ケルンでの収穫

ケルン日本文化会館
中川愛理

 ドイツのケルンに赴任してあっという間に2年が経とうとしています。昨年のレポートを書いたころはまだ赴任して半年、右と左が少しはわかりつつも生まれたてのひな鳥のようによちよち歩きだった私も、2年経ち堂々と歩むことができるようになったと感じております。
 昨年のレポートでは、日本語指導助手(以下、指導助手)の業務全般についてお伝えしましたが、今回はその中からレベルアップを目指して向き合い続けた日本語講座と2023年4月から新しく始めたオンライン多読会を中心にしたいお伝えしたいと思います。

日本語講座

 ケルン日本文化会館(以下、会館)に派遣されている指導助手の業務のうち大きく占めるのは、日本語講座での授業実施です。
 ケルンに赴任して一年目の2021年秋冬学期は1週間に2コマのクラスを担当しましたが、2022年春夏学期からは3セメスター続けてA1レベルからB1レベルまでの授業を5コマ担当しています。(注1)『まるごと 日本のことばと文化』(以下、『まるごと』)のさまざまなレベルの授業を担当したことで、『まるごと』に向き合う時間も自然と増え、回数を重ねるごとに学習者の引っかかるポイントやここではこんな教え方をすると効果的だ、といったポイントが分かるようになりました。また、向き合う時間が増えたのは『まるごと』だけではなく、学習者も同じです。何セメスターも続けて同じ学習者を担当したことで、深く学習者と向き合うことができたと感じています。赴任したばかりの頃の私は学習者にとって、突然、会館に現れた新米教師(!)だったと思いますが、授業後に残って日本語の質問をしてくれる学習者や「週末にこんなことをしました!先生、ここに行ってみてね!」と日常の他愛もない話をしてくれる学習者、「日本語能力試験を受けようか迷っているのですが、こんなことに困っていて・・・。」といった相談をしてくれる学習者も増えました。日々の授業の中でのそんな些細なことが非常に嬉しく思います。教師と学習者の信頼関係は日々の授業の小さな積み重ねで築かれるのだと感じました。
  また、先学期から新たに会館で2つの「みなと」ブレンド型コースが開講され、うち1つのGrundstufe5(A2レベル)のシラバス改訂業務からコース実施までを担当しました。このコースはこれまで、週に2回の授業(120分×2回)を行っていましたが、「みなと」での自習と週に1回の授業(120分)で構成される「みなと」ブレンド型コースに変更しました。受講生には、授業前に「みなと」で自習をして来てもらい、自習したことを授業で教師と一緒に確認する反転授業の方法を採ります。シラバス改訂業務からコース実施までを行ったことで、自身が改訂したシラバスが学習者に合っているのか、授業の中での学習者の反応や授業への参加率を通して身を持って確認することができました。このクラスは毎回の授業の出席率がかなり良く、修了率は100%で、コース期間中に行ったアンケートでは「みなと」ブレンド型コース、授業に対して非常に満足している様子がうかがえました。

オンライン多読会

 2023年4月から月に1度土曜日に、会館の日本語チームが作成したオンライン多読ライブラリーを使って、報告者がオンライン多読会を開催しています。多読会には、会館の日本語講座の受講生や日本語しゃべりーれん(注2)に参加している日本語学習者、それ以外にもドイツで日本語を学習するさまざまな人が参加しています。多読会では、多読のルールをみんなで確認した後に、多読・多観・多聴の時間を設け、最後にみんなでブックトークをします。

オンライン多読会ポスターの写真
オンライン多読会のポスター

 第1回目のオンライン多読会後のアンケートでは、「素晴らしいライブラリー、素晴らしいイベント!」、「ストレスなく読書ができ、他の参加者と会話ができる、心地よい時間だった。」、「家では読書をする時間を作れないことが多いので、読む時間が決まっているのは良いことだ。」といった肯定的なコメントが多数寄せられました。任期終了まで引き続き、ドイツの日本語学習者に多読の素晴らしさ、楽しさを伝えていきたいです。

その他の業務

 その他にも、ケルン市内の小学校やユニクロで習字体験クラスを行ったり、ドイツ最大の日本イベントであるJapan Tagで広報活動を行ったり、めまぐるしい毎日を過ごしています。

ユニクロ@ケルンでの習字体験の写真
ユニクロ@ケルンでの習字体験

2年間を振り返って

 この2年の指導助手の業務を通して学んだのは「プロフェッショナルな仕事とは何か」ということでした。ただ自分に与えられた仕事をするのではなく、どうしたらより質の高い授業、イベントを実施することができるのか、考え、向き合った2年間でした。それは、日々一緒に働く、常勤講師や上級専門家、会館で働く他の職員の姿から感じ、学んだものでした。
 指導助手の任期は2年と決まっています…まだまだドイツにいたいな!もっと学びたいな!と思う気持ちもありますが、残り少ない指導助手としての任期、1日1日を大切に過ごしていきたいと思います。

  1. 注1指導助手の任期期間中に4セメスターを過ごす。講座は2学期制をとっており、秋冬学期10~2月、春夏学期3~7月である。
  2. 注2昨年の指導助手レポートで紹介したドイツで日本語を学ぶ人が日本人と日本語で話すイベント。現在はオンラインでの開催と対面での開催を交互に実施している。

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