日本語教育通信 日本語教育ニュース 自分の楽しみを日本語学習に!―日本語学習サイト「ひろがる もっといろんな日本と日本語」公開―

日本語教育ニュース
このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。

関西国際センター 日本語教育専門員 伊藤秀明

 関西国際センターでは、「趣味などの『自分の楽しみ』の世界を通して、日本語と異文化理解能力の育成を支援するサイト」をコンセプトに、「ひろがる もっといろんな日本と日本語」(以下、「ひろがる」)を公開しました。
 海外で日本語を学習している人の中には、留学や仕事のためのような直接的な学習目的ではなく、日本語を趣味として学習している人が多くいます。このような学習者からは、「もっと楽しく自由に学習を続けられる教材がほしい」「日本語だけではなく日本の文化に触れられるような教材があれば、ずっと日本語の勉強が続けられるのに」などの声が聞かれます。そこで、学習者が興味・関心を持つ題材を通して日本や日本語に触れることで、より幅広い日本や日本語を知り、それを学習の継続につなげることをねらいとして、「ひろがる」を開発しました。このサイトは初級日本語学習者(JF日本語教育スタンダードA1,A2レベル)でも、日本と日本語を身近に感じ、楽しみながら日本語学習ができるサイトになっています。今回は、この「ひろがる」についてご紹介したいと思います。

URL:https://hirogaru-nihongo.jp/

「ひろがる」のトップページの画像
「ひろがる」のトップページ

「ひろがる」の特徴

 「ひろがる」は、自分の楽しみを日本語学習につなげられるように、5000名を越える世界中の日本語学習者へのアンケートから選ばれた「星・夜空」「アウトドア」「武道」「カフェ・お茶」「スイーツ」「スーパー・市場」「書道」「アニメ・マンガ」「本・図書館」「寺・神社」「音楽」「水族館」の12のトピックで構成されています。現在、「ひろがる」は日本語版と英語版があり、ルビの有無を切り替える機能などが付いています。
 また、「ひろがる」は学習項目に沿って日本語を学ぶのではなく、自由にサイトを閲覧しながら自分で学習していく自律学習型の学習サイトです。PC、スマートフォンともに同じデザインで閲覧できるサイト構成になっていて、家にいても外出先からでも、基本的にいつも同じようにサイトにアクセスすることができます。
 さらに、「ひろがる」には大きく以下の3つの特徴があります。

1)
JF日本語教育スタンダードのA1,A2レベル(入門~初級)の日本語力でも「わかる」「使える」実感を得ることができる。
2)
12のトピックに関する日本の情報を読んだり、聞いたりすることで、様々な日本や日本語に触れることができる。
3)
日本だけではなく、他のユーザーの文化や自分の文化について考えるきっかけになる。

トピックの構成

 12の各トピックは「トップ動画」、「記事」、「トピックと私」、「漢字」、「コメント」というコンテンツで構成されていて、一部のトピックには「食」というコンテンツもあります。

トピックトップページ(水族館)の画像
トピックトップページ(水族館)

 各コンテンツは表のように、日本語版と英語版があり、それによって表示される内容や機能に違いがあります。

コンテンツ名 コンテンツ内容 日本語版 英語版
トップ動画 動画と字幕 日英併記 日英併記
記事 記事(テキスト) 日本語 日本語
記事(動画) 日本語字幕 日本語字幕
Words and Phrases なし 英語
クイズ 日本語 英語
トピックと私 動画(インタビュー) 日本語 日本語、英語
漢字 トピックの漢字(写真) 日本語 日本語、英語
コメント ユーザーに対する質問 日本語 英語
テキスト 日本語 日本語
Words and Phrases なし 英語

 続いて、各コンテンツの内容について紹介したいと思います。

<トップ動画>

 各トピックを開くと一番上にある動画です。トピックと関わりのある場所や人物の動画を見ることができます。動画はトピックの世界を知るきっかけとなるので、動画を見て興味を持ったトピックから他のコンテンツを見始めるのもいいと思います。また、動画は普通の日本人が話しているのをそのまま映像にしたものなので、難しいときは「字幕あり」を選択すると、英訳もついていて内容を理解しやすいです。

トップ動画(水族館)の画像
トップ動画(水族館)

<記事>

記事詳細(カフェ・お茶)の画像
記事詳細(カフェ・お茶)

 トピックに合わせた様々な記事を読んだり、動画を視聴したりすることができます。記事の日本語は基本的に「まるごと 日本のことばと文化」の入門から初級2までの文法と語彙で構成されています。そのため、JF日本語教育スタンダードのA1,A2レベルの日本語力があれば楽しむことができます。また漢字に関しても、様々な漢字に触れながら読み進め、漢字の読みを確認したい時はルビボタンでチェックすることができます。さらに、英語版では「ことば」というボタンがあり、上記の基準より少し難しい語彙や表現については英訳を確認することができます。

 記事の内容については自分の日本語力で「読めた」「わかった」という実感を持ってほしいので、英語版にも英訳はありません。そのため、やさしい日本語で書かれた記事を読んで「全部わかった」、リアルな日本語の動画を見て「少しだけど、わかった」という2つの実感を得ることができます。最後にはクイズもあるので、内容を理解できているか確認することもできます。

