日本語教育通信 本ばこ 『日本人の心がわかる日本語』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『日本人の心がわかる日本語』

著者:森田六朗
出版社:アスク出版

日本人の心がわかる日本語

URLhttp://www.ask-digital.co.jp/
書籍情報:http://www.ask-shop.net/shopdetail/042004000017/
発行年月:2011年05月
ISBN:978-4-87217-786-2
判型・頁数:A5判 192ページ

 上にあげた2つのやりとりで、なぜ日本人は「遠慮」という言葉を使ったのでしょうか。「遠慮」の意味を辞書で引くと「①自分のしたいことや言いたいことを控えめにすること ②断ることを遠まわしにいう言い方 ③将来のことまで見通した深い考え(『新訂 日本語を学ぶ人の辞典』97ページ)」とありますが、この言葉はどんなときにどんな気持ちを込めて使われるのでしょうか。
 言葉の裏側にはさまざまな文化的な要因が隠れており、外国語を学習することは、その言語を話す人々の考え方を理解することにもつながります。本書は、日本人の考え方が感じ取れる31のキーワードを取り上げ、その言葉が持つイメージや文化的背景、そこから読み取れる日本人の価値観や感性について詳しく解説した一冊です。
 筆者は中国の大学で教えている日本語教師で、中級レベル以上の日本語学習者、日本語教師を読者に想定して書いています。難しい漢字にはルビがつき、大切な語には英語・中国語・韓国語訳がついた単語ノートもあるため、日本事情や読解の授業の教材として使うほか、学習者が一人で楽しみながら読むこともできそうです。
 目次を見てみると、各章には、「内と外を分ける」「他人の目を意識する」などのキーセンテンスがタイトルにつけられています。そして、それぞれの章には、「内と外/世間/しつけ/けじめ/素直/甘える」「人目/恥/照れる」などのキーワードが並んでいます。キーワードは、1000~2000字ぐらいの長さで書かれた本文で解説がされていますが、より詳しく知りたい読者には、本文に続く「もっと深く!」が参考になります。

言葉を通して理解する日本人の考え方

 最初に示した2つのやりとりに戻り、「第3章 周囲に配慮する」の「遠慮」についてのページを見てみましょう。筆者は、「遠慮」という言葉は、もともと「遠い将来まで見通す」という意味の中国語だったが、現代語では「配慮」に近い意味、つまり「周囲の人や相手がどう思うかについて、よく考えること、そしてその場にふさわしくない行動をしないこと」という意味の方が強くなったと述べています。そしてその理由として、日本人は「目の前の相手との人間関係について配慮する」気持ちが強いからだろうと述べています(64ページを要約)。
 ここで紹介した「遠慮」以外にも、本書には「空気を読む」「おかげさま」「がんばる」「もったいない」など、日本人が日ごろ何気なく使っている言葉、日本人の考え方を表す言葉が数多く取り上げられています。本書を読み終わったときには、日本人がどんな気持ちを込めてその言葉を使っているのか、理解を深めることができるでしょう。

目次の第1章~第4章(押尾和美/日本語国際センター専任講師)の図
目次の第1章~第4章

(押尾和美/日本語国際センター専任講師)

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