日本語専門家 派遣先情報・レポート
キルギス共和国日本人材開発センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
キルギス共和国日本人材開発センター
Kyrgyz Republic-Japan Center for Human Development
派遣先機関の位置付け及び業務内容
1995年に支援委員会により設立され、2003年国際協力機構(JICA)に移管された国際協力機構日本センタープロジェクトによる現地法人。市場経済化に資する人材育成を目的としたビジネスコース、日本語教育、相互理解促進事業を活動の主眼としている。日本語講座は2013年8月より国際交流基金との共催事業となり、JF日本語教育スタンダードを核としたカリキュラムによる日本語コースを提供している。日本語専門家は一般成人を対象とした日本語講座の運営とともに、キルギス全体の日本語教育に対する支援・協力を行う。
所在地
KNU, Building 7, Floor 2 720033 Kyrgyz Republic 109 Turusbekova Street, Bishkek.
国際交流基金からの派遣者数
専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年
2003年

若手教師の成長のために 日本語教師研修の実施

キルギス共和国日本人材開発センター
坂下 太一

 国際交流基金日本語専門家(以下専門家)として、私は派遣先であるキルギス共和国日本人材開発センター(以下日本センター)のコース運営を主な業務として行っていますが日本語教育機関の巡回や、イベント実施のサポートなど、キルギス在住の日本語教師のサポートも行っています。
 2022年には、キルギスでは日本語教育人材の大きな移動がありました。原因としては、新型コロナウイルの感染拡大を防ぐために行われてきた、日本の水際対策が緩和され、滞っていた訪日プログラムが再開したことが考えられます。結果として日系企業、日本語教育機関では人材不足が起こり、日本語教育の現場では経験の浅い若手の教師が教壇に立つことが多くなりました。
 大学や高校などの教育現場を巡回する際にも、若手の教師からは授業の進め方などでアドバイスを求められることが多くなりました。そして、ある日一人の教師から「若手教師を対象とした教え方の研修をしてほしい」と依頼を受け、引き受けることにしました。
 研修の参加者を募集したところ、20名以上の方が申し込みをしてくれました。現在教育現場で働いている若手教師を中心に、産休などでブランクのある方、将来的に日本語教師を目指している方など応募者はさまざまでした。

現地の高校で出張授業を行う報告者の写真
現地の高校で出張授業を行う報告者

 キルギスには日本語教師の養成課程がないため、自身の学生時代を振り返り、当時の教師の見様見真似で授業をすすめている方がほとんどです。研修の参加者も教授経験に多少の差はあっても、正式に教師としてのトレーニングを受けた方はほとんどいませんでした。
 そこで、私はこの研修に二つの目標を設定することにしました。
 まずは初級日本語を教える際に必要となる日本語教授法、第二言語習得理論の基礎知識を学んでもらい、現在の自身の授業を分析できるようになることです。たとえば、初級文法の導入の際に「できるだけ学習者に意味を推測させる」「日本語でわかりやすい例文を提示する」など、当然のように行っていることを第二言語習得理論と照らし合わせ、どうして必要なのか?本当に必要なのか?と再検討してもらいました。研修期間は限られていますが、このような経験は研修が終わった後も自己改善のために役立つはずです。

 二つ目は研修参加者同士のネットワークを構築することです。若手の教師は所属機関以外の教師との繋がりが薄く、視野が狭くなる傾向があります。また、単身で日本語を教えている方は、誰からのサポートも受けられず、相談する相手すらいないため、日本語教育を続けられなくなってしまったということもあるようです。困った時に相談できる相手や、お互いに切磋琢磨できる人材が身近にいれば、専門家がいない所でも成長できるようになるのでないでしょうか。そこで、研修中はディスカッションを中心に、参加者同士がコミュニケーションを取れる活動を多く取り入れました。
 たった12時間の研修ですので、今回の教師研修の成果がすぐに現れるとは思っていません。正直な所、現場ですぐに役立つ知識だけを学んでもらえば、満足度はもっと高いものになったかもしれません。しかし、何事も長期的な視点で見ることが大切です。参加者の皆さんの教師生活の中で、いつか今回の研修で得た経験が役立ち、教師としての成長に貢献するようであれば嬉しい限りです。

日本語研修で実際に使用したスライドの写真
日本語研修で実際に使用したスライド

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