日本語教育通信 本ばこ 『今さら訊けない・・・ 第二言語習得再入門』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『今さら訊けない・・・ 第二言語習得再入門』

編者:佐々木嘉則
出版社:凡人社

第二言語習得論:みんなが使っているあのことばが、実はわからない 今さら訊けない・・・第二言語習得再入門

URLhttp://www.bonjinsha.com/
発行年月:2010年12月
ISBN:978-4-89358-765-7
判型・頁数:A5判、243ページ

 日本語教師の多くは第二言語習得論という学問があることを知っているし、少し勉強した(させられた)こともあると思います。そして、論文を読んだり、学会に出たり、教師仲間で話をしているときなど、「よく出てくる言葉なんだけれども、正確な意味がわからない」という思いを抱いたことがあるはずです。「聞くは一時の恥」とは言っても、あまりにも基本的なので、質問するのが恥ずかしく、そのままにしてしまったという経験はありませんか。

 この本は、そんな人たちのために、著者が学生だった頃の自分自身の経験を生かして書かれた参考書です。

今さら訊けない55問

 本書は「問」と「答」からなっていて、55の「問」が7つの章に分類されています。「問」の多くは、著者が「学生の立場で習得論を勉強していたときに長らく抱いていた疑問」がもとになっています。

  1. 1.習得研究方法の進化変遷に関して
  2. 2.習得順序・発達順序に関して
  3. 3.習得の環境要因に関して
  4. 4.言語能力の起源に関して
  5. 5.習得論の対象領域に関して
  6. 6.習得論と心理言語学と言語技能の関係に関して
  7. 7.研究テーマ選択・実践への応用に関して

 以上のテーマのもとに、「対照分析、誤用分析、中間言語分析の関係」、「習得順序と発達順序の関係」、「インプットの役割」、「Focus on Formの教育的背景」、「エラーとミステイクの区別」などについて、簡潔に書かれています。

 各問には、参考文献リストも載っていて、発展学習の手引きにもなっています。また、「マニアック度」という表示があり、その「問」がどのくらい高い専門性をもっているかを示しています。

 巻末付録には、第二言語習得論について、どれぐらい知っているかをたしかめるための「セルフチェック・テスト」や世界(特に北米)のどこで、どんな分野の習得論研究が行われているかがわかる学問地図のほかに、文献・参考サイト・学会および研究会のリストもあります。

 ただし、わかりやすいとはいっても「再」入門書なので、「『第二言語習得論』って何?」という人や、はじめて習得論を勉強しようと思う人にはむずかしいかもしれません。「少し勉強したけれどよくわからなかった」、「もう一度初めから勉強してみたい」と思う人には、「紛らわしい」用語の理解が深められ、いい復習の機会になるでしょう。また、第二言語習得論からどのような研究ができるか、研究の手引きとして役立つかもしれません。

P.60(生田守/日本語国際センター専任講師)の図P.60 P.61(生田守/日本語国際センター専任講師)の図P.61

(生田守/日本語国際センター専任講師)

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