日本語専門家 派遣先情報・レポート
カレル大学

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
カレル大学
Charles University
派遣先機関の位置付け及び業務内容
チェコにおいて日本語・日本研究専攻の学科を持つ3大学のうちの一つであり、同国の日本研究・日本語教育の中心的な役割を担っている。研究者養成を目標とし、日本語学・社会・経済・歴史・文学・思想史などについての授業が行われており、学生は卒業論文のテーマもこれらから選択する。日本語専門家は、日本語教授、カリキュラム・教材作成への助言を行うほか、日本語教師会を始め、他の教育機関の日本語教育支援や日本語弁論大会など日本語教育関連行事への協力、また日本語教育関係者のネットワーク作りを業務とする。
所在地
Nám. Jana Palacha 2, 116 38 Praha 1, Czech Republic
国際交流基金からの派遣者数
専門家:1名
日本語講座の所属学部、学科名称
哲学部アジア研究所日本研究学専攻(通称 日本研究学科)
日本語講座の概要

「復活した日常生活と共に」 

カレル大学
川島眞紀子

「復活した日常生活。日本語の継続と発展と」

 もはやパンデミックは忘却され、プラハも他の欧州と同様、以前の状況をすっかり取り戻しつつあります。あの2年半に得た経験と教訓の上にこれからのチェコの日本語教育を願いながら、最後の記事を書きたいと思います。

<2022年度のカレル大学>

 2022年度、私の勤務先であるカレル大学にはうれしいできごとがありました。それは、本学科の重鎮であるヤン・シーコラ先生が、旭日小綬章を受けられたことです。シーコラ先生は日本社会と経済の研究において、長い間チェコの日本研究を牽引してきました。叙勲伝達式はパンデミックにより延期されていましたが、ようやく開催されることになり、同僚の私たちも招待され、いっしょに祝杯をあげることができました。
(在チェコ日本国大使館ウェブサイト掲載ページ)
https://www.cz.emb-japan.go.jp/info_ambassador_activity.html#k220527
(カレル大学哲学部機関広報誌 “Forum”、2022年12月リリース)
https://www.ukforum.cz/en/main-categories/science/8713-a-deep-fascination-with-the-land-of-the-rising-sun
 このお祝いと前後し、2019年からペトラ・金杉先生と取り組んできた『形式名詞ハンドブック』が、カレル大学出版部から上梓されました。実現までは格闘の日々でしたが、素敵なラベンダー色の表紙がカレル大学書店の店頭にあるのを見た時、胸が熱くなる思いでした。

カレル大学書店に並ぶ『形式名詞ハンドブック』 の写真
カレル大学書店に並ぶ『形式名詞ハンドブック』

https://karolinum.cz/en/books/kanasugi-japonska-pomocna-podstatna-jmena-v-prikladech-a-srovnani-26459
 本冊と2018年出版の『複合動詞ハンドブック』は、索引がオンラインで連携され、双方の関連性がわかりやすくなっており、日本語の学習を助けます。
 先生は学生時代、「言語体系において対極にあるようなチェコ語と日本語だからこそ、興味深い比較ができるだろう」と考え、言語研究の道に入られたそうです。
 これまで先生は私の前任者である歴代の専門家たちと共に「日本語文法ハンドブック・シリーズ」を出版、これが第3弾です。本冊もまたチェコの学習者に有益な参考書となることを願っています。

<チェコ国内外の活動の継続>

 欧州各国から参加者が集まった「国際小噺合同発表会(KKGH)」は、2022年にも第2回がオンライン開催されました。現在は、「KKGH YouTubeチャンネル」で動画をご覧いただくことができます。
KKGH YouTube URL: https://www.youtube.com/@kobanashifestival8848
 また、日本語教師サロンである「土曜、にほんご朝活!」も、チェコ内外からご参加いただいています。一見、先生間の何気ないおしゃべりですが、漠然としていたアイデアが明確になることもあります。このサロンは、教師経験の浅い先生の悩みや質問解決のお手伝いになればと思って始めたのですが、実は、私にとって初心を思い出す契機となり、毎回多くを学んでいます。
 最後に、プラハに在住する若手の先生が中心となり、2021年11月から隔月でオンライン開催している「日本語教師交流会 in CZ & SK(チェコ&スロバキア)」を紹介しましょう。参加者は主にチェコとスロバキアの日本語教育関係者です。

日本語教師交流会の写真
日本語教師交流会 in CZ & SK

 この交流会のユニークな点は、講義形式ともワークショップとも異なる「対話」であることです。
 これまで「語彙を教える」、「読むことを教える」などといったテーマが取り上げられてきました。はじめにテーマが提示され、参加者は3〜5人のグループで30分以上対話し、全体会ですべての情報を共有します。この交流会では、参加者が教歴や学習歴に関わらず、同じ目線で話し合っています。例えば、日本語教育を履修中の大学生も、日本語教育の経験者も、自由に話せる環境があります。日本語教育に興味がある人々に開かれている場、ですから、勉強会ではなく、「交流会」なのです。教師間の学び合いに障壁がないこと、話を聞いて考えて話す、を繰り返す。単純なことですが、容易ではありません。それができることは、チェコの日本語教育にとって、大いなる希望の光だと思うのです。

 ところで、チェコへの日本語専門家派遣がまもなく終了するため、私が本記事を書くのはこれが最後となります。これまで主にプラハを中心に、チェコにおける日本語教育の一端を紹介してきました。みなさまにプラハやチェコ、また中東欧という地域に関心を持っていただけたのなら、大変嬉しく思います。

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