日本語教育通信 授業のヒント ディスカッションで自分の意見を伝える

授業のヒント
このコーナーでは、海外の日本語教育の現場で、すぐに応用できる具体的な教え方のアイデア、ヒントを紹介します。

ディスカッションで自分の意見を伝える

概要
目的
  • ディスカッションの中で、効果的に自分の意見を伝えることができる
学習者のタイプ
  • 中級~
クラスの人数
  • 3~8人

話し方に注目させる

 ディスカッション活動が中心の授業では、学習者から、話す内容に集中してしまうので日本語の目標や達成度がわかりにくいという声が聞かれることがあります。そのため、内容について意見交換をしたいという学習者の欲求を満たしながら、日本語の運用面も意識させるような授業の展開を考えることが必要です。
 では、学習者自身が「意見をどのように伝えたら効果的に伝えることができるか」を考えながら積極的に取り組めるような活動にするためには、どうしたらいいのでしょうか。今回はこのような点から、ディスカッションの中での効果的な意見の述べ方の指導ポイントと練習方法をご紹介します。

1.聞き手を意識した、まとまりのある話をする

 まず最初のポイントは、学習者に、自分自身の話し方が聞き手にとって聞きやすいかどうか注目させることです。「長々と話をしたものの結局結論がわからない」というようなことにならないためには、話の結論が明確にわかるような話し方をしなければなりません。
 そのためには、まずは目標となる談話例を示して、その型を意識しながら話す練習が効果的です。その際には、結論を強調した談話構成や談話展開を表す接続表現などを意識的に使うように気をつけましょう。

<意見を述べる談話例>

1.私は、 結論 と思います。
2.というのは、 理由① からです。
(3.それに 理由② 。/また 理由③ 。)
4.ですから 結論 と思います。

 もちろん学習者のレベルによっては、一度談話の型や表現を意識させたら必要以上にその練習を繰り返す必要はありません。目的は、あくまでも学習者自身が談話構成や表現を意識して、考えながら話すことにあります。ですから、続く練習では、積極的に文末表現や接続表現などの表現のバリエーションを使ってみるように促しましょう。

<文末表現のバリエーション例>

~と思います。
~んじゃ(のでは)ないかと思います。
~んじゃ(のでは)ないでしょうか。

<理由の接続表現のバリエーション例>

というのは、(理由) からです。
なぜなら/その理由は/どうしてかと言うと、~。

2.相手の意見に言及する

 次のポイントは、議論のつながりや展開を意識しながら意見を述べることです。そのためには、前の意見と自分の意見の関係をわかりやすく示すことが必要になります。前置き表現を使ったり、前に聞いたことをまとめたりした後に自分の意見を続けることで、話の流れの中での意見の位置づけが明確になります。

《活動例1》ペアで話す

  • ペアになり、まずAが意見を述べ、それを聞いてBが意見を述べる。さらに、今度はBに対してAが意見を述べる、というように繰り返す。
  • 前置き表現を使って、必ず相手の意見について言及してから自分の意見を話すことがポイント。

<前置き表現①>

【賛成・一部賛成】
そうですね。 +(それについては)賛成です。
私もそう思います。
【反対・一部反対】
そうでしょうか。 +(それについては) 私はそうは思いません。
それはちょっと違うんじゃないでしょうか。
【どちらとも言えない】
うーん、そうですね。 +難しい問題ですね…。

《活動例2》リレーディスカッション

  • 1つのことについて、複数名が次々と意見を話す。
  • 前の意見をまとめてから、自分の意見を話す。
  • 初めのうちは「Aさんは賛成だと言いましたが、私は・・・」と結論だけを話すのではなく、全体を要約して話すように指導することがポイント。

3.相手の意見に関連付けて自分の意見を述べる

2.のような練習を繰り返すことで、学習者は議論のつながりや展開を意識して発言できるようになります。さらに次のポイントとしては、自身の意見をより正確に、詳細に伝えることです。そのためには、論点や前者の意見に対して、細かい意見の違いを示す必要があります。また、ひとつの視点からではなく、多角的な視点から説明することも、説得力の高い説明のためには重要になるでしょう。

<前置き表現②>

【反論する】
うーん、そうですね。 +たしかに、それはそうかもしれませんが、
もちろん、○さんのご意見もわかるんですけど、
【限定して賛成する/反対する】
Aという点については同意できますが、Bという点については賛成できません。

《活動例3》反論の練習

  • 前の意見を確認してから、反論をする。
  • 前の意見の一部を認めつつ異なる意見を述べる。
  • 練習に集中するために、教師が意見を用意し、それについて反論するという方法も効果的。

(例)

Q: 環境問題の解決のために、何が必要でしょうか。
A: ―(意見)―
B: つまり、Aさんのご意見は個人よりも政府の取り組みのほうが重要だということですね。 確かに、政府の取り組みが重要だということについてはその通りだと思いますが、個人よりもまず政府だというご意見には賛成できません。というのは…

 ディスカッション活動では、学習者に合わせた様々なトピックが考えられますが、このような話し方の練習を意図的に授業に取り入れ日本語能力や学習意欲の向上につなげることが必要ではないでしょうか。

【参考文献】

  • 荻原稚佳子・増田眞佐子・齊藤眞理子・伊藤とく美(2005)『日本語上級話者へのかけはし-きちんと伝える技術と表現』スリーエーネットワーク
  • 荻原稚佳子・齊藤眞理子・伊藤とく美(2007)『日本語超級話者へのかけはし-きちんと伝える技術と表現』スリーエーネットワーク

(市岡香代/日本語試験センター研究員)

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