日本語専門家 派遣先情報・レポート
ベトナム日本文化交流センター(南部)

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
国際交流基金ベトナム日本文化交流センター(ホーチミン)
The Japan Foundation Center for Cultural Exchange in Vietnam
派遣先機関の位置付け及び業務内容
関係機関と連携し、ベトナムの日本語教育発展に携わる。初等・中等教育ではカリキュラム・教科書作成、教師研修や巡回指導などを行い、日本語パートナーズ事業、日本語教師育成特別強化事業も展開。一般向けには教材『まるごと』使用講座を開講し、同教材の現地出版、普及を推進。また日本での就労希望者などを主な対象に、新教材『いろどり』を用いた日本語教育基盤整備、教師に対する研修、助成等支援を実施。 ホーチミン派遣専門家は、ベトナム南部の初中等教育機関への巡回指導・各種研修、日本語講座、『まるごと』普及活動を中心としつつ、地域を超えた研修や全国規模の事業なども企画、実施。南部での日本関連イベント協力なども行う。
所在地
15, D5 Rd., Van Thanh Bac, Ward 25, Binh Thanh Dist., Ho Chi Minh City, Vietnam
(c/o Vietnam-Japan Human Resources Cooperation Center in Ho Chi Minh City)
国際交流基金からの派遣者数
専門家:2名
国際交流基金からの派遣開始年
2008年

ホーチミンからこんにちは!

国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
栗田恵美子 赤木友架理

ベトナム南部に派遣されている日本語専門家(以下、専門家)は、ホーチミンを中心に、バリア・ブンタウ、ビンズオンといった各地域の日本語教育に関する情報収集や教師研修、JF講座(南部)の運営、JF日本語教育スタンダードの普及などを担当しています。ベトナム南部には日系企業も多く進出しており、ビジネスや来日就労のために日本語を学んでいる学生や社会人、また日本文化に興味を持って学ぶ中高生がいます。そのような学習者を対象に日本語を教えている教師のサポートをするのが専門家の主な役割です。

アフターコロナの中等教師研修

ベトナムの中等教育機関は毎年9月から新学期が始まります。新型コロナウィルスの影響で、2021年はオンライン授業が続き、教師研修もすべてオンラインとなってしまいました。しかし2022年に入って、多くの学校で通常どおり授業ができるようになったことから、新学期の開始を前に、2022年7月に南部、中部、北部に分かれ、対面での中等教師向け研修を実施することになりました。日ごろ、仕事や育児に追われ、なかなか研修に参加できない教師も多い中、約2年半ぶりの対面研修ということもあり、全国で59名の教師が今回の研修に参加しました。

ベトナムにおける外国語カリキュラムの目標である「コミュニケーション活動に参加できる」ようになることを目指し、今回のテーマは「話すことの指導」としました。まず「話す」とはどういうことか自分の経験を振り返り、話せるようになるためには、どんな教室活動が必要なのか授業体験を通じて考えました。その後、グループで生徒にとって身近なコミュニケーション場面を設定し、話す活動を考えました。

南部では、ベテラン、中堅の教師も多く参加し、グループでの話し合い、グループ間の意見交換も非常に活発で、研修終了後には「実際の会話やリアルな場面を設定する方法をより具体的にイメージできた」「教科書を使用して、より効果的に教える方法について考えることができた」とのコメントが寄せられました。研修後は、専門家と指導助手で協力し、教師が作成した教室活動を教材化しました。研修だけで終わるのではなく、実際の授業につながる教師研修のあり方を模索中です。

熱心にグループワークに取り組む教師たちの写真
熱心にグループワークに取り組む教師たち

多様化する学習の選択肢:オンラインコースと対面授業コース

 2022年度は、日本語講座を2コース開講しました。1つ目は『まるごと』活動編のみを使う初級コースで、2年ぶりに対面形式で実施しました。さまざまなトピックについて話すことを楽しみながら日本語を学ぶ『まるごと』の良さが改めて実感できるコースになりました。もう1コースは、平日夜の週2回コース(中級)ですが、通学時間を節約したいという受講者の希望で、オンラインで実施することにしました。社会活動の規制が緩和されても、オンラインで学習するということが定着し、学習者にとって学習方法の選択の幅が広がったと感じる1年でした。

JF日本語教育スタンダード『まるごと』の普及に向けて

 JF講座のような学習者支援とともに、JF日本語教育スタンダードや『まるごと』の普及・関心を持つ機関や、すでに導入をしている機関への支援も専門家の業務です。2022年度は、教科書を紹介する説明会だけでなく、教科書の中の「話す」などのテーマを取り上げる勉強会、実際に『まるごと』を使って授業を行う教育実習のような研修も実施しました。南部には定期的な教師会、勉強会がないので、こうした機会が教師の意欲を引き出すことや、ネットワークづくりに役立てればと考えています。一方で、授業の構成や教案の作成といった基本的なことを学ぶ場が少なく、もう少しきめ細かな支援が必要だとも感じました。こうした気づきを2023年度の支援に生かしていきたいと考えています。

『まるごと』を使った教育実習の写真
『まるごと』を使った教育実習

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