日本語教育通信 文法を楽しく ~ている・~ていた(1)

文法を楽しく
このコーナーでは、学習上の問題となりやすい文法項目を取り上げ、日本語を母語としない人の視点に立って、実際の使い方をわかりやすく解説します。

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~ている・~ていた(1)

 今回からしばらく、皆さんがすでに知っていることを、もう少し深く、応用的な部分を含めて考えていきたいと思います。今回と次回は「~ている」と「~ていた」について考えます。
「子供が庭で遊んでいる」を過去にすると、「子供が庭で遊んでいた」になりますが、この「~ていた」はどんな状況で使われるのでしょうか。同じ過去でも「新婚当時はよく夫婦喧嘩をした」と「新婚当時はよく夫婦喧嘩をしていた」はどう違うのでしょうか。
「~ていた」に入る前に、まず「~ている」についての復習をしておきます。*1

1.「~ている」について

 以下の会話には「~ている」(下線部分)が出てきますが、話し手はどういう意味で「~ている」を使っているかを考えてください。

<ドライブの途中で>の画像

 (1)①で話し手Aは、皇居の周り(皇居の周りはジョギングコースとして有名です。)で走っている人達を見て、その今の動きを「~ている」で表しています。②の「走っています」は習慣を表します。「走ります」(Bの「ときどきします」も同じ)も「走っています」も習慣を表しますが、「走ります」が単なる現在の習慣を表すのに対し、「走っています」は、「以前始まった習慣が今も変わらず続いている」というようにやや具体的な説明になります。*2
(2)では、Bが運転している車がガードレールにぶつかって、バンパーやボンネットが壊れたようです。それを見たAが、その状態(壊れた結果の状態)を「~ている」を用いてBに伝えています。
以上まとめると、(1)の「ている」は動作の進行・継続を、(2)は結果の状態を表します。

  (3)は母と子の会話です。母親がまだ食べないようにと言ったのに、弟の悠君は母親が戻ってくる前に食べ始めたようです。それを兄が「悠はもう食べている」と報告しています。①と②の「食べている」は同じ用法で、「食べる」という動作が「実現」している(ここでは開始している)という意味を表します。一方、③の「食べていない」は「食べている」の否定形ですが、弟に言わせれば「(ちょっとしか)食べていない」、つまり、「食べる」ことがあまり「実現」していないという「未実現」を表します。「未実現」は「未完了」と同じだと考えてもいいでしょう。
したがって、(3)の①②「~ている」は実現、③の「~ていない」は未実現を表します。

 では、次からは皆さん自身で考えてください。会話に出てくる「~ている」はどのような意味用法を表すでしょうか。

<Aさんは外国の観光客、Bさんは商店街の人です。朝、商店街で「ガラガラガラ・・」という音がするのを聞いて>の画像

  (4)①は店のシャッターが今ガラガラと開いている途中ですから、「動作の進行」を表します。②(2つあります)は朝何時かに店が開いて、その結果の状態が続いていることを表します。③は「開けて+いる」なので、動作主が今店を開けつつあるという「動作の進行」を表していると考えがちですが、これは朝何時かに店の人が店を開けて、その結果の状態が続いていることを表します。②の「開いている」と③の「開けている」は、ここでは両方とも「状態」を表しますが、「開けている」は人の動作・行為、または、動作主の意志に視点(注意点)が置かれ、誰かが開けて、その状態を続けているという意味になります。
(5)の「~ている」は、物事((5)では事件)が繰り返し起こったり、物事を繰り返し起こしたりする「反復」を表します。次のように「たびたび」「しょっちゅう」や、「いつも」「よく」などの頻度を表す副詞とともに用いられることが多いです。

 (6)の「行っている」は「経歴や記録」を表します。過去に起こったことが現在と何らかの関わりがある場合、「経歴や記録」として述べられています。*3ここでは、アフリカへ行ったことが話題になっていて、AがCのアフリカ行きの経験について話しています。 (6)の会話の1行目と4行目に出ている「行ったことがある」も経験を表しますが、「~ことがある」が経験を相手に積極的に伝えようとするのに対して、「~ている」は、むしろ過去の記録・経歴として示す時に使われます。

 では、次の(7)の「とがっている」はどんな意味を表すか考えてください。

 この「とがっている」は一時的な状態ではなく、そのものが持つ恒常的な性質・特徴を表します。(7)では、はさみの先が細く、鋭くなっていることを表します。このような「~ている」には次のようなものがあります。

  今回出てきた「~ている」の使い方の中で知らないものがありましたか。以上説明した「~ている」の意味用法は次のようになります。
動作の進行・継続 結果の状態 実現・未実現 反復 経歴・記録 性質・特徴

  1. *1文法をやさしく(2003年9月更新)【PDF:203KB】」で基本的なことが詳しく説明されているので、該当項目を参考にしてください。
  2. *2,3 砂川有里子(1986)『セルフ・マスターズシリーズ2 する・した・している』 くろしお出版

(市川保子/日本語国際センター客員講師)

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