、北から南まで32県で活躍しています。年齢は20歳から69歳まで幅広く、バックグラウンドも、現役の学生から元教師、元新聞記者、元アナウンサー、元商社マンと様々です。

派遣先におけるパートナーズの役割は、大きく二つあります。

カウンターパートとのティーム・ティーチング(机間巡視)の様子の画像
カウンターパートとのティーム・ティーチング(机間巡視)

一つ目は、現地教師をサポートしながら日本語の授業を行うこと。教材作成などの授業準備を手伝ったり、現地教師とティーム・ティーチングをしたり、宿題のチェックやテストの補佐などを行います。また、休み時間や放課後には生徒たちの話し相手になったり、時には一緒に遊んだりすることもあります。

二つ目は、日本文化を紹介することです。授業はもちろん、学校行事や地域のイベントなどでも文化紹介を行います。

このような活動を通じて現地に「日本ファン」を増やすとともに、現地での経験を日本に向けて積極的に発信し、両国の懸け橋となることが期待されています。(本事業に関する詳細は、国際交流基金アジアセンターのHPをご覧ください。http://jfac.jp/partners/

パートナーズ教務支援専門家の仕事

私は、パートナーズの教務支援専門家として、次のようなことをしています。

  1. ①学校訪問と授業見学、その後のフィードバック
  2. ②Eメールや電話などを通じた質問や相談の受け付け
  3. ③パートナーズとそのカウンターパート(タイ人教師)に対する研修の企画・実施

支援業務の核となるのは①と②です。学校訪問は、パートナーズたちの活動を目にすることのできる貴重な機会です。質問や相談は、文法や漢字の教え方から、スピーチの指導法、遅れの目立つ生徒への対応策に至るまで幅広い内容が寄せられます。学校訪問にせよ、質問・相談受け付けにせよ、パートナーズたちが現場で何を求められているかを窺い知ることができ、支援策に対するヒントとなります。ただ、難しさを感じるのは、日本語教師ではないパートナーズたちにどんな支援をすればよいかということです(注:パートナーズへの応募条件として、日本語教育に関する知識や経験は求められていません)。つい「あれも必要だろう、これも教えてあげた方がいいだろう」と気を利かせ、いつのまにか教師としての働きを求めていたこともありました。しかし、それは「現地教師のサポート」という役割を超えるものであり、パートナーズに過重な負担を強いることにもなりかねません。「パートナーズとは何か?」を念頭に置きつつ、彼らが現場の要望に応えられるよう適切な支援をすることを心がけています。

成長するパートナーズたち

この仕事の醍醐味は、パートナーズたちの成長を目の当たりにすることができる点です。特に20代前半の若いパートナーズたちの奮闘ぶり、成長ぶりには胸を熱くするものがあります。タイ文化にどっぷり浸かる彼らの毎日は、決してバラ色ではありません。文化や習慣の違いに直面し、戸惑い傷つき、寂しさや悔しさに泣くこともあります。カウンターパートとの関係づくりに悩んだ人もいます。自分に何ができるのか悶々とする日々を過ごした人います。それでも、壁を一つ一つ乗り越え、自分の殻を破ることによって、帰国前には驚くほど逞しい顔つきに変わっています。昨年度帰国したあるパートナーズの、「タイに来る前は自分に自信がなかったが、この活動を通して、こんな自分でも人の役に立てるのだと知った」という言葉が、今でも心に残っています。

支援の充実を目指して

パートナーズ教務支援に携わって、今年で3年目を迎えます。これまでの手応えや反省を踏まえ、今年度は以下のような新たな試みに取り組んでいます。

  • 若手カウンターパート対象教授法研修
    …日本語教育に関する知識や経験の少ないカウンターパートに対して実施します。
  • ブログで情報発信(http://ameblo.jp/np-thailand/
    …楽しく学ぶためのクラス活動など、授業のヒントを提供します。
  • 国際交流基金バンコク日本文化センターが実施する教師研修との連関を意識
    …カウンターパートの日本語力・教授力向上は、パートナーズとの円滑なコミュニケーションや、より良い授業実施には欠かせないので、日本語ブラッシュアップ研修や教授法ブラッシュアップ研修への参加を促しています。また、授業見学を通じて把握した現場のニーズを、研修に反映させるようにしています。

パートナーズ事業は、タイの日本語教育の発展に寄与する大きな可能性を秘めています。そこに関われる喜びと責務を忘れずに、今後も支援業務を続けたいと思います。

着任後オリエンテーションで作成したタイ全土に60の桜が咲いていることを示す桜カードの画像
着任後オリエンテーションで作成した桜カード
タイ全土に60の桜が咲いています

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 国際交流基金バンコク日本文化センター
The Japan Foundation, Bangkok
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
タイ国全土の日本語教師・学習者支援のためのさまざまな事業を行っている。教師支援では、中等教育の教師養成・現職教師対象の各種研修、学習者支援では、JFスタンダード講座を始めとする一般講座の開講。また、コンサルタント業務、紀要の発行等を通して情報センターとしての機能を果たしている。
所在地 10th Fl. Serm-Mit Tower, 10F, 159 Sukhumvit 21Rd., Bangkok 10110 Thailand
Tel:66(2)260-8560~64 Fax:66(2)260-8565
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:2名、専門家:1名、指導助手:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1994年

ページトップへ戻る