日本語教育通信 本ばこ 『日本語初級1.2 大地』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『日本語初級1.2 大地』

著者:山崎佳子、石井怜子、佐々木薫、高橋美和子、町田恵子
出版社:スリーエーネットワーク

日本語初級1 大地
日本語初級2 大地

 初級1も初級2も各100-120時間の学習時間を目安に作られた、初級の総合教科書です。学習語彙・文型の数は、海外でもよく使われている『みんなの日本語初級』(スリーエーネットワーク)とほぼ同じですが、初級1は22課、初級2は20課で構成され、コンパクトです。各課は約6ページで「モデル会話」「文型提示」「練習問題」「友達の会話」「総合練習」からなっています。

 教科書にはイラストが多く使われていて、学習者は会話や文型がどのような場面や状況で使われているのか想像できるようになっています。教科書に登場するのは、日本語学校に通いながら日本で生活する学生達です。

文型練習でもコミュニケーションを意識

 各課は文型を中心にした学習項目からなっていますが、文型がどのような場面で、どのように使われるのかを学習者が理解しながら練習できるようになっていることがこの教科書の特徴です。

 例えば、動詞テ形が初めて出てくる15課では、料理教室の場面・日本人の家を訪問する場面・先生にアドバイスを求める場面・パーティーの後片付けの場面などで、「てください」の練習をするようになっています。「ています」の練習では、パーティーの様子を描写したり、電話で友達にパーティーの様子を伝えたりするなど、現実にありそうなコミュニケーション場面の練習になっています。

 会話形式の練習では、答え方によって学習者が会話の展開を選んで話せるように図示されています(図版参照)。つまり初級の文型を利用した会話練習でも、現実の会話と同じように、答えにより会話の展開が変わることを体験できるようになっています。

 各課には、友達同士の会話、つまり普通体で話す練習があります。学習者同士のことを尋ねあうインタビューや、自分や友人のことについてのレポート、インフォメーションギャップを利用した活動などがあり、学習者にとって現実味のある内容を聞いたり話したりする練習になっています。

 教科書にはワークシートや、情報カードなどが多く載っていますので、学習者に合わせてアレンジすれば、練習を更に活発にする工夫が簡単にできます。例えば教科書に、ペアでのインタビューシートが載っていれば、学習者が考えた質問も書き込める欄や、複数の相手にもインタビューして記入できる欄を加えたワークシートを作れます。また「総合練習」にあたる『使いましょう』の練習を学習者に合わせた内容に変えたり、書き加えたりすることもできるでしょう。

付属教材について

 付属教材には『基礎問題集』と『文型説明と翻訳』があります。『基礎問題集』は文型の定着をはかるためのドリルで、『文型説明と翻訳』(英語版)(韓国語版)(中国語版)には各課の文型説明と新出語彙リスト(翻訳付)が載っています。2010年秋には、教師用のガイドブック(CD-ROM付)が出版される予定です。

初級2 P.24
初級2 P.24

(長坂水晶/日本語国際センター専任講師)

日本語国際センター図書館

「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。

日本語国際センター図書館
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/j_lbrary.html

7月のテーマ展示「海外の言語政策」
http://jli-opac.jpf.go.jp/display2/201007.htm

図書館蔵書検索
http://jli-opac.jpf.go.jp/mylimedio/search/search-input.do?lang=ja

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