日本語教育通信 本ばこ 『論文作成のための文章力向上プログラム』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『論文作成のための文章力向上プログラム』

編著者:村岡貴子・因京子・仁科喜久子
出版社:大阪大学出版会

論文作成のための文章力向上プログラムの画像

URLhttp://www.osaka-up.or.jp/index.html
書籍情報:http://www.osaka-up.or.jp/books/ISBN978-4-87259-416-4.html
発行日:2013年4月
ISBN:978-4-87259-416-4 C3080
判型・頁数:B5判・並製・176頁(別冊解答40頁)

「本物の力」をじっくり養う

 本書は論文でよく使う表現の練習や、参考になる例文が集められた「外国人学習者のための参考書」ではありません。この本に示されているのは、研究活動に関わるさまざまな文章と、それを使った豊富なタスクです。ステップを追って示されたタスクを通して、論文・要旨・メール・申請書など研究活動に関わる文章について、時間をかけて観察したり話し合ったりします。つまり「論文執筆力を身につけるためには、正解をできるだけ早く覚えるのではなく、自分自身で考えることが近道だ」というのが本書の立場です。論文執筆の力をつけたい人が活用することはもちろん、論文指導を担当する教師が、本書のタスクの挙げ方を授業活動へのヒントにすることもできます。

研究活動に関わる多様なテーマとタスク

 本書では、全10章のうちの最初の3章で次のことを扱っています。自分自身はどのように書くことを学んできたかを振り返ったり、文章を作成するということがどのような目的を持ち、何が重要となるのかを確認したりすることです。
 続く4つの章では、文章の分析や比較をした上で、問題点を指摘し、今度は自分で修正案を作成し、それを別の修正案と比較する、更に他の人と議論する、といった活動を行います。解答例は、解説とともに詳しく挙がっています。
 残る3つの章では、研究要旨・活動報告・研究目的の依頼文・就職活動などでの自己紹介文が扱われています。また、投稿前の論文チェックの重要性や、査読とは何かといった、論文執筆に関わる大事な情報はコラムとして挙げられています。
 文章力を鍛えるには、長い道のりを自分の足で走っていかなければなりません。伴走者を必要とする人にとって、本書は頼れる味方になるはずです。

目次
第1章 「書く主体」である自分とは
第2章 学習・研究のための「書く」活動について知る
第3章 学習を自己管理し、学習方法を探索する
第4章 文章を読んで問題点を探す
第5章 文章の目的から構成を考える
第6章 論理の一貫性を考える
第7章 的確な表現を追求する
第8章 研究の要旨を書く
第9章 活動報告を書く
第10章 未知の人やコミュニティに「自分」を説明する
  Column
① 教科書と論文ではスタイルが違う!
② 文を寝かせる? 熟成法
③ 作文支援ツール「なつめ」を利用して的確な語を選択する
④ 「敬意」の表現を回避する方法
⑤ 投稿前に論文をチェックする
⑥ 論文の「査読」って何?

論文作成のための文章力向上プログラムP.46-47の画像1 論文作成のための文章力向上プログラムP.46-47の画像2P.46-47

(長坂 水晶/日本語国際センター専任講師)

日本語国際センター図書館

「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。

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