世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)サハリンの日本語教育事情

サハリン国立総合大学付属東洋学・観光サービス大学
山崎紀子

日本の「隣国」はどこかと聞かれ、真っ先に頭に浮かぶのはどの国でしょうか。サハリン州(以下、サハリン)から地理的に最も近い隣国は日本で、州都ユジノサハリンスクから札幌まで飛行機で1時間です。島の南部は戦前には日本の領土であったことから、市内には樺太時代の建造物が残っています。現在も日本との経済活動や人の往来も非常に盛んで、サハリンに住んでいるとロシアは「近くて遠い国」ではなく、「隣国」だと感じることも多いです。また、日本人の血を引くロシア人が多いことにも驚かされます。

以下、日本語専門家(以下、専門家)として、サハリンでどのような業務を行っているか、紹介したいと思います。

大学の業務

サハリン国立総合大学(以下、国立大学)の日本語学科で1~3年生の日本語の授業を担当しています。学科全体のレベルアップを目標にし、同じ学年を担当している教師とは普段からコミュニケーションを図り、風通しを良くすることに努めています。その他、同僚教師への情報提供や助言、大学が関わる日本語教育関連事業(後述)の支援を行っています。

日本語教育関連事業

①教員セミナー

リソースセンター兼日本語学科教室の写真
リソースセンター兼日本語学科教室

2月に初中等教育機関(以下、シュコーラ)の教員対象のセミナーを行いました。2011年に国立大学に開設したリソースセンターの教材紹介と活用方法など4コマを担当しました。

②オリンピアーダ(日本地理コンテスト)

オリンピアーダ(日本地理コンテスト)の会場風景の写真
オリンピアーダ(日本地理コンテスト)の会場風景

ロシアのシュコーラでは様々なオリンピアーダ(オリンピック)が行われています。オリンピアーダでいい成績を収めると、大学入試の評価対象になったり、奨学金が支給されたりする可能性があるとのことです。国立大学で5月に日本の世界遺産に関するクイズ大会を開催しました。

③スピーチコンテスト

ロシアは非常にスピーチコンテストが盛んな国で、ロシア各地で開催されています。その中でもCIS大会がロシアでは最大規模の大会で、CIS大会の出場権を獲得する道のりは遠く、ユジノサハリンスク大会、次に極東・東シベリア大会で上位に入賞することが条件になっています。専門家はスピーチ指導とコンテストの運営にも関わっています。10月の極東・東シベリア大会の開催地はサハリンで、9月中旬の赴任当初から準備に追われましたが、当日は滞りなく終わることができました。

日本語教師会運営

日本語教師会(以下、教師会)では現地の日本人教師3名で月に1,2回教師会を開き、日本関連行事の運営について話し合っています。

①詩の暗唱コンテスト

シュコーラで日本語を学習する生徒対象のコンテストで、教師会では詩の選定から運営まで行っています。

②書道コンテスト

各日本語教育機関で3~4月に書道の授業を実施し、1か月間、市内の2大学で作品を展示します。在ユジノサハリンスクの日本関連機関の方々に審査をしていただき、5月のユジノサハリンスク・スピーチコンテストで表彰を行っています。今年度は110名の作品が展示されました。

JLPT(日本語能力試験)模擬試験実施

2013年から11月に受験希望者を募って、模擬試験を行っています。ロシアでは口頭試験が一般的で、マークシート方式のテストを知らない学習者が多いので、普段の授業でJLPT対策をしない機関の学習者にはいい練習になっているようです。

④会話クラブ

月に1回、ロシア人日本語学習者とユジノサハリンスク在住日本人に集まっていただき、様々な活動をしています。川柳を作ったり、日本の伝統玩具で遊んだりする会もあれば、ロシアの伝統行事を体験できる会もあります。毎回15~30名の方に参加いただき、交流を深めています。

シュコーラ訪問

ユジノサハリンスク市内のシュコーラを訪問し、授業の見学や参加をさせてもらっています。また、教師に対する助言や情報提供を定期的に行い、話し合いの機会を設けています。

日本文化デー

3月にサハリン最大のショッピングモールで総領事館主催第二回日本文化デーが開催され、約3,000人が訪れました。ステージでは茶道のデモンストレーション、三味線の演奏、コスプレ、各ブースでは折り紙体験、書道、伝統玩具紹介、もちつきなどを行いました。国立大学の学生ボランティアも会場で運営を手伝ってくれ、当日は大盛況に終わりました。

その他の日本文化イベント

5月はユジノサハリンスクから車で2時間のところにあるホルムスクという町で日本文化紹介の手伝いをしました。書道、折り紙は大盛況で、予定より大幅に超える方々に来ていただきました。是非、また来てほしいという要望があり、もし実現するなら小さな日本語教室のようなものができればと考えています。その他、ユジノサハリンスク市内にある子供センターの日本文化紹介のイベント開催の依頼を受け、現在は準備をしているところです。

来年度も引き続き日本関連イベントに協力し、また教育現場では日本語教育の普及、発展に貢献できるように努めていきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 サハリン国立総合大学付属東洋学・観光サービス大学
Sakhalin State University, Institute of Asian Studies and Hospitality
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
サハリン州において唯一の国立高等教育機関で、当地の高等教育の中心的役割を担っている。サハリン日本語弁論大会や、日本語教育セミナー、日本語能力試験等、日本語教育に関わる諸活動は、当大学と外部機関とが協力する形で運営されている。多くの卒業生が主にサハリン内の教育界・経済界で活躍しており、サハリン社会への貢献度は高い。日本語専門家は日本語の授業のほかに、現地教師への助言や情報提供、教師会運営等を行っている。
所在地 Kommunisticheski Prospect 33, Yuzhno-Sakhalinsk, 693000, Russia
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
東洋学部 言語学科日本語専攻/東洋学科日本語専攻
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年 1989年
  国際交流基金からの派遣開始年 1993年
 
コース種別
  言語学科/東洋学科
 
現地教授スタッフ
  常勤9名(うち邦人2名)
学生の履修状況
  履修者の内訳 主専攻で各学年9~15名
  学習の主な動機 日本文化への興味、元残留邦人の子孫
  卒業後の主な進路 企業就職(日系含む)、教員、大学院進学、日本留学
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
N2受験が可能なレベル
  日本への留学人数 25名程度

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