国際交流基金賞50周年記念 アンジェラ・ホンドゥルさんからのメッセージ

アンジェラ・ホンドゥルさんの写真

平成20(2008)年度 国際交流基金賞

ヒペリオン大学名誉教授 / 翻訳家

アンジェラ・ホンドゥル

[ルーマニア]

日本の精神がパンデミックと戦う武器になる

何よりも最初に、2008年に国際交流基金賞を頂いたことへの尽きせぬ感謝を申し上げます。

パンデミックの発生を受けて、多くの人が景気低迷や金融不安といったあらゆる種類のたくさんの問題に頭を悩ませています。けれど人間は文化的な存在であり、人生を生きる価値のあるものにするには文化が必要です。また私たちは、世界と精神的なつながりを持つスピリチュアルな存在でもあります。だからこそ、逆境に見舞われても何とか立ち向かうことができるのです。日本人は見事なやり方で逆境を乗り切ります。魂の奥深くに根づく太古からの伝統が、日本人の心を育んでいるからです。

私は民俗行事(祭りと神楽)を研究するため、2度にわたり国際交流基金のフェローとして日本各地の様々な県に足を運び、そこの日本の人々と一緒に儀式を体験しました。私は、日本の伝統は時代遅れの時間軸に縛られているものでは決してなく、きわめて創造的かつ熱心な関わりにより各世代がそれぞれ独特な特徴を加えていくような生きた伝統である、ということを強調しておく必要があると思います。こうした民間信仰は魂を揺さぶる日本人の生活のリズムの一部であり、この鼓動がなければ日本の心臓のビートは違ったものになっていたでしょう。

このパンデミックの目的が人間らしい心を壊すことにあるとしても、日本人は、例えば愛知県の奥三河で、第2次世界大戦中に爆撃から身を守るため窓を畳でふさいで神楽を執り行ったように、古くなったものに代わるなにか現代的な方法(オンライン、ズーム、スカイプなど)を必ず見つけることでしょう。村の人々は、祭りのない暮らしなど想像できなかったのです。とはいえ、最新技術のみに頼ってほしくはありません。対面での人と人とのコミュニケーションは、国際的な相互理解を促す上で不可欠なものだからです。

アンジェラ・ホンドゥル

(原文 英語)

What We Do事業内容を知る