日本語教育通信 本ばこ 『留学生のための ここが大切 文章表現のルール』
本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。
『留学生のための ここが大切 文章表現のルール』
著者:石黒 圭、筒井千絵
出版社:スリーエーネットワーク
URL:http://www.3anet.co.jp/
発行年月:2009年5月
ISBN: 978-4-88319-502-2
判型・頁数:B5判、146頁、別冊解答例28頁
定価:1,680円
「先生、作文を書きました。正しい日本語に直してください。」学習者にそう言われて作文を見ると、まちがいがたくさんある。授業で何度も教えたし、文法のテストでは正解なのに・・・正しく直して返しても、次の作文でまた同じところをまちがう。そんな経験はありませんか。この教材は、教師がまちがいを直して正しい日本語を与えるかわりに、学習者が自分で書いた作文を自分で見直す力をつけることを最終的な目的としています。
見直す習慣と力を身につけるためのステップ
各課は「問題→解答→説明→練習→発展」の5つのステップから構成されています。
最初にルールを覚えるのではなく、不自然な表現を含んだ文章を読んで、それを探して直す「問題」から始めることで、学習者が自分で作文を見直す習慣をつけます。次に「解答」「説明」で不自然な理由を理解して、短い文でたくさん「練習」することで、見直すための知識と技術を身につけます。最後に「発展」でもう一度長い文章の見直しをやってみることで、見直す力がついたか確認できます。
「わかりやすい」文を書くのに必要なポイント
学習者がまちがえたときに、教師が「正しい文」を与えても、それが学習者の言いたいことを「正しく」伝えるとは限りません。そのかわりにこの本は、読む人のことを考えて、適切でわかりやすい文を書くことを大切にしています。著者は、これまでに大学などで教えてきた学習者の書いた作文を丁寧に調べて、よくあるまちがいや、不自然でわかりにくい書き方を分類してこの本を作りました。その内容は、表記や語彙、文法だけではなく、談話、読み手への配慮など、文を書くときに大切なポイントを全体的にカバーしています。
- 第1部
- 文法・文型(助詞の使い方、言葉の形の使い分け、自動詞・他動詞・受身、呼応、文末表現の調整)
- 第2部
- 文字・表記(ひらがなと漢字のバランス、漢字の選択と誤変換、カタカナの使い方、読点の打ち方、)
- 第3部
- 語彙・意味(書き言葉らしさ、辞書の危険性、専門用語の選び方)
- 第4部
- 文章・談話(文の長さと読みやすさ、指示詞による文の接続、接続詞と文章の構成、読み手への配慮)
- 第5部
- 実践編(レポートの基本的な書き方―意見と事実、レポートの基本的な書き方―複雑な内容の整理、立場のある文章の書き方、先生宛のEメールの書き方)
非常にわかりやすく整理してあるので、大学の留学生でなくても、中級、上級に共通する問題点について学習するのに役立ちます。
自立した書き手へ
このほかにも、インターネットを使ってことばの使い方を調べる方法を紹介するなど、学習者が独り立ちするのを手助けするしかけがいろいろあります。教師は一生宿題を見てあげることはできないのですから、コース中、コース終了後も、自立した書き手として成長していき、伝えたい内容が伝わる文を書けるようになってほしい、そんな気持ちがこめられた教材です。
(根津誠/日本語国際センター専任講師)
日本語国際センター図書館
「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。
日本語国際センター図書館
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/j_lbrary.html
2009年11月のテーマ展示「ボランティア日本語教師向けの教材と参考図書」
http://jli-opac.jpf.go.jp/display/200911.html
図書館蔵書検索
http://jli-opac.jpf.go.jp/mylimedio/search/search-input.do?lang=ja
日本語教育ナビゲーション
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/navigation.html