日本語教育通信 本ばこ 『中上級学習者向け日本語教材 日本文化を読む』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『中上級学習者向け日本語教材 日本文化を読む』

編著者:(公財)京都日本語教育センター
出版社:アルク

中上級学習者向け日本語教材 日本文化を読む

URLhttp://www.alc.co.jp/
書籍情報:http://shop.alc.co.jp/spg/v/-/-/-/7012038
発行日:2012年10月
ISBN:978-4757422315
判型・頁数:B5判 112ページ +CD2枚

「読解」から「読書」へ

 この教材は、以前このコーナーで取り上げた『上級学習者向け日本語教材 日本文化を読む』iの姉妹編で、中上級学習者のために編纂されました。
 「中上級」と謳っているだけに、1課あたりの文章の長さが前作のより短く(1000~2000字程度)、内容もより身近で、文章構造もやさしくなっています。
 本書では、前作同様、語学的理解よりも、作品内容の「読み」を通じて、学習者に作品から導き出されることなどを考えさせることをねらっているようです。
 よしもと ばなな、村上春樹といった人気作家、また、大江健三郎、川端康成といったノーベル賞作家の小説やエッセイをはじめ、ノンフィクション作家の沢木耕太郎、脚本家の倉本總や向田邦子、そして民族学者の梅棹忠夫や医学者の川島隆太など、時代を超えて、多彩な分野からの文章が集められています。
 収録されている文章は、だいたい、文学的文章というジャンルでくくることができると思います。そこからは、質の高い素材を学習者に提供し、学習者は文章を味わいながら、日本語を「読む」力を磨いていくというねらいが見えてきます。
 日本人の行動・価値観を垣間見せるエピソードを取り上げていること、そして、余韻を味わい、行間を読む訓練もふくまれていることから考えると、「日本文化を読む」というのは適切なタイトルだと思われます。

本書の構成

 本書は、20課で構成されていて、そのうち2課分は古典(竹取物語・枕草子)の文章が収録されています。
 課の順番は難易度の順ではないので、どこからでも始めることができます。
 前作に倣い、本文はたて書きで印刷され、本文の下の欄には、語彙・表現、内容に関する問い、まとめの問題が載っています(別冊解答付き)。本文の最後には、出典と著者紹介も掲載され、本文の読み上げCDと語彙リスト(英語・中国語・韓国語・ベトナム語訳付き)も付いています。
 本書は、基本的な日本語構造を学習し、読解力の基礎を身につけた学習者が、上質の文章に接してゆく際の手引きとして、編纂されたということです。前作の上級編への橋渡しとしても活用できると思われます。

i バックナンバー第63号(http://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/teach/tsushin/bookshelf/pdf/nkt63_p11_13.pdf【PDF:2094KB】) 3ページ目に収められています。

目次の画像2 目次の画像1目次

(生田 守/日本語国際センター専任講師)

日本語国際センター図書館

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