日本語教育通信 本ばこ 『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

日本を読み解く参考に
『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』

著者:
鴻上尚史
出版社:
講談社(http://www.kodansha.co.jp/

『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』表紙の画像

発行日: 2015年4月
ISBN: 978-4-06288-309-2
判型・頁数: 新書版 236ページ

 日本の放送局の一つNHKのBS放送で2006年4月から「cool japan発掘!かっこいいニッポン」という番組が放送されています。番組では毎回数人の外国人が今の日本について議論しています。その司会をしているのが、この本の筆者で、作家・演出家である鴻上尚史氏です。鴻上氏が番組に参加した外国人の声を紹介しつつ、番組や自身の海外滞在経験から得たこと、気付いたことなどをコラム風にまとめたのがこの一冊です。

『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』235ページの画像
P235

何が「クール」?

 外国人が「日本の何をクール(かっこいい・優れている・素敵だ)だと感じているのか」という切り口と日本の「モノ」、日本人の「行動」「考え方」という切り口を交差させて「クール・ジャパン」が語られています。

目次
第1章
外国人が見つけた日本のクール・ベスト20
第2章
日本人とは?
第3章
日本は世間でできている
第4章
日本の「おもてなし」はやはりクール!
第5章
日本食はすごい
第6章
世界に誇れるメイド・イン・ジャパン
第7章
ポップカルチャーはクールか?
第8章
男と女、そして親と子
第9章
東洋と西洋

 例えば、第2章「日本人とは?」では「鍋料理の衝撃」と題して居酒屋やレストランでの食を取り上げ、料理のシェア、直箸、清潔感、抗菌グッズへと話が展開します。

こんな見方、こんな考え方

 「日本人は時間を守るか?いや、終業時間になっても帰らず、だらだら遅くまで会社にいる。」「警察のキャラクターにまでかわいさを求めるのは不思議!」「本来休まなければならない夏に日本では無理して働かなければならないから納涼グッズが生まれたと思う。」など、外国人の生の声は、的を射ているようないないような、思わず反論したくなることもあります。
 また、「クール・ジャパン」の代名詞のように使われているアニメ・マンガに触れたところでは、「コーチングのいらない唯一の日本文化だから、師匠に学ばなくても一人で勝手に始められるから」マンガにはまったというあるフランス人の声を紹介しています。これに「そうそう」と思うか、「そうなんだ?」と思うかは人それぞれですが、読者が外国人であっても日本人であっても、自分は日本のことをどう捉えているだろうと思考を刺激されるのではないでしょうか。

日本がわかるだけじゃない!

 日本を題材にしてはいますが、本書に登場する外国人それぞれが自分の国をどう見ているのか、何を大事にしているのかを垣間見ることができます。さらに、筆者が「社会」と「世間」、「関係」と「分類」というキーワードで日本をひも解いていますが、同じような視点で日本じゃないどこかの国のことを考えてみてもおもしろいかもしれません。

教師も学習者も

 最初のページから順番に読み進めなくても、目次を見て気になるトピックだけの拾い読みができます。そして、1つのトピックについての文章は、1000-1500字程度で、1文も短いです。中級以上のクラスで、ディスカッションなどのきっかけ作りに利用することができるでしょう。教師自身の、また、学習者の「クール・ジャパン」を探してみませんか。

(坪山由美子/日本語国際センター専任講師)

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