日本語教育通信
文法を楽しく「表現意図 -とき(2)-」

文法を楽しく
このコーナーでは、学習上の問題となりやすい文法項目を取り上げ、日本語を母語としない人の視点に立って、実際の使い方をわかりやすく解説します。

表現意図 -とき(2)-

 前回「とき(1)」では「~てから」「~あとで」を中心に、時間の前後関係を表す表現について見てきました。「表現意図」シリーズ7回目の今回は「とき(2)」として、「一定の時間・期間内に状態・行為が終了する」場合と、「一定の時間・期間中、状態・行為が続く」場合の表現を取り上げます。

1.「一定の時間・期間内に状態・行為が終了する」表現

 「一定の時間・期間内に状態・行為が終了する、また、終了させる」表現として、「~あいだに」「~うちに」「~中に」「~までに」などを取り上げます。前文に時間・期間表現が来て、後文にはその時間・期間内に終了する/終了させる表現が来ます。次の(1)でAは日本人、Bは外国人留学生です。Aの質問に対してBは、いろいろな形で、「一定の時間・期間内の状態・行為の終了」について表すことができます。

  1. (1)
    A:
    日本はもう何年ですか。
    B:
    1年たちました。
    A:
    日本語以外に何か習っていますか。
    B:
    いえ、でも、
    1. a.日本にいるあいだに、日本料理を習いたいと思っています。
    2. b.日本にいるうちに、日本料理を習うつもりです。
    3. c.日本滞在中に、日本料理を習うつもりです。
    4. d.帰国するまでに、日本料理を習いたいと思います。
    5. e.日本滞在が終わらないうちに、日本料理を習いたいと思います。

 aは時間的な長さを「あいだ」で表し、その時間・期間内の「あいだに」日本料理を習うということを意味しています。
 bの「うちに」は、前文に時間・期間を表す表現が来て、「そのあいだに」という意味を表します。例えば、「時間があるうちに、発表の準備をしよう」「天ぷらは熱いうちに食べるに限る」は、「時間があるあいだに」「天ぷらは熱いときに」の意味になります。「~うちに」は「~あいだに」と違って、少し心理的な要素が入ります。bでは「日本にいる期間が終わってしまっては、日本料理は習えなくなるから、日本にいる、この状態が続いているときに」という、状態の変化が起こることを心配したり、困ったりする気持ちが入ります。心配したり、困ったりする気持ちがもっと強くなると、eの「日本滞在が終わらないうちに」のように「~ないうちに」と表現することになります。
 c「~中に」は、「滞在」という動作・状態を表す名詞の後ろに付いて「~のあいだ」を表し、後ろに時点を表す「に」を付けて、時間・期間を限定しています。
 「名詞+中」には「外出中、休憩中、食事中、留守中、旅行中、会議中、電話中、勉強中、仕事中」などがあります。「~中」は「~しているあいだに」と同じ意味ですが、文にすると長くなるので、「名詞+中」の形でまとめ、簡潔な表現にしています。
 dの「~までに」は、「ある期限の前に」という意味を表し、「帰国するまでに」は、「帰国」を期限として、「その前に(終わらせる)」という意味になります。「午後3時までに帰ってきてください」は、午後3時を期限として、それより前に帰ってくることを表します。
 eは「うちに」の前に否定形の「~ない」が来ています。「~ないうちに」は「そのことが実現する前に」という意味で、そのことの実現を心配したり、困ったりする気持ちが入ります。例えば、fの「日本滞在が終わらないうちに」は、「日本滞在が終わる」という事態を懸念・心配して、「日本滞在が終わる前に」、言い換えれば、「日本滞在が終わらない時間・期間内で」という気持ちを表しています。「暗くならないうちに、帰ろう」「雨が降らないうちに、洗濯物を取り込もう」のようになります。

 以上、「一定の時間・期間に状態・行為が終わる/終わらせる」表現を見てきました。
では、実際の会話の中で、それぞれの使い方を確かめてみましょう。

<花子さんは知り合いのペンキ屋さんに教えてもらいながら、子供部屋の壁を自分で塗っています。A:ペンキ屋さん B:花子>
A:
ああ、うまく塗れていますね。
だいたい塗れたら、ペンキが濡れているあいだに、上から2回塗りをします。
B:
ええっ。
A:
ペンキが濡れているうちに2回目を塗ると、むら*にならないんですよ。
B:
……。
A:
ペンキが乾かないうちに、手早く全体を整えてください。
B:
あ~疲れた……。
A:
作業中に、そんなことを言ってはいけませんよ。
B:
全部終わるまでに、あとどのくらいかかりそうですか。
A:
そうですね、あと1時間ぐらいでできますよ。

