日本語専門家 派遣先情報・レポート
バンコク日本文化センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
バンコク日本文化センター
The Japan Foundation, Bangkok
派遣先機関の位置付け及び業務内容
タイ人専任講師と共に、タイ国全土の日本語教師・学習者支援のためのさまざまな日本語事業を実施している。教師支援事業では、中等教員向け各種研修、大学教員向けセミナー、日本語パートナーズ支援、一般日本語教師向けには『まるごと』セミナー、学習者支援では、日本語キャンプの開催やJF日本語教育スタンダード講座をはじめとする一般講座を開講している。また、教材開発にも力を入れており、中等教育向け日本語教材や「みなと」のコンテンツを開発している。その他、カンボジアやラオスなど周辺国の日本語教育支援も担っている。2019年度には特定技能チームも発足し、『いろどり』の教師向けセミナーやJFT-Basicの広報を実施している。
所在地
10th Fl. Serm-Mit Tower, 10F, 159 Sukhumvit 21Rd., Bangkok 10110 Thailand
Tel: 66(2)260-8560~64 Fax: 66(2)260-8565
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家:1名、専門家:3名、指導助手:1名、生活日本語コーディネーター:1名
国際交流基金からの派遣開始年
1994年

2つのプロジェクト始まりました!

国際交流基金バンコク日本文化センター(JFBKK
近藤麻衣子、大黒恵美

 この数年で一般的になったオンライン形式の研修は、地域を問わず全国の教師が参加することができる利点もあり、2022年度は対面とオンラインの双方でより多様な形の研修や支援を行いました。オンライン形式の良さもある一方で、対面形式が再開したことで、研修参加者との双方向的なやり取りの重要性を再確認した年でした。
 今回は2022年度に始まった対面形式の2つの新プロジェクトをご紹介します。

中等教育支援、新プロジェクト始動!

 タイの中等教育支援のために、バンコク日本文化センター(以下、JFBKK)ではさまざまな事業を行っていますが、2022年3月より新たに「中等教育日本語教育リーダー教師育成プロジェクト-コンピテンシーの育成を目指した授業の実践と共有-」を開始しました。このプロジェクト開始の背景には、タイ教育省ではカリキュラム改定が予定されており、「コンピテンシーの育成」がその核となっているということがあります。日本でも「生きる力」として子ども達の「資質・能力」を育てる新学習指導要領が発表されていますが、タイでも同様に、「知識」だけではなく生徒の「コンピテンシー」を育成することが重要視されるようになってきています。
 そこで、JFBKKではかめのり財団の支援を受け、タイ教育省と共にいち早く新たな事業を開始しました。この事業では、生徒の「コンピテンシー育成」を日本語の授業に取り込むことができる教師の育成、さらに将来的には各地域で「コンピテンシー育成」について周囲をけん引できるリーダー的存在の教師の育成をめざしています。このプロジェクトでは実践や振り返り(内省)、共有を繰り返し行えるよう、2年間の長期設計になっています。また、このプロジェクトにはタイ全土から14名の中等教師が参加していますが、参加教師同士のディスカッション(ピア活動)を重視するとともに、参加者が主体的に取り組んでいけるようプロジェクト自体も参加者と共に創り上げていくことを目指しています。
 2023年3月には1年目を終え、14名がプロジェクト外のタイ人中等教師向けに実践を共有する「オンライン実践共有会」を行いました。中等教師の参加は170名を超え、14名との質疑応答も盛んに行われていました。発表した14名も自分自身の実践プロセスを振り返る機会になっていたり、他の参加者からの意見や質問に答えることが出来たことで自信につながっていたりと、双方にとって「コンピテンシーの育成」を考えるきっかけとすることができたようです。
 2023年度はプロジェクト2年目として、「日々の授業で」コンピテンシーの育成を意識することに注目していく予定です。通常の日本語の授業にどのようにコンピテンシーの育成する視点を組み込んでいけるのか、参加者14名と共に今後も模索していけたらと思います。

  • 「リーダー教師育成プロジェクト」参加教師の集合写真
    「リーダー教師育成プロジェクト」1年目が終わりました!
  • いろどりセミナーの様子の写真
    『いろどり』体験セミナーの様子

“『いろどり』キャラバン”も始動!

 2022年度前半までオンラインで『いろどり 生活の日本語』(以下『いろどり』)の教師セミナー&JFT-Basicの広報を実施してきましたが、後半からは対面で行えるようになりました。そこで、『いろどり』を先生方に知ってもらい、そして教え方について考えてもらうために、“『いろどり』キャラバン”と題して、バンコクを皮切りに、さまざまな地方都市での『いろどり』&いろどりオンラインコースセミナーをスタートさせました。セミナーでは、先生方に『いろどり』の授業体験をしていただき、その後、『いろどり』の教え方について意見交換をします。今まで使っていた教科書との違いに気がつき、戸惑いながらも、新しい教材をどう使っていくべきか真剣に話し合う時間は、とても有意義な時間であると感じます。オンラインセミナーでは、タイ全土の多くの先生方に『いろどり』の教え方について知っていただけるという利点がありましたが、やはり先生方に直接会ってお話を聞いたり、質問をいただいたり、なにより、先生方同士がつながる「場」を作れることは対面のよさだと実感しています。
    タイでは、『いろどり』の認知度も少しずつ上がり、授業で使ってくださっている先生方も少しずつ増えてきています。長く使ってもらえる教材になることを目指して、『いろどり』をさらに深く理解するための勉強会を行い、教える上での相談などができるような「場」づくりをしていけたらと思っています。

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