世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) サハリンの日本語教育の現場から

サハリン国立総合大学
阪上 彩子

 ソビエト連邦崩壊前から日本語教育が始まっていたサハリン国立総合大学(以下、サハリン大学)。ロシアの中では歴史も長く、サハリンで油田・天然ガスの開発プロジェクトが行われていたころは、学習者も多かったのですが、ペレストロイカでの社会不安から出生率が下がった為、今の大学生人口はとても少なく、その影響でサハリン大学でも日本語を専攻している学生は計70名ほどになりました。同じ東洋学科には中国語専攻と韓国語専攻がありますが、同様に減っているようです。

 しかし札幌から1時間と地理的に近く、日本経済の影響も受けているので、日本語に対する関心は低くならないのではないかと予想し、今後徐々に高まっていくことを期待しています。

専門家の仕事(1)サハリンでのネットワーク作り 

現地の先生と共同で行った調査をセミナーで発表した写真
現地の先生と共同で行った調査を
セミナーで発表しました

 教育体制が整いつつあるサハリン大学に派遣され、行った仕事は、サハリン内でのネットワークづくりです。サハリンでは初中等教育機関4つと高等教育機関3つで日本語が教えられています。初中等教育機関と高等教育機関ではスケジュールが異なるので、ここ数年集まる機会がなかったのですが、それぞれの機関での問題や、お互いの興味・感心、知識・情報の共有は大切なことですので、昨年度からセミナーを開催することになりました。

 きっかけになったのは、2011年9月に大学内にリソースセンターが開設されたことで、他校の先生方が教材を借りに大学によく来てくれるようになったからだと思います。

 サハリンにいる日本人の先生とは月に2回集まり一緒に日本語教育について勉強していました。その成果をセミナーで発表できたのもいい機会だったと思います。

専門家の仕事(2)極東・東シベリア地区のつながり

 昨年2011年10月に極東・東シベリア日本語弁論大会・日本語教育セミナーがサハリン大学で開催されました。弁論大会では、ブリヤート、イルクーツクなど9地域から15名の学習者が参加しました。残念ながら、サハリンの学生は入賞できませんでしたが、スタッフとして働いた教員たちは無事終了したことをほっとしました。翌日の教師セミナーも同地域から20数名ほどの教師の参加がありました。

 ただ学期が始まったばかりで落ち着きがなかったからか、弁論大会の実施に重きが置かれているからか、セミナーでは情報共有のためにゆっくり話し合う時間がとれませんでした。そこで、学期も落ち着いた3月ごろに、日本から先生を呼んで講演を行う会を行おうと思い、ウラジオストクの極東連邦大学で第1回極東・東シベリアシンポジウムを開催しました。第1回ということもあり、問題点も多々ありましたが、今後続けていき、よりよい会になってほしいと思います。

学生たちについて

学生たちが会話クラブで司会をする写真
学生たちが会話クラブで司会をしています

 サハリン大学で教えていて気になったことは、学生たちは、熱心で真面目な学生が多いのですが、教師の言われたことに従っているだけで、どうして学習しているのかを考えている学生は少ないと思ったことです。そこで、学生たちが自律的に行動してもらうように活動を行っていたのですが、その活動の一つが会話クラブの司会をしてもらうことでした。

 サハリンでは、今年度からロシア語も日本語も学べる会話クラブを月に1回開催していました。毎回学生が司会するまでには至っていませんが、ロシアに関する文化行事などを紹介する回では、企画・運営と積極的に動いてもらっています。先生に言われるのを待っている姿勢は変わりませんが、遠慮せずに意見を言うようになったのは大きな一歩だと思います。

 学習するモチベーションを下げさせないためにも、学生が目標を定め、より自律的に学習できるように、そんな環境を作る努力していきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 サハリン国立総合大学経済東洋学大学
Sakhalin State University, Institute of Economics and Oriental Studies
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
サハリン州において唯一の国立高等教育機関で、当地の高等教育の中心的役割を担っている。サハリン日本語弁論大会や、日本語教育セミナー、日本語能力試験等、日本語教育に関わる諸活動は、当大学と外部機関とが協力する形で運営されている。多くの卒業生が主にサハリン内の教育界・経済界で活躍しており、サハリン社会への貢献度は高い。日本語専門家は日本語の授業のほかに、現地教師へのアドバイスや勉強会、教師会運営等を行っている。
所在地 Prospect Kommunistichesky 33, Yuzhno-Sakhalinsk, RUSSIA
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
東洋学部 言語学科日本語専攻/東洋学科日本語専攻
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   1989年
国際交流基金からの派遣開始年 1993年
コース種別
言語学科/東洋学科:日本語専攻
現地教授スタッフ
常勤8名(うち邦人2名)
学生の履修状況
履修者の内訳   1年生8名 2年生23名 3年生13名 4年生30名 5年生12名
学習の主な動機 日本文化知識への興味、日本語でのコミュニケーション、日系企業就職
卒業後の主な進路 外資系企業就職、ロシア企業就職、日系企業就職
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N2~N3レベル
日本への留学人数 30名ほど

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