日本語教育通信 授業のヒント チラシから学ぶ

授業のヒント
このコーナーでは、海外の日本語教育の現場で、すぐに応用できる具体的な教え方のアイデア、ヒントを紹介します。

チラシから学ぶ

概要
目標
  • スーパーなどのチラシの情報を読みとることができる。
  • チラシから日本の文化や生活を理解する。
学習者のタイプ
  • 初級後半~
クラスの人数
  • 何人でも
用意するもの
  • 新聞といっしょに配達されるチラシ
  • ウェブサイトにアップされている電子チラシ

チラシとは?

 日本では毎日配達されてくる新聞にたくさんのチラシが折り込まれています。中には、写真がきれいで、季節や年中行事などを感じられるものもあります。
 このチラシを活用することによって、授業が活性化したり、日本文化を学んだりすることができます。
 日本で生活する学習者にとっては、チラシは地域に密着しているものなので、すぐに生活に活かすことができます。また、海外の学習者の場合は、日本の文化(特に食文化)や行事を学ぶ教材にもなります。

活動の流れ①

 まずは、チラシを用意しましょう。日本の家庭や職場などで新聞を定期購読していれば、毎日たくさんのチラシが届けられます。今はウェブサイトで最新のチラシを得ることもできますので、海外にいる人もチラシを見ることができます。このページの最後に、電子チラシを閲覧できるサイトのURLをいくつか紹介していますので、参考にしてみてください。

スーパーのチラシ
チラシの一例1

 初めて日本のチラシを見た学習者には、チラシの内容を理解することが意外と難しいかもしれません。例えば、次のような点です。

  1. a.どの店のチラシなのか。
  2. b.安く売られているものは何なのか。
  3. c.安く買えるのはいつなのか。

 そこで、上のチラシの一部の商品を下のように切り取って、それが何なのか、提示されている値段で買うことができるのはいつなのか、などについてQ&Aの形で確認すると良いでしょう。

 いつでも安く買えるものと、決まった日だけに安く買えるものがあることを確認する必要があります。
 慣れてきたら、チラシを複数用意して、どの店でいつ何が安く買えるかをQ&Aの形で行なうと良いでしょう。上の例は「たまご」「長ねぎ」と分かりやすいものですが、日本にしかないものやあまり見慣れないものを使うと難易度が上がります。クラスの人数によっては小グループを作って競い合うことで、クラス活動を活性化させることもできるでしょう。

活動の流れ②

 上に述べた活動では、1枚のチラシから情報を読み取ることが主な目的でしたが、同じ種類のチラシをもう1枚用意すると、活動の幅がぐっと広がります。

スーパーのチラシ
チラシの一例2

 例えば、学習者を二つのグループに分けて、それぞれのグループに別の店のチラシを渡します。
 グループ1とグループ2では、持っている情報が違います。そのインフォーメーションギャップを利用すると、例えば、野菜やくだものの値段を比べることができます。また、みんなでいっしょに買い物に行く設定で、どちらのスーパーが安く買い物ができるかといった話し合いをすることもできます。
 日本国内の教室なら、本当の買い物に役立つでしょうし、海外での教室なら自分の国での値段と比較することもできるでしょう。

チラシに見られる季節や年中行事

 チラシには、それが作られたときの季節や年中行事が反映されています。一番はっきりしているのは食品でしょう。野菜やくだもの、それに魚などにより季節を感じることができます。
 食べ物だけではなく、季節を先取りしたファッションや電化製品のチラシ、七五三や成人式の前には着物のチラシが増えることなどからも季節や行事を感じ取ることができます。卒業式や入学式の前には式典用の服装のチラシが多くなります。
 ランドセルは、小学生が通学に使うかばんです。4月に入学する新一年生が両親または祖父母などから買ってもらうので、入学前の時期にチラシが配られ、商品としてランドセルが店頭に並びます。
 もっとも、この頃は販売の時期がだんだん早くなってきました。また、ランドセルは最近外国人の間でも人気商品になりました。本来の販売時期や用途を確認する意味でも、チラシを使って「ランドセルは誰が使いますか?」「いつどこで使いますか?」「ランドセルが店頭に並ぶのはいつだと思いますか?」などQ&Aの形で進めると楽しい授業になることと思います。もし、日本人の先生が学校にいる場合は、その先生が昔使っていたランドセルの写真や実物を見せると、一段と授業は活気付くことでしょう。

ランドセルのチラシ
チラシの一例3
(「そごうのランドセル」2015 デジタルチラシより)

チラシから学ぶ日本の住宅事情

 毎日の折り込みチラシには、毎日のお買い物に役立つチラシのほか、車やマンションのような大きな買い物のチラシもあります。

不動産情報のチラシ
チラシの一例(部分)4

 学習者の中には以下のような図を見て日本での住まいを決めた人もいるかもしれません。

間取り図
間取り図の例

 改めて見ていきますと、このチラシには住宅に関する日本文化をたくさん見出すことができます。
 ㎡と並んで使われている「坪」や「帖」「畳」。「4LDK」や「DK」などの略語。アパートやマンションを借りるときに目にする、「礼金」「敷金」「保証金」や「管理費」など。「日当たり」や「駅近」などからは、日本人がどのような条件をいい条件だと考えているかという価値観に気づくことができるでしょう。
 一度に全てを理解する必要はないと思います。必要な情報を順番に読み取っていくことが大切です。そうすれば、そこから多くの日本文化が見えてくるはずです。
 毎日発信される生きた教材の「チラシ」。是非活用してみてはいかがでしょうか。

参考:電子チラシが閲覧できるサイト

チラシ転載(URLは2015年1月現在)

  • 「そごうのランドセル」デジタルカタログ そごう大宮店
    http://e-catalog.sogo-gogo.com/common/20140619/001/index.html?shopId=3719&chirashiId=8804031710332
  • 「グランシティ武蔵浦和(不動産)」日本綜合地所株式会社
    国際交流基金(2008)『日本語教師必携 すぐに使える「レアリア・生教材」コレクションCD-ROMブック』(スリーエーネットワーク) ※本書の出版は、初版分のみで終了しました。

(岩澤 和宏/関西国際センター日本語教育専門員)

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