世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)教師間ネットワークの再構築が課題です

ソフィア大学
三森優

私がここソフィア大学へ赴任してから、1年半が経過しました。ここでは赴任地であるブルガリアでの私の仕事の内容をお話しします。

ソフィア大学での仕事

日本語専門家(以下、専門家)は、ソフィア大学日本学専攻の2年生~4年生(最終学年)までの授業を担当します。1年生は日本語指導助手が担当しています。各学年とも非常勤講師の先生方とチーム・ティーチングで授業を進めています。1年生は今年、入学者が多く20名を越えるクラスとなっています。一方、3年生は現在日本に留学している学生が多いので、4名というクラスサイズです。このように学年によって、人数はかなり異なります。特に今年度は日本留学から帰ってきた学生が多く、4年生の授業は非常に活気があります。この4年生の授業では実際に日本語を使って「できる」ことを増やすように、そして日本と積極的にかかわれるように、podcast番組の作成やビジネス事業計画プレゼンテーションなどの授業を行いました。そのほか、後期は昨年同様卒業に向けての卒業レポート指導とその口頭発表の指導をしています。

このように専門家は、現地の教師たちとともに2~4年生までの授業を受け持っていますが、現地の教師たちから相談があった場合、助言したりすることも仕事の一つです。今年は特に日本学専攻の「自立化」をより促進するため、できるだけ「自分たちで」仕事が進められるように、専門家として「一歩下がったところから」支援することをかなり意識して仕事を進めています。ソフィア大学はすでに専門家が派遣されてから歴史も長く、自分たちで学術会議も実施できますし、毎年5月末に行われる「日本文化祭」の運営も在学生たちが主体となって進めています。このように、すでに潜在的に自立化の力を有していると思われる機関なので、専門家があまり「前に立たない」よう日ごろの業務では注意しています。

以上が派遣先機関であるソフィア大学内での専門家の主な業務内容です。前述のとおり、日本語指導助手も派遣されていますので、助手とともにソフィア大学の業務に取り組んでいます。

ブルガリア全体に対する仕事

ブルガリア日本語日本文化教育セミナー2016でワークショップを務める村上上級専門家の画像
ブルガリア日本語日本文化教育セミナー2016で
ワークショップを務める村上上級専門家

専門家にとって、ブルガリア国内の日本語教育を支援する国内アドバイザーとしての業務もとても重要な仕事です。毎年実施される日本語弁論大会の支援もその一つです。今年の4月の弁論大会では質問者とネットでの動画配信を担当しました。今年は、ハンガリーにある国際交流基金ブダペスト日本文化センター(以下、JFBP)の村上吉文日本語上級専門家に審査員のご協力をいただいたおかげで、弁論大会も昨年よりもより充実したものになったのではないかと考えています。

この弁論大会の翌日、タイトルにもある、ここ数年停滞していた教師間ネットワーク再構築のために「ブルガリア日本語日本文化教育セミナー2016」と題したセミナーを実施しました。ブルガリアでは、以前は存在していた教師会が解散してからすでに久しい状況です。教師会のようなネットワークがないため、現在、教師たちが実際に顔を合わせながら日本語教育について話し合うような機会がありません。そのため、ソフィア大学の先生方と相談してこのようなセミナーの実施を企画しました。セミナーには地方及びソフィアの日本語教師たちに集まってもらいました。セミナー内容は、冒頭、普段あまり連絡の取りあえない地方教育機関の先生方に現状や課題点を発表していただき、さらに弁論大会にもご協力いただいた村上専門家に、ネットワークの構築とICTの利用についてワークショップをしてもらいました。セミナー終わりの時間には、これからのネットワークについて会議する時間を設け、具体的な今後の話し合いもできました。このような機会が持てたのは主催機関のソフィア大学と講師を派遣してくれたJFBPのご協力のおかげです。両機関には、とても感謝しています。

近隣国ともネットワークをつなぐ「バルカン半島日本語サマーキャンプ」

バルカン半島日本語サマーキャンプで自国の紹介発表をする参加者たちの画像
バルカン半島日本語サマーキャンプで
自国の紹介発表をする参加者たち

このように、ソフィア大学、ブルガリア全体、と専門家はそれぞれに対して業務をしていますが、ソフィア大学主催の「バルカン半島日本語サマーキャンプ」の実施協力も毎年大切な仕事です。すでに4回実施のこのキャンプには、ブルガリアの他近隣4か国(マケドニア、セルビア、ルーマニア、トルコ)からも学習者と教員に集まってもらいます。そこで、日本文化のワークショップなどを通じて言語・文化を学びますが、毎年参加者には大好評です。今年も実施予定となっていますので、昨年のような学生たちの笑顔が見られるよう頑張ろうと思っています。

以上のように専門家はソフィア大学、ブルガリア、そしてバルカンの近隣国、とともに仕事をしていますが、これからもそれぞれの内容を充実させながらブルガリアの「ネットワーク再構築」を進められたらと考えています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Sofia University "St. Kliment Ohridski"
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ソフィア「聖クリメント・オフリドスキ」大学日本学専攻はブルガリアにおける日本語教育の最高峰の機関である。日本語専門家は2年生から4年生までの週計6コマの授業を担当し、学習者の更なる成長を目指すとともに、チームティーチングや勉強会により、ネイティブ教師の日本語力や教授力の向上を目指す。そのほか、カリキュラム・教材に関する助言、日本語教育ネットワーク構築のための支援も行う。
所在地 CIEK, 79 Todor Alexandrov Blvd, Sofia 1303, Bulgaria
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名、指導助手:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
古典及び現代言語学部、東アジア言語文化学科、日本学専攻
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   一般講座:1968年
専攻:1990年
国際交流基金からの派遣開始年 1981年
 
コース種別 専攻
 
現地教授スタッフ 常勤:7名(うち邦人0名)
非常勤:8名(うち邦人1名)
学生の履修状況
履修者の内訳1年生から4年生まで各5名から25名程度(留学者除く)
学習の主な動機日本語や日本文化に対する好奇心、日本への留学
卒業後の主な進路日本・ブルガリア両大使館、ブルガリア外務省、一般企業、進学
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N4~N1程度
日本への留学人数12名

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