*むら:濃い部分、薄い部分があること、まだら

花子さんとペンキ屋の画像

2.「一定の時間・期間、状態・行為が続く」表現

 「一定の時間・期間内に状態・行為が終了する/終了させる」表現には「~あいだに」「~うちに」「~までに」のように、後ろに「に」が来ました。ここで取り上げる「一定の時間・期間その状態・行為が続く」表現には、「~あいだは」「~うちは」のように、後ろに「は」が来ます。また、後文には「(その時間・期間中)状態・行為が続く」という表現が来ます。
 次の(2)で、Aは主婦のBに仕事について質問しています。Aの質問に対してBは、いろいろな形で、「一定の時間・期間、状態・行為が続く」表現を述べることができます。

  1. (2)
    A:
    仕事は続けますか。
    B:
    ええ、
    1. a.元気なあいだは、ずっと働こうと思います。
    2. b.元気なうちは、ずっと働こうと思います。
    3. c.育児中以外は、ずっと働こうと思います。
    4. d.定年までは、ずっと働こうと思います。
    5. e.年をとらないうちは、ずっと働こうと思います。

 a~eは「~あいだに」「~うちに」などの「に」が「は」に代わって、「~あいだは」「~うちは」などになっています。格助詞「に」が1つの時点を表すのと対照的に「は」はその時間・期間を取り上げ、その時間・期間について主題的に、また、対比的に述べるという性質を持ちます。つまり、その時間・期間の状態を述べながら、それが終わってからの状態についても、対比的に暗示する役割をしています。
 a「~あいだは」は時間・期間を重視して、「その時間・期間だけは」と言っています。一方、b「~うちは」は「~うちに」と同じく、少し話し手の気持ちが入ります。その期間はその動作・状態を続けるが、その期間が終わればそれをやめるという気持ちが、「~あいだは」より強くなります。
 cは「名詞+中以外は」という形をとって、「育児の期間以外」であることを限定しています。育児中は休むが、育児中以外のときは仕事をすると述べています。
 e「~までは」は時間・期間の限定を表していますが、「少なくとも定年になる前は」働くということを限定しています。
 fは「年をとらない」という状態が続くのであれば、そのあいだは働くということを表しています。「年をとらないうちは」働くけれど、「年をとってからは、どうなるか分からない、たぶん働けない」という対比的な意味合いを含んでいます。

 では、実際の会話の中で、「~あいだは」「~うちは」「~ないうちは」などの使い方を確かめてみましょう。

<料理教室で>
先生:
肉をオーブンに入れますよ。だいたい20分かかると思います。
生徒:
は~い。
先生:
焼いているあいだは、オーブンのとびらを開けないでください。
生徒:
は~い。焼き上がるまでは、とびらを開けてはいけないんですね、
先生:
そうです。
生徒:
<しばらくして>ああ、いいにおい!
先生:
あ、できてきましたね。
皆さん、ここから覗いてください。肉の表面が茶色になっていますね。
生徒:
はい。
先生:
色が茶色にならないうちは、まだ焼けていないので、そのときはもう少し焼いてください。
オーブンの使用中は、とびらが熱くなるので、気をつけてください。

料理教室の画像

 以上、今回取り上げた文の形(表現文型)は、次のようになります。

「一定の時間・期間内に状態・行為が終了する」
  1. 1)~あいだに
  2. 2)~うちに
  3. 3)名詞+中に
  4. 4)~までに
  5. 5)~ないうちに
「一定の時間・期間内に状態・行為が続く」
  1. 1)~あいだは
  2. 2)~うちは
  3. 3)名詞+中は
  4. 4)~までは
  5. 5)~ないうちは

これらの表現を、話し手の表現意図の基準に合わせると次表のようになります。〇は程度が高い、△は程度が少し落ちることを表します。

表1「一定の時間・期間内に状態・行為が終了する」
~あいだに ~うちに 名詞+中に ~までに ~ないうちに
その時間・期間内に
終わる・終わらせる
心理的な要素・懸念
簡潔な表現
表2「一定の時間・期間、状態・行為が続く」
~あいだは ~うちは 名詞+中は ~までは ~ないうちは
その時間・期間続く
心理的な要素・懸念
簡潔な表現
それが終わってからの
状態を暗示

 表1は「一定の時間・期間で状態・行為が終了する」表現、表2は「一定の時間・期間、状態・行為が続く」表現です。表1と2の違いは、前者は後文で「その時間・期間内に状態・行為が終わる」ことを表し、後者は後文で「その時間・期間、状態・行為が続く」ことを表すことです。また、後者の表現には、前文で述べられている時間・期間が終わってからの状態が、対比的に暗示されるということが多いです。

(市川保子/日本語国際センター客員講師)

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