日本語教育通信 本ばこ 『日本語教師のためのテスト作成マニュアル』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『日本語教師のためのテスト作成マニュアル』

著者:伊東祐郎
出版社:株式会社アルク

日本語教師のためのテスト作成マニュアル

URLhttp://www.alc.co.jp/
発行年月:2008年10月
ISBN: 978-4-7574-1471-6
判型・頁数:A5判、168頁
定価:2,310円

「テストって、こうやって作るんだ!」

 テスト作りに苦労している、という日本語教師は案外多いのではないでしょうか。評価に関する参考書と言えば、テストの種類がどうとか、結果の統計的分析といったイメージがあるかもしれませんが、この本には数学の計算式は出てきません。測りたい学習者の能力や知識が何で、それをどうやってテスト問題にするのか、テストの作り方の具体的な手順を教えてくれるのがこの本です。

測ろうとする日本語能力から考えます

 この本では、各クラスで行う中間試験や修了試験、プレースメントテストなど、多くの教師にとって身近なテストに焦点が当てられています。そして、「文法」「語彙」「文字」「作文」「会話」「読解」「聴解」のそれぞれのテストについて、作成する上で必要となる事項を整理・確認し、テストの設計図である「細目表」を作る手順が説明されています。例えば7章の「読解テストを作る」は次のような構成と内容になっています。

①読解力とは:読解力を構成する能力(文法能力、社会言語学的能力、談話能力など)を確認する。
②読解の指導目標:指導目標となる読解のスキルを、初級前半から中級後半まで具体的に細かく記述したものを例示して、テストで測定しようとする力を確認する。
③読解テストの問題例:既存の教科書や問題集などから問題例を挙げ、問題の形式や測ろうとしている能力を考察する。
④読解テストの作成手順:「テスト目的を明確化する」「読解テキストを選定・作成する」「問題を作成する」「期待される応答を作成する」「評価基準・採点表を作成する」という手順を一つ一つ確認する。
⑤読解テストの細目表:細目表の具体例を示す。

P.124~125の画像 P.132~133の画像

良いテスト作りは簡単ではありません

 本のタイトルは「マニュアル」ですが、これに沿って作ればテストが簡単に作れるというわけではありません。指導項目を整理・分析し、テスト項目を選び、形式を考える作業は一人ひとりの教師がしなければならないことです。また、改良を重ねることも必要な作業です。この本の著者も述べているように、この本で紹介された方法は一例であって、他の考え方や方法もあるでしょう。しかし、この本の手順でテストを考えることで、これまでの自分自身のテスト作成方法をふり返ることができます。また、これまで授業で指導してきたものが十分だったのか考え直すきっかけともなるでしょう。より良いテスト作りを目指す人、テストをどこからどうやって作ればいいのかわからない人に、この本は貴重なヒントを与えてくれることと思います。

(中村雅子/日本語国際センター専任講師)

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