日本語教育通信 文法を楽しく よう(2)

文法を楽しく
このコーナーでは、学習上の問題となりやすい文法項目を取り上げ、日本語を母語としない人の視点に立って、実際の使い方をわかりやすく解説します。

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よう(2)

 前回の「よう(1)」では「推量」と「たとえ」の用法を勉強しました。今回は「指示・命令」「祈願・願望」を表す「よう」、「ようにする」「ようになる」、そして、「目的(結果)」「例示」「前置き」を表す「よう」について考えます。今回の学習に当たっては、「よう(1)」の「よう」の意味用法の表を参考にしてください。

3.「指示・命令」の「ように」について

 次の文(1)(2)で、仕事を休む人は誰でしょうか。

 (1)で田中さんは、「明日仕事を休む」と山田さんに言いました。ですから、仕事を休むのは田中さんになります。(2)では、田中さんは山田さんに「仕事を休むように」と言いました。「休むように」というのは、「休みなさい」「休め」「休んでください」のような命令や指示、また、依頼・助言などを表します。したがって、田中さんは次のように言ったことになります。

 ですから、「明日仕事を休む」のは山田さんになりますね。
このように「~ように言う」は、直接的な指示や命令を、間接的な表現を用いて伝える場合に用います。

ファンさんは体調が悪かったので、会社を早退して病院へ行きました。病院でファンさんは医者にいろいろなことを言われました。
その夜ファンさんは、奥さんに病院へ行ったことを報告しました。(3)はその時のファンさんと奥さんの会話です。には「ように」を使った文を入れてください。

奥さんに病院へ行ったことを報告している画像

 答えは「やめるように/吸わないように」と「飲まないように」になります。病院で医者がファンさんに直接命令・指示したことを、ファンさんは「ように言う/ように言われた」を使って、奥さんに間接的に伝えています。

4.「祈願・願望」の「ように」について

 あなたが何かを祈ったり、願ったりする時、日本語では「~ように祈る/願う」という表現をします。

 「~ように祈る/願う」の「ように」は、「そういう結果に、そういう状態に」に「行きつく」「なる」という意味を含んでいます。したがって、「ように祈る/願う」の前には動詞の可能形(4)や自動詞(5)(6)が来ること多いです。
また、次のように、「ように」の前に丁寧形が来たり、「祈る/願う」を省略した形も多く見られます。

5.「ようになる」6.「ようにする」の「よう」について

 ここでは5「ようになる」と6「ようにする」を合わせて考えます。
4「祈願・願望」で、「ように」は「そういう結果、そういう状態」に「行きつく」「なる」という意味を含んでいると説明しました。「ようになる」「ようにする」についても同じことが言えます。
「~ようになる」はある過程を経て、そのような状態に「なる」ことを表します。下の(13)に「ように」を使ったことばを入れてください。

 (13)の答えは「分かるように/聞けるように」ですね。
一方、「~ようにする」は、努力をして、また、工夫をして、そのように「する」ことを表します。

7.「目的(結果)」の「よう」について

 「目的(結果)」を表す「よう」は、「文1ように、文2」の形をとって、文1で「そういう結果・状態」になることを願って、文2で「そのための努力をする/している」という意味合いを表します。

25メートル泳げるように、毎日練習している画像

 目的(結果)の「ように」の前には、動詞の可能形(17)、自動詞(18)、動詞のナイ形(19)(20)が来ることが多いです。

「ように」が目的(結果)を表すので、目的「ために」とどう違うのかという問題が出てきます。次のabは、両方とも「大学院に入る」という目的で、「一生懸命勉強している」という内容を表しています。

 「ように」と「ために」の違いは、一言で言うと、話し手のとらえ方の違いということになります。「ように」はaでは、話し手は「大学院に入る」という過程や結果に重点を置いて、「そういう状態になる(ことができる)ことを願って(勉強する)」という意味になり、bの「ために」は、「大学院に入ることを目的として、それだけを目指して、(勉強する)」という、話し手の意志的な、積極的な気持ちや姿勢を表します。

(17)~(20)の中から(18)(19)を取り上げて考えてみましょう。
(18)は「子供が元気に育つ」、(19)は「虫歯にならない」という過程・結果を重視した文なので、「ように」が適切です。もし、意志的、積極的な目的表現にしたければ、(18)’(19)’のように、文を修正する必要があります。

 (18)’では、「(元気に)育つ」の代わりに「(元気に)育てる」、(19)’では「(虫歯に)ならない」の代わりに「(虫歯を)予防する」という意志的な動詞を用いています。

8.「例示」9.「前置き」の「よう」について

 8の「例示」は「ように」を用いて、例を示す働きをします。

 (22)では、どうすればいいかについて、「私がするやり方で」「私のするとおりに」と、例を示しています。(23)は「真面目な人は信頼される」例として「彼」を出し、「彼のような真面目な人(は誰にでも信頼される)」と表現しています。

9の「前置き」は、話し手が説明を始める時、説明の導入をスムーズにするために冒頭で用いる表現です。「ご存知のように」や「周知のように」などのような、慣用的に決まった言い方になっている場合が多いです。


*「ように」と「ために」の違いについては、「文法をやさしく【PDF:220KB】」(2004年1月更新)に詳しい説明があります。参照してください。

(市川保子/日本語国際センター客員講師)

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