世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)異文化理解教育としての日本語教育

ドゥーレットマーメットアザディ名称世界言語大学
トルクメニスタン国民教育大学(研究所)
大谷 英樹

トルクメニスタンはアクセスできる情報が限られているため謎のベールに包まれた部分が多く、それが様々な憶測を呼んでしまいがちなのですが、近年は少しずつ開放路線が進められているようで、ビジネスや教育の面で外国(人)との交流が広がりつつある印象を受けます。

特に日本との関係においては、2015年の安倍総理大臣の来訪を契機に公教育での日本語教育が一気に拡大し、2018年現在では小学生から大学生までを含めて学習者が3,000人超となっています(「国際交流基金海外日本語教育機関調査報告書」より)。今後も毎年1,000人単位での学習者の増加が見込まれ、国内初の「日本語能力試験」の実施も検討されています。

このような状況下で、派遣専門家と指導助手は教材開発・日本語教育人材育成を中心とした多岐に渡る業務に携わっています。日本語教育に関する主な業務についてはこれまでのレポートで紹介されていますので、今回は「異文化理解」という視点から日頃の活動やイベントの一部をご紹介したいと思います。

トルクメニスタン初「寿司コンテスト」

トルクメニスタン料理は肉料理が中心で生魚を食べる習慣はありません。食料品や日用品の多くがロシア、トルコ、イランなど近隣諸国や欧州からの輸入に頼っており、その影響で各国料理もレストランやスーパーで見かけます。さらに最近では、大型ショッピングモールなどで寿司を提供する店も増えてきています。

そのような中で、2019年11月にトルクメニスタン初の「寿司コンテスト」がアシガバット市内で開催されました。主催はレストランオーナーのロシア人で、日本大使館が協賛となり、在留邦人は特別に無料で招待を受けました。アシガバット市内の6店舗のシェフ達が制限時間内に指定された具材で握り寿司と巻き寿司を作り、その出来栄えを競いました。報告者にとって驚きだったのは、アシガバット市内に6店舗も寿司を提供している店があること、そして参加者が(おそらく)独学で寿司作りを習得しているという点でした。

この寿司ブーム(?)のお陰か、日本の食べ物に興味を持つトルクメン人は多く、学校の文化イベント等になると必ず和食のリクエストがきます。ですが、実際は和食の材料も調味料も入手が非常に難しく、スーパーでたまに見かけるものは日本の10倍~20倍もの価格となる超高級品なので、一般に浸透するにはまだまだ時間がかかりそうです。

寿司コンテストの写真
寿司コンテスト

学校訪問での日本文化紹介

トルクメニスタンは小中高一貫教育で、現在国内12校で日本語が選択必修科目として教えられています。ここ数年、日本大使館の職員が主にアシガバット市内の学校を定期的に訪問し日本文化に関する動画紹介や折り紙ワークショップを行っていますが、そこに報告者も同行し、お手伝いをしながら現地教師のお話を伺い情報収集に努めています。一般にトルクメニスタンでは外国人との接触が制限されているため、街中で外国人を見かけることはほとんどありません。ですから、学校訪問のような機会を学校側も生徒達もとても楽しみにしているようです。

学校訪問の様子の写真
学校訪問の様子

トルクメニスタンはソ連解体後に独立国家となってからまだ30年弱という若い国家です。今後の国の発展のためにも特に教育、中でも国際的な人材育成という観点から外国語教育が重要視されています。日本語教育を通して、異文化理解はもちろん、母国の発展に貢献できる人材の育成支援ができるよう、これからも様々な形でできる限りの協力を行っていきたいと考えています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Dovletmammet Azadi Turkmen National Institute of World Languages/National Institute of Education of Turkmenistan
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
アザディ名称世界言語大学は国内で最初に日本語専攻が開設(2007年)された、唯一の日本語教師養成機関である。同大学での専門家の業務は、日本語専攻カリキュラムの作成と改善の支援、トルクメン人教師の研修(日本語・日本語教授力の向上)、授業担当など多岐に亘る。
トルクメニスタン国民教育大学(研究所)は、教育省管轄の調査・研究機関で、各分野の専門家たちが、教育に関する基礎調査の計画と実施、全国統一カリキュラムや教科書等の作成・改善、現職教師トレーニング等を行っている。専門家の執務室は同研究所内にあり、初中等向け日本語教科書制作や現地教師研修、国内の日本語教育支援の提言などを行っている。
所在地 Bld.47, 2060 street, Ashgabat, Turkmenistan/Magtymguly sayoli str. 136, Ashgabat, Turkmenistan
国際交流基金からの派遣者数 日本語上級専門家:1名
日本語指導助手:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
東洋言語・文学部日本語専攻
日本語講座の概要
What We Do事業内容を知る