日本語教育通信 本ばこ 『異文化理解入門』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『異文化理解入門』

編者:原沢伊都夫
出版社:研究社(http://www.kenkyusha.co.jp/

異文化理解入門

書籍情報:http://webshop.kenkyusha.co.jp/book/978-4-327-37734-2.html
発行日:2013年6月
ISBN:978-4-327-37734-2 C1036
判型・頁数:A5判・236頁

 グローバル化に伴い、外国で仕事をする日本人や、日本で仕事をする外国人も珍しくなくなってきました。異なる文化を持つ者同士が共に暮らす「多文化社会」では、どのようなことに気をつければ「共生」できるでしょうか。今回は、そのヒントをくれる一冊をご紹介します。

異文化コミュニケーションの理論を自身の体験につなげる

 本書には、私達が文化を異にする人たちとコミュニケーションする際、知っておくとよい知識が数多く紹介されています。各章のタイトルは次のとおりです。

第1章 異文化を理解する
第2章 文化とは(その1)
第3章 文化とは(その2)
第4章 異文化適応
第5章 シミュレーション
第6章 違いに気づく
第7章 異文化の認識
第8章 差別を考える
第9章 世界の価値観
第10章 異文化トレーニング
第11章 異文化受容
第12章 自分を知る
第13章 非言語コミュニケーション
第14章 アサーティブ・コミュニケーション
第15章 多文化共生社会の実現に向けて

 各章のはじめには、章の内容に関する短い紹介文と4コマ漫画が用意されています。タイトルだけを見ると難しそうな本に見えますが、思わずクスッと笑える漫画の導入があることで本編の内容がイメージでき、肩の力を抜いて読み進めることができます。
 本編は、その章のテーマに関する基礎知識の紹介と、その理解を確認する「確認チェック」および「解説」を中心に構成されていますが、必要に応じて、解答の手がかりとなる「ヒント」や、異文化理解の具体的な事例を示した「考えるポイント」の欄が設けられています。また、その章で扱った内容を、個人やグループで体験する「ワーク」や、その章の内容を自身の経験にひきつけて振り返る「考えよう」のページもあり、知識を得るだけで終わりにならないような工夫がされています。第2章を例に、内容を見てみましょう。ここでは、最初の「確認チェック」で、「日本文化」と言われて思い浮かぶものを読者に挙げさせます。その結果を受けて、「解説」で、文化は、「寿司」「富士山」などの「見える文化」と、「価値観」「社会マナー」などの「見えない文化」に二分されることを紹介します。これらを理解した上で、次の「確認チェック」で、「ハグ」「割り勘」などの習慣が、読者にとって常識とされる行動かどうか判断させ、常識か非常識かの判断は育ってきた文化によって変わること、これらの行為が持つ意味(「見えない文化」)に対する不理解が異文化摩擦を生む原因になることを「解説」で指摘します。最後に、「考えよう」で、「見えない文化」に関連した自身の経験を振り返り、この章のまとめとします。振り返りでは、「考えるポイント」や異文化体験が豊富な著者の例が紹介された「異文化よもやま話」が参考になります。

自分以外の人はすべて異文化

 本書が指す「異文化コミュニケーション」は、国、民族、言語の異なる集団に限ったものではなく、「親や兄弟」「配偶者」「他府県の人」「異なる職業の人」とのコミュニケーションも含みます。同国人同士であっても、理解しあえないことはよくありますが、「異なる文化を持っている人」と捉え直せば、理解を深める方策が見つかりそうです。
 自身のコミュニケーションスタイルを知りたい人には第12章や第14章が参考になります。また、これから海外で暮らす予定がある人には第4章や第11章、外国人と接触する機会がよくある人には第9章や第10章が参考になります。

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P.30-31

(押尾 和美/日本語国際センター専任講師)

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