日本語教育通信 本ばこ 『きょうから話せる! にほんごだいじょうぶ Book1』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

文型積み上げ型とタスク中心のいいとこ取り!
「コミュニケーション積み上げ型」の初級日本語テキスト

『きょうから話せる! にほんごだいじょうぶ Book1

著者:
サンアカデミー日本語センター
出版社:
ジャパンタイムズ(http://bookclub.japantimes.co.jp/

『きょうから話せる! にほんごだいじょうぶ Book1』表紙

書籍情報: http://bookclub.japantimes.co.jp/id/1589
発行日: 2015年1月
ISBN: 978-4-7890-1589-9
判型・頁数: B5判 224頁+別冊70頁

 「日本語を勉強しているのに実際の生活場面で使えない!」という悩みを持つ初級学習者は多いのではないでしょうか。今回は、現実場面ですぐに日本語を使って生活をする必要がある学習者のために開発された、新しいタイプの初級日本語教材をご紹介したいと思います。

「コミュニケーション積み上げ型」学習

 本書ではいわゆる「文型積み上げ型」のテキストにある機械的な単純ドリルはなく、全部で12あるすべてのユニットで始めから日本語を使って実生活で起こりうる課題(タスク)を行います。とは言っても、最初から難しいタスクに挑戦するのではありません。各ユニットは3~7つのタスクから成り、一つの共通した話題や状況設定の中で、認知的に単純なタスクから複雑なタスクへと、学習者の自然な意識の流れに沿った順番で取り組めるようになっています。そのため、ユニットを通して一つのエピソードを体験するように学習し、各タスクをこなす毎に「コミュニケーションができた」と達成感を得ながら、無理なくコミュニケーション力を積み上げていくことができます。
 また、本書の会話文に「●×△」のような表示が出てきますが、これは会話の相手が日本人で、学習者がその日本人から普通の速度で話しかけられているという状況を表しています。学習者は「●×△」で表された部分がたとえ理解できなくても、何とかキーワードを聞き取ってコミュニケーションを成立させる練習を重ねます。このように、実際場面を乗り切る力をつけるために、自然な日本語に慣れ、理解できる単語から類推して反応したり、限られた表現でもコミュニケーションを諦めない力を身につけられるような工夫が施されているのも本書の特徴です。

「実際の生活場面」にこだわったタスク設定

  • 『きょうから話せる! にほんごだいじょうぶ Book1』96ページP96
  • 『きょうから話せる! にほんごだいじょうぶ Book1』99ページP99

 これはUnit9のタスク1と2です。最初のタスクで、相手の持ち物を褒めたり、褒められたりするという日本ではよくある状況が設定されています。まず形容詞の活用を覚え、形容詞を丸覚えし、絵カードを見て「あの山は高いです」というような機械的な練習を繰り返す代わりに、最初からこのような実際の生活場面での簡単なやり取りを練習できれば、学習者は日常生活でどんどん日本語で話したくなるのではないでしょうか。

文法と語彙の扱い

 「“タスク中心”と言うけど、文法や語彙はどうやって身につけるの?」と疑問をお持ちの方もいるでしょう。本書では各ユニットの前後に文法説明と語彙のページ、また学んだ文型を理解する「Self Check」というコーナーもあります。教室で本書を使用する場合は、学習者は事前にそのユニットの文法事項を自己学習して授業に臨むことで、教室ではあくまでも「タスク中心」に進めることができるでしょう。
 また、本冊を補完する「別冊」には21の場面別生活情報と会話表現集の「Strategies(ストラテジー)」と24のカテゴリー別単語集の「Glossary(グロサリー)」が収録されています。「Strategies(ストラテジー)」の「バスに乗る」を見てみると、行き先やバス停を尋ねる表現や、降車ボタン、後払い、整理券の情報など、日本でバスに乗るのに必要な情報が説明されています。他にも「あいさつ」「用紙に記入する」「郵便局で」「電車に乗る」「買い物」「居酒屋に行く」など、日本で生活する学習者にとって、日常的に必要な情報がまとめられているので、この別冊を常に携帯するのもよいでしょう。

 本書を使って、授業で「コミュニケーション積み上げ型」を実践してみてはいかがでしょうか?

別冊『SupplementaryText Book1』12ページ 別冊『SupplementaryText Book1』13ページ別冊『Strategies』7 Riding a Bus バスに乗る

(関崎 友愛 /日本語国際センター専任講師)

日本語国際センター図書館

「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。

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