日本語専門家 派遣先情報・レポート
ヤギェロン大学

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
ヤギェロン大学
Jagiellonian University
派遣先機関の位置付け及び業務内容
専門家は派遣先機関での日本語教授の、及び派遣先国全体の日本語教育に関するサポートを行う。ヤギェロン大学はポーランド国内で日本学を主専攻にもつ国立4大学の中のひとつであり、同国における日本研究・日本語教育の重要な役割を担っている。専門家は派遣機関でのカリキュラム・教材作成への助言を行うほか、ポーランド日本語教師会やポーランド南部日本語教師の会など教師団体が行うイベントへの協力、その他ポーランド全土に広がる日本語教育現場へのサポートを目的に活動する。
所在地
Aleja Adama Mickiewicza 9, Krakow, Poland
国際交流基金からの派遣者数
専門家1名
日本語講座の所属学部、学科名称
文献学部東洋学研究所日本中国学科
日本語講座の概要

古都クラクフのポーランド最高学府で学ばれる日本語

ヤギェロン大学
坂本 美知

 ポーランドの古都クラクフにあるヤギェロン大学は首都のワルシャワ大学と並びポーランドの最高学府と言われており、国内外から優秀な学生が集まっています。国際交流基金(以下、JF)日本語専門家(以下、専門家)が派遣されている日本学科の学生も非常にレベルが高く、学生の意識の高さに圧倒されるほどです。
 学生たちは現代文学や古典など、さまざまな分野を専門の先生方から学んでいますが、JF専門家は実用日本語と呼ばれる日本語運用能力を伸ばす授業をポーランド人や他の日本人教師とともに担当しています。授業内容はそれぞれの学年で他の教師陣と連携をとりながら会話や文法など自身の授業では何に重点を置くべきなのか考えながら決めています。
 近年では大学入学以前に日本語を学んでいるケースも多く、入学当初からある程度の日本語能力を持った学生が平仮名から始める学生と同じ教室にいることも珍しくないため、担当する教師としては悩ましいところですが、そこは最高学府の学生らしく初めて日本語を学ぶ学生もあっという間に追いついてきます。
 専門家が担当する修士課程の授業では、日本とポーランドについて各国が抱える問題点を独自の視点で調査分析するプロジェクトを全て日本語で行っています。アカデミックな日本語表現を用いて日本人留学生の前で調査結果をプレゼンし意見交換するなど、日本語表現の幅を広げつつ自分自身の日本語について課題を確認できる非常に有意義な活動になっています。

プロジェクトの途中経過を発表する学生の写真
プロジェクトの途中経過を発表する学生

弁論大会

 2022年10月の新学期より対面授業が全面的に再開されたポーランドですが、冬の間は寒さもあり、教師も学生たちも本当にこのまま日常が戻ってくるのだろうかという不安がどこかにあったように思います。そんな中、2023年3月にはポーランド日本語教師会主催で4年ぶりの日本語弁論大会が対面で実施されました。
 パンデミック後初の対面イベントとなったのですが、長く休止されていたため出場する先輩たちの姿を見ている学生もほとんどおらず、学内で出場者を募っても最初は反応も薄く戸惑った様子でした。しかし最終的には出場枠を越えて希望者が集まり、学内選考を行わなければならないほどでした。大会には各機関を代表して素晴らしい出場者が集い、非常にレベルの高い大会となりました。それぞれの経験や日本語に対する思いを熱く語る姿を見ていると、パンデミックや世界情勢の不安の中でも希望を失わず日本語と真摯に向き合ってきた様子が伝わり、彼らがつなげていくこれからのポーランドと日本の未来はきっと明るいものになるだろうと強く感じました。
 弁論大会を皮切りにポーランド日本語教育界も活気を取り戻しつつあります。ただ、ここ数年の自粛でこれまで作り上げてきたノウハウが上手く引き継がれず、何かを始めるためにはこれまで以上のエネルギーが必要です。しかし、弁論大会で学習者が見せてくれた情熱を持ってすれば、これまで以上のものができるに違いありません。教師を対象としたセミナーや勉強会などについても新しいスタイルとして定着したオンライン開催の利便性と対面での交流の良さをどう融合させていくのかが今後の課題となりそうです。

弁論大会の写真
4年ぶりの弁論大会

What We Do事業内容を知る