日本語専門家 派遣先情報・レポート
ベラルーシ国立大学

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
ベラルーシ国立大学
Belarusian State University
派遣先機関の位置付け及び業務内容
ベラルーシ国立大学の日本語日本研究コースは国際関係学部に設置されており、ベラルーシの政治や外交の場面で活躍できる人材の輩出を目指している。そのため、当コースでも日本の政治や経済、外交問題についても造詣が深い知日家を育成し、ベラルーシと日本との国家レベルでの交流を担う人材を輩出することを目指している。専門家は会話の授業を担当するとともに他教師へのアドバイスを行なっている。
所在地
Leningradskaya St.20, Minsk, 220050, Belarus
国際交流基金からの派遣者数
専門家1名
日本語講座の所属学部、学科名称
国際関係学部東洋学(日本語日本研究)コース
日本語講座の概要

「日本からのオンライン授業」

ベラルーシ国立大学
山岡洋輔

 ベラルーシ国立大学での「オンライン業務」も2年目を迎えました。2022年度はベラルーシ国立大学において教員の人事異動などが活発に行われたため、一時期はやや混乱も見られましたが、2023年3月現在は落ち着いています。私は2021年度に引き続き、4年生(中上級)と2年生(初中級)の授業を担当したほか、2022年秋からは日本留学のために休学していた3年生(休学して留学していたため、本来は4年生)の授業も増えて、3つのクラスの「会話」を担当しています。授業の中では「日本からのオンライン」という特性を活かした授業となるよう工夫しています。

日本の大学との合同授業

 今年度も日本の大学の協力を得た合同授業を行いました。人数が少ない4年生と3年生は合同クラスにして「自分の意見を日本語で話す」という主旨で実際に日本の大学生とディスカッションをするという活動を行いましたが、日本人学生を差し置いて議論の主導権を握る学生もいて感心しました。2年生は事前に準備した「自己紹介シート」を双方で共有し、その中から興味を持ったことをお互いに聞き合うという活動をしました。いつの間にかお互いの連絡先を交換して、合同授業後もSNSで交流を続けているようです。最近では私とチャットで連絡する際の日本語力が向上しており、「会話」の練習のつもりで取り入れた活動が「書く」能力にも波及していて思わぬ副産物となりました。

ゲストを招いてのインタビュー調査

 2022年度に行った活動で結果的にもう一つの目玉となったのが、3年生の授業の中で行った日本人ゲストを招いたインタビュー調査です。前述のように3年生は日本留学を経験した学生たちなのですが、「憧れの日本に留学できたけど、歌舞伎や落語など伝統的な文化については触れる機会がなかった」ということを言っていました。これを聞き、オンライン授業という特性を活かしてそうした日本文化のプロをゲストとして授業に呼べないか考えました。試行錯誤して実現したのが友人の尺八演奏家をゲストに招いたインタビュー調査です。和楽器についての事前学習を行い、ゲストに聞きたいことを学生たちにまとめさせて本番を迎えました。日本文化の担い手から直接話を聞ける機会は貴重だと学生たちも理解したようで質問は尽きず、学生から私も知らないような専門用語まで飛び出しました。ゲストは関西出身ということで時折、関西弁が混じるのも学生たちにとっては生きた日本語を聞くいい機会になったようです。後日、インタビュー調査の結果をまとめてプレゼンをしてもらいましたが、とても聞き応えのあるいいプレゼンでした。そのまま学期論文に使いますという学生もいて、企画してよかったです。

ゲストを招いての授業の写真
ゲストを招いての授業

今後の課題

 今では「日本からのオンライン」で何ができるかを考えるのが一つの楽しみになっています。ただ、気をつけなければならないのが授業の工夫を考えるあまり学生を置き去りにしてしまいそうになることです。実は上記以外にもパソコンを持って外に出て実際の桜を見せたり、駅の様子を(もちろん駅員さんの許可をとった上で)見せたりしながら授業をしたこともありました。しかし、揺れて見づらいし、雑音も多いし、写真で十分だったという散々な結果に終わりました。合同授業やインタビュー調査は学生の要望に適っていたため、学生にとって充実感のある活動となりましたが、オンラインの利点だけを追及して失敗することも多々あります。「学生にとって意味があるのか」をまず考え、その上で「それをどうやってオンラインで工夫するか」という視点を忘れないようにしたいと思います。

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