国際交流基金賞50周年記念 金 容徳さんからのメッセージ

金 容徳さんの写真

平成18(2006)年度 国際交流奨励賞

ソウル大学 歷史学部 名誉教授

金 容徳

[韓国]

国際交流基金賞

国際交流基金創立50周年を迎え国際交流奨励賞の受賞者のひとりとして心からお祝い申し上げます。

私が国際交流基金よりその年の奨励賞の受賞者として選ばれたとご連絡を頂いたのは2006年の初めでありました。授賞式は2006年の10月3日だと伺いました。当時、私はソウル大学国際大学院の院長を務めておりました。私は日本研究者として光栄なこの賞の受賞を受諾することに喜びを感じました。ところが、偶然にもその年の8月に韓国政府において設立される予定の東北亜歴史財団の理事長に就任してほしいと打診されました。

東北亜歴史財団は東アジア地域内の領土、歴史問題など取り扱う機関として、地域内の平和の礎を築くことを目的で設立されました。多分に韓国政府の立場を代弁する財団であります。ですから、私は東北亜歴史財団の理事長就任を断固としてお断りいたしました。その理由としましては、2か月後に日本の国際交流基金から賞を受賞するとお約束しておりましたからであります。韓国政府では、かえって東北亜歴史財団の理事長が日本の国際交流基金より賞の受賞者として選ばれたことを受け入れるほど、私たちの心を開くべきだと私を説得しました。折しも授賞式が10月3日、韓国の開天節(建国記念日)と日程が重なることも気にかかりましたが、かえってこのような事柄を踏まえた上で、お約束を守ることも東北亜歴史財団の理事長としての務めだと思いました。

授賞式では、私の家柄の抗日観や、韓国と日本の関係について、日本を頭ごなしに排斥するのではなく、日本に対してもっと深く知るべきであると感じ、それで日本研究を始めたことをお話しいたしました。

翌日(10月4日)は天皇が受賞者を招きお祝いしてくださったレセプションが開かれました。私たち韓国人は、2001年に明仁天皇が記者会見で、天皇家が百済系と関係があるとおっしゃったお言葉を聞き、天皇にとても親近感を感じておりましたので、お目にかかれることをとてもうれしく思いました。

国際交流奨励賞を受賞してのちに、私は韓・日・中共同歴史書を編纂する仕事に取り組みました。現在、その成果は微々たるものですが、東アジアの歴史が共通の資産になりうると思うようになりました。

平等な立場で平和に向けて、韓・日・中3カ国がお互いに協力し合う道は、過去の歴史を直視し、ありのまま、そしてそのうえで歴史を書く努力が必要だと思います。韓国では「五十は半百」という諺があります。50周年はすぐ100周年を迎えるという意味です。

国際交流基金関係者の皆様が、日本と海外との相互理解と友好親善の促進に御尽力されてきたことに敬意を表するとともに、いままでの成果を踏まえ、今後とも、国際的な文化交流と平和を発展させることを願っております。

金 容徳

(原文 日本語)

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