世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) スペース拡張、3教室増設!!〜ウクライナ日本センター日本語講座

ウクライナ日本センター
阿部 康子

ウクライナ人にとっての日本

 ウクライナ人は日本のことをよく知っています。自動車や電化製品等の高級ブランドとしての日本だけではなく、生け花や茶道などの伝統文化、アニメやコスプレなどのポップカルチャーも広く知られています。加えて最近は空前の「寿司ブーム」と言えるほど、次から次へと寿司レストランができ、自宅でも気軽に巻き寿司を作れるよう、巻き簾、海苔、ガリ、わさびなどがスーパーで売られています。

現在のウクライナ日本センター日本語講座の活動状況

UAJC日本語図書館の入り口の写真
UAJC日本語図書館の入り口

 ウクライナ日本センター(以下、UAJC)は2006年に国際協力機構(JICA)によってキエフ工科大学(以下、KPI)の中に開設されました。2011年5月に5年間のJICAプロジェクトが終了し、その後は国際交流基金(以下、JF)が日本語教育事業と文化交流事業を引き継ぎました。現在UAJCでは教室増設工事が進行中で、来年度の新学期9月からは3教室新たな教室を使用することができるようになります。これまでは、教室や教師の数といった物理的条件の限界によって日本語を学びたいと日本語コースの扉を叩いてくれていた応募者たちを選抜試験で仕方なく落としてきましたが、これからは少しでも日本語学習に興味を持ってくれた人たちをできるだけ多く受け入れていきたいと思っています。

日本語コース受講生たちの写真
日本語コース受講生たち

 UAJCの日本語コースは基本的に9月に新学期が始まり、6月に修了式を行うという通年コースです。通年コースとなると、日本語学習のモチベーションの低下に加えて、受講料が二期分割払い制ということもあり、コース終了時にはコース開始時より20~30%の受講生減となっているのが現状です。日本語講座運営において、受講生の増加を目指すだけではなく、こういった途中退学者を減少させる努力もしなければなりません。より良い日本語授業を受講生に提供できるように、現在新しい教授法の導入やウクライナ人日本語講師の日本語ブラッシュアップ研修などを行っています。また、通常の授業に加えて1~2ヶ月に1度、レベルやクラスは関係なしに誰でも参加できる「日本語特別授業」も行っています。来年度は前期と後期の間に一度、受講生全員が参加できるような漢字コンテストなどのイベントも行いたいと考えています。

新しい試みとこれからの可能性

 UAJCの日本語講座には6レベルの設定があります。2006年の開講以来、初級クラスは『みんなの日本語』という教科書を使用しています。それとは別に、2012年の2月から当講座では初心者向けに『まるごと~日本のことばと文化』という、JFが独自に開発した教材を使って新しい教授法を試みています。これは、従来の文法項目中心の教え方ではなく、課題遂行能力を育成することに焦点を当てた教え方です。例えば、「友人とスケジュールを確認しながらパーティーをいつにするか決める」という課題を決めて、そのために必要な文型や語彙を学習し、実際にその課題を遂行できるようになるため、活動を中心にして練習します。

 この新しい教授法・学習法は、学習=座学という形が定着しているウクライナでは教師側にも学習者側にも最初は戸惑いがありました。しかし回を重ねるごとに、受講生たちは発話することの楽しさを実感し、日本語を使ってみることに充実感を覚えるようになってきました。今では毎回生き生きと授業に参加しています。授業毎に「今日は日本語で○○ができるようになった」と感じられることは学習継続のために重要です。UAJC日本語講座は一般講座であるため、大学等の教育機関で日本語を専攻として学ぶ学習者とは異なり、より実用的な日本語を学びたいと考えている受講生も多いです。そういった学習者に、この教授法は非常に適していると考えています。

 現在はパイロットとしてこのクラスを行っていますが、新年度9月からは正規のクラスとして、レベルも2レベルに展開して開講する予定です。

今後の展望 

 ウクライナにおける日系企業の数はここ数年20社程度と横ばいです。ウクライナ人が日本語を習得したとしてもそれを使う機会は、日本へ行く以外にはほとんどありません。日本語学習者の増加のためには、UAJCの文化交流事業部門と日本語コースがお互いに連携を取り、ウクライナ内で日本語を使える機会を増やしていくことが肝要です。そして日本語を学んだ人たちが、ウクライナと日本の交流の一端を担うような人物に育ってくれるように一日本語専門家としてこれからも活動していきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Ukraine-Japan Center "UAJC"
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ウクライナ日本センター(UAJC)は、キエフ工科大学(KPI)内にオフィスが設置されており、主に日本語教育事業、文化交流事業を行っている。
日本語教育専門家は、当センターの日本語講座の企画・運営・授業を行う他、現地教師指導や研修などを実施する。また、ウクライナ日本語教師会に対し、様々な側面支援も行う。
所在地 37, Peremohy Ave., Library, NTUU "KPI", 4th fl., Kyiv, 03056 Ukraine
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
言語学院 中国語・韓国語・日本語学科
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2006年
国際交流基金からの派遣開始年 2006年
コース種別
一般講座
現地教授スタッフ
常勤3名(うち邦人2名)、非常勤6名(うち邦人1名)
学生の履修状況
履修者の内訳   大学生50%強、社会人50%弱
学習の主な動機 日本伝統文化、芸能、ポップカルチャーなどへの興味・関心
卒業後の主な進路 なし
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定N2~N3を受験可能な程度
日本への留学人数 ほとんどなし

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