日本語教育通信 本ばこ 『NHK 日本語発音アクセント新辞典』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

18年ぶりの全面改定!
『NHK 日本語発音アクセント新辞典』

『NHK 日本語発音アクセント新辞典』表紙の画像

シリーズ編者:NHK 放送文化研究所
出版社:NHK出版(https://www.nhk-book.co.jp/
発行日:2016年5月

ISBN: 978-4-14-011345-5
判型・頁数: B6版・1764ページ

 日本語のアクセントは、単語ごとに決まっています。アクセントがどこにあるかは決まりがありませんので、外国人学習者は、単語ごとに覚えるか、調べなければなりません。この単語のアクセントを調べるときに使われるのが「アクセント辞典」です。
 アクセント辞典の中で、有名でよく使われているのが、NHKの発行するアクセント辞典です。今回、このNHKのアクセント辞典が18年ぶりに改訂され、『NHK日本語発音アクセント新辞典』という新しいタイトルで出版されました。

変わる記号、変わるアクセント観

 今回の改訂でもっとも大きく変わったのは、アクセントの記号でしょう。これまでは、単語の中で音が高く発音される部分に上線を引くという方式でしたが、今回からは、音の下がり目を「\」という記号で表す(下がり目がない単語には最後に「 ̄」をつける)という方式になりました。

アクセント記号例の画像

 この方式の変化は、単にアクセントの表し方の違いというだけではなく、日本語のアクセントをどう捉えるか、というアクセント観の変化が生かされています。
 これまで、日本語のアクセントについては、「高低の二段階である」「一拍目は低く、二拍目からは高い」のような「高低アクセント」として説明されるのが一般的でした。しかし、これらの特徴は、実は「単語を単独で発音したときの高低のパターン」であって、日本語のアクセントそのものの特徴ではなかったのです。例えば

  • さかな_高低アクセントの画像
  • たまご_高低アクセントの画像

という単語では、単語だけならこれまでの上線方式でも正しく発音することができます(赤がアクセント記号、青い線が実際の高さ)。しかし、

  • あかいさかな_高低アクセントの画像
  • あかいたまご_高低アクセントの画像
  • しろいさかな_高低アクセントの画像
  • しろいたまご_高低アクセントの画像

のようになったら、上線で示される「高い部分」と、実際の高さが違ってきてしまいますし、「一拍目は低く、二拍目は高い」という説明もあてはまらなくなります。
 日本語のアクセントを「高低」で考えると、単語より大きい単位で見たとき、このような矛盾が起きてしまうのです。そのため、これまでは「句や文になったらアクセントが変わる/消える」のような苦しい説明をするしかありませんでした。
 これに対し、今回の改訂で取り入れられた方式では、アクセントをあくまで「下がり目」があるかないか、あるとしたらどこにあるか、と考えます。そうすることで、単語を超えた長い単位で見た場合も、「アクセントがあれば下がる」という簡単な原則で説明できることになります(なお、一拍目から二拍目への低→高への上昇は、日本語の文の始めにいつも現れる特徴であると考えます)。

  • さかな_新アクセントの画像
  • たまご_新アクセントの画像
  • あかいさかな_新アクセントの画像
  • あかいたまご_新アクセントの画像
  • しろいさかな_新アクセントの画像
  • しろいたまご_新アクセントの画像

 この改訂で、NHKのアクセント新辞典がこの「下がり目」方式を採用したことで、日本語のアクセント観自体が、これまでの「高低」から、「下がり目」へと変わっていくと考えられます。このことは、日本語音声教育にとって、とても大きな意味を持っていると言えるでしょう。

古いアクセントから新しいアクセントへ

 日本語には、時代によってアクセントが変化することばもあります。たとえば「熊」ということばは、昔は「クマ\」という発音でしたが、現在では「ク\マ」という発音もよく使われています。今回の改訂では、こうした単語のアクセントの大幅な見直しを行いました。
 たとえば「熊」については、これまで「クマ\」だけしか認めていなかったものを、今回から「ク\マ」というアクセントも認めています。
 そのほかにも、たとえば「父」では、これまでの「チチ\」ではなく、新しい「チ\チ」が「最も推奨するアクセント」になりました。「キャラクター」「グラス」などでは、平板型のアクセントが新しく追加されました。今回の改訂では、全部で約3300語のアクセントが変更されています。
 これらはいずれも、現在の日常場面ではよく聞くアクセントでしたが、辞書には載っていないものでした。今回の改訂で、こうしたアクセントが取り入れられ、より実際に使われている発音に近いものになったと言えるでしょう。
 これまで作られた日本語教材などでは、古いアクセントしか載っていないものもあります。日本語を教えている先生も、日本語を学ぶ学習者も、この新しい「アクセント新辞典」を使って、自分が使っている教材のアクセントが古くないか、いちど調べてみるといいかもしれません。

(磯村 一弘/日本語国際センター専任講師)

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