日本語教育通信 本ばこ 『「伝わる文章」が書ける 作文の技術 -名文記者が教える65のコツ』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『「伝わる文章」が書ける 作文の技術 -名文記者が教える65のコツ』

編者:外岡 秀俊
出版社:朝日新聞出版

日本語力をつける文章読本 知的探求の新書30冊

URL: http://publications.asahi.com/
書籍情報:  http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=14330
発行日: 2012年10月
ISBN: 978-4023311251
判型・頁数:A5判 256ページ

 まとまった文章を書くことは、たとえ母語話者でも簡単ではありません。今こうして書いていても、構想から執筆までかなり時間がかかります。やっと書き上げても編集担当者から「これでは読者に伝わらない」、「ここに点を打ったほうがいい」などと言われ、何回も書き直しをさせられます。日本人でもこうなのですから、日本語を母語としない方にとって、日本語での作文は大変骨の折れる作業だと思います。

新聞記者としての経験

 著者は元新聞記者で、たくさんの記事や文章を書き、デスク(社内にいて記者の書いた記事を読みやすい文章にする人)に文章を直され続けました。そうした経験を通じて掴んだ「伝わる文章」の「コツ」を一般の読者と共有しよう、というのがこの本のねらいです。

投稿記事を直しながら考える「コツ」

 一般の人から寄せられた文章を著者がこう直したらどうかと提案(「添削」)する中で、「コツ」が紹介されていきます。
 例えば、

投稿文
 しかし、ご遺体は、ご遺族の元へは、返されなかった。
添削文
 しかし、ご遺体は、遺族の元へは、返されなかった。

 そして、続けてこう書いてあります。
 「敬語や謙譲語をどう使ったらよいのか、迷う方は多いでしょう。私は「敬語は一文で一回使えばいい」と考えています。また、直接「敬語」を使わなくても、「敬意」さえあれば、その気持ちは文面にも自ずとにじむと思います。」(本文137ページ)
 言うなれば、一般の日本人と著者との「文章道場」のようなものです。

「いい文章」とは

 では「いい文章」とは一体何なのでしょうか。著者は、以下の4つを兼ね備えた文章だとしています。

  1. 相手に正確に意味が伝わる。
  2. 相手に誤解を与えない。
  3. 手に負担をかけない。
  4. 心地よい読後感が残る。

(以上、「はじめに」より)

 この4つのポイントから繰り返し文章が練られていきますので、読み進むにつれ、知らず知らずのうちにこのポイントが身に付いていくことでしょう。

面白いコラムや文章の悩みの索引も

 本文以外にある7つのコラムにも興味深いものがあります。特に著者が「師」と仰いだ先輩記者について書かれたコラムです。当時まだ若かった著者にどのように文章の書き方を教えてくれたか、は教育や教師という観点から見るとき、大変示唆に富んでいると思います
 文章を書く時の悩みから読む場所を検索できる巻末の「逆引き よくある「文章の悩み」を解決」も役に立ちます。例えば、今現在筆者が悩んでいる「オチのつけ方が分からない」という悩みを引いてみると、「コツ」は「気張らず、すっと力を抜いて言い終える」と書いてあります。それではこの辺ですっと力を抜いて結びます。今月の「本ばこ」はこれで終わりです。

P.44の画像P.44 目次の画像目次

(白井 桂/日本語国際センター専任講師)

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