日本語教育通信 本ばこ 『にほんごこれだけ!1,2』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『にほんごこれだけ!1,2』

監修:庵功雄
出版社:ココ出版

にほんごこれだけ!1
にほんごこれだけ!2

 この本は、おしゃべり型教育を実現するために開発された教材です。日本語を教えるボランティア活動をしたいと思っている人といっしょに、外国人が日本語を学べる場を想定しています。筆者は、「この本を使えば、ボランティア初心者や日本語をまったく教えたことがない方でも、おしゃべりを通して外国人の会話能力をゆるやかに積み上げていくことが可能だろう」と言っています。日本語を勉強したい外国人が、日本人と交流しながらおしゃべりしながら日本語を学べるように考えられたのがこの『にほんごこれだけ!』です。

おしゃべりだからトピックシラバス

 実際のおしゃべりでは、何か話題があってそれについてああだ、こうだと話します。そのおしゃべりを通して学べるようにと考えられているこの本では、おしゃべりの話題によって課が分かれています。各課には、日常的なよくある、話しやすい話題があります。取り上げられた話題でおしゃべりすることで、お互いが理解し合うための情報や、生活する上で有効な(例えば、住んでいる町の)情報などを知ることがきっとできるでしょう。

おしゃべりの中に潜む「隠れ文法」

 各課にある活動では、自然に文型や表現が使われるようになっています。そして、その文型や表現は、別の課の別のトピックでも繰り返し表れ、使われます。例えば、並列の助詞「と」は、『にほんごこれだけ!1』の12課わたしのたいせつなひと、2課わたしのプロフィール、13課テレビばんぐみ、15課かいもの、17課わたしのへやに、文型「~より~ほう」は、4課まちのじょうほういろいろ、17課わたしのへや、というように繰り返し出てきます。『にほんごこれだけ!1』では、基本文型が12、助詞が21、『にほんごこれだけ!2』では、基本文型が31取り上げられています。

「おしゃべり型教育」実践のために

 「おしゃべり」はこの本のキーワードです。各課にある「おしゃべりのどうぐ箱」では、利用できる小道具が、「おしゃべりのコツ!」では、おしゃべりが広がるようにアドバイスが書かれています。例えば、「りょこう」の課では、地図、絵はがき、旅行のパンフレットなどを使って、「旅行に行った時の写真を見せあいながら話す。話を広げるようにし、買ったおみやげなどについても聞いてみる」ことを勧めています。また、巻末には、おしゃべりを楽しく続けるためのコツとして「会話を始める前の心構え」「聞き上手になること」「やさしい日本語で話すこと」「使えるものはなんでも使う」という4つのポイントで注意事項がまとめられています。また、学習者の異なる母語に対応するため、指さし会話ができるようにイラストを多用しているのも特徴です。

 http://www.cocopb.com/koredake/に、この本を使ったおしゃべり型教育の様子が動画で紹介されているので、始めての方には参考になるでしょう。

『にほんごこれだけ!2』 P.52(坪山由美子/日本語国際センター専任講師)の図『にほんごこれだけ!2』 P.52 『にほんごこれだけ!2』 P.53(坪山由美子/日本語国際センター専任講師)の図『にほんごこれだけ!2』 P.53

『にほんごこれだけ!2』 P.54(坪山由美子/日本語国際センター専任講師)の図『にほんごこれだけ!2』 P.54 『にほんごこれだけ!2』 P.55(坪山由美子/日本語国際センター専任講師)の図『にほんごこれだけ!2』 P.55

(坪山由美子/日本語国際センター専任講師)

日本語国際センター図書館

「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。

日本語国際センター図書館
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/j_lbrary.html

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