日本語教育通信 本ばこ 『日本語中級表現 アカデミック・ジャパニーズ表現の基礎』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『日本語中級表現 アカデミック・ジャパニーズ表現の基礎』

著者:村上治美
出版社:東海大学出版会

日本語中級表現 アカデミック・ジャパニーズ表現の基礎

URLhttp://www.press.tokai.ac.jp
発行年月:2010年9月
ISBN:978-4-486-01884-1
判型・頁数:B5判、96ページ

 この教科書は、副題に「アカデミック・ジャパニーズ表現の基礎」とあるように、これから大学などに進学し、日本語を使って専門的な知識を身につけたいという学生を指導するのに適した教材です。言い換えれば、ゼミや研究会で発表したり、レポートや論文を書いたりできるようになるための準備として、口頭表現(プレゼンテーションするなど)と文章表現(要約文を書くなど)を連携させながら伸ばしていくことを目的にしています。一人で問題を解きながら練習を進めていく形式ではなく、発表やクラスメイトとの意見交換を通して、表現力を身につけていくことができます。口頭で発表する、論文を書く、論議するなどの日本語運用能力は、日本の大学への進学を希望する学生に限らず、論理的に考えたり、自分の考えや意見をわかりやすく説明したり、論理の通った構成のあるまとまった話をするために必要な能力です。初級や中級前半で身につけた文法や会話、作文、語彙などの能力を統合し、応用させていきながら、日本語で表現するための運用能力を身につけていきます。それらの能力を養うための第一歩として適しています。

この教科書は、口頭表現に2コマ(90分×2)、文章表現に1コマ(90分)を使って14週で終えるように構成されています。もちろん、各自の教育現場で使いやすいように担当者がデザインを工夫していくことも可能です。その際には、東海大学出版会のHP(http://www.press.tokai.ac.jp/)に掲載されている指導スケジュールや評価項目が参考になります。模範解答例もHPから入手することができます。

多様性のある活動で表現力を磨く

 本書は、3つのユニットから構成されています。各ユニットには基礎練習と応用練習があります。
Unit1は、要約文を書く、口頭で要約を発表できるようにするための練習課題です。Unit2は、グラフを解説する、インタビューをしてそれをプレゼンテーションする、事実を報告するレポートを書くなどの練習問題です。Unit3では、意見文を作り、意見が効果的に伝わるように構成を考えながら文章を書いたりスピーチをしたりする練習があります。Unitの最後にはディベートも取り入れています。

様々な活動を経験・体験することによって、具体的に養っていくことができる能力をいくつか挙げてみます。

  • 要点がまとめられる
  • グラフや図などを解説できる
  • 事実と意見を表現できる
  • 的確な描写や説明ができる
  • 相手との関係を保ちながら理由を示して説得力のある意見を述べたり、反論したりできる

 各ユニットの課題では、自分が知っている文法や文型、語彙といった個々の知識を総合的に使いながら日本語の表現力を高めていきます。実際に課題を体験しながら、自分がどのように日本語を使って何ができるのかを分析的に知り、自分に足りない点を今後の目標として捉えなおしながら将来の学習につなげていくことがきます。

P.24(稲葉和栄/日本語国際センター客員講師)の図P.24 P.25(稲葉和栄/日本語国際センター客員講師)の図P.25

(稲葉和栄/日本語国際センター客員講師)

日本語国際センター図書館

「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。

日本語国際センター図書館
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/j_lbrary.html

3月のテーマ展示「日本事情・日本文化」
http://jli-opac.jpf.go.jp/display2/201103.html

図書館蔵書検索
http://jli-opac.jpf.go.jp/mylimedio/search/search-input.do?lang=ja

日本語教育ナビゲーション
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/navigation.html

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