<トピックと私>

トピックと私(アニメ・マンガ)の画像
トピックと私(アニメ・マンガ)

 このコンテンツでは、日本人がトピックとの関わりについて話している動画を視聴します。日本人のトピックに対する様々な考え方を知ることができます。たとえば、「アニメ・マンガ」というトピックの場合、「アニメを見ますか。」などの質問にいろいろな人が答えています。中には、「マンガ・アニメは子供っぽいので嫌いです。」という否定的な答えもありますが、それも含めて様々な考え方に触れることができます。また、年代や住んでいる地域が異なるなど、いろいろな人が話しているので、様々な方言や話し方に触れることもできます。さらに、このコンテンツでは動画内で話している内容を文字で確認することもできます。

<漢字>

 トピックに関わる漢字を写真で紹介することで、漢字や漢字語彙の知識を増やすことができます。紹介されている漢字は、すぐに実生活で役に立つ漢字ではないかもしれませんが、トピックの世界を楽しみながら、少しずつ自分の好きな世界の漢字に触れて漢字の知識を増やすことができます。さらに、その漢字を日本語で入力する練習もできます。

漢字【和風】(スイーツ)の画像 漢字【和風】(スイーツ)の画像2
漢字【和風】(スイーツ)

<コメント>

コメント(星・夜空)の画像
コメント(星・夜空)

 「自分に関すること」(例:星を見るのが好きですか。どんな時に見ますか。)、「自分の国や地域に関すること」(例:あなたの国や地域にはプラネタリウムがありますか。)、「日本に関すること」(例:日本のどこの星空が見てみたいですか。)の3つの質問に対して、コメントを書いたり、他の人が書いたコメントを読んだりすることで、世界中の人とつながることができるコンテンツです。コメントを利用して自分の気持ちを発信するだけでなく、いろいろな国や地域の文化や考え方についても知ることができます。コメントは日本語で書くことを前提としていますが、質問に対しての答えの例文も「ヒント」ボタンで見ることができるので、3つの中の答えられそうなものからスタートすることができます。

<食>

 食べ物の話題は海外の学習者にとても人気があります。そこで、トピックに関連する食べ物を写真と短い日本語で紹介するコンテンツを作りました。このコンテンツがあるのは、「アウトドア」「武道」「カフェ・お茶」「スイーツ」「スーパー・市場」「アニメ・マンガ」「寺・神社」「水族館」の8つのトピックで、「アウトドア」なら「外で食べたもの」、「スーパー・市場」なら「食べ歩きのもの」など、テーマもトピックに合わせていろいろです。写真と一緒に食べた時の感想や思い出が短い日本語で書かれているので、気軽に楽しむことができます。このコンテンツの英語版の「Words and Phrases」では、食べ物に関連する言葉をリストにしています。

食(アウトドア)の画像 食(アウトドア)の画像2
食(アウトドア)

「ひろがる」の楽しみ方

 日本語や日本文化、それに関する日本人の考え方は、日本社会のいろいろな所に散らばっています。その中でも、日本語学習者が自分の好きなものを通して、日本語や日本文化、日本人の考え方に触れ、世界が広がっていくといいなと考えました。ネット上の楽しい情報は、難しい日本語であふれていて、その情報を楽しむことはとても大変なことです。そこで、情報にアクセスして楽しんでいる中で自然に日本語を学べるような場を提供したいと考え、「ひろがる」を制作しました。

「この言葉は日本語でこういう風に言うんだ」、
「勉強してきた日本語で情報が読めた!聞けた!」という学びの実感。
「私が知っていたのとは違うこんな部分もあったんだ」、
「自分の好きなことが、実は日本語や日本文化とつながっていた!」という気づき。
「好きなことについて、世界中の人と交流できた」というつながり。
そして、それを通した自分の世界の広がり。

 こういったものを「ひろがる」で感じてくれれば、うれしいです。「ひろがる」はユーザーに「こんな風に使ってもらいたい」という具体的な楽しみ方は提示していません。それは家や教室で記事を読む、動画を視聴する、その中で得た様々な気づきをユーザー同士でシェアする、というユーザーの「このトピックが好き」という気持ちを大切にした自由な学びを支援したいからです。「今日はこのトピックの動画を見てみよう」「バスの中でこの記事を読もう」「お腹がすいたから、食のコンテンツを見てみよう」など、日常の中で「ひろがる」にアクセスして日本語の知識を増やしたり、コメントでユーザー同士の考えを交換したりしていければいいなと思っています。私達もこのサイトを利用するみなさんと一緒に「他にどんな世界があるのかな」「あ、こんな世界もひろがっているんだ」と様々な気づきを探していきたいと思っています。

 「ひろがる」では、今後もコンテンツを更新していく予定ですので、どうぞご期待ください。お問い合わせは、hirogaru@jpf.go.jpへお願いします。皆様からのご感想やご意見もお待ちしています。(メールを送る際は、全角@マークを半角@マークに変更してください。)

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