ワシントン州での2年間を振り返って

ガーフィールド・ハイ・スクール
今瀬 千鶴

アシスタントティーチャーとして

日々のチームティーチングに加え、教材の作成、日本文化の発表、文化体験、チューター、採点を行いました。教材は、リードティーチャー(以下、LT)と話し合いながら、ユニットの内容に沿ったアクティビティーやワークシートを作りました。日本語が得意な生徒には、少しレベルの高い教材を準備し、遅れがちな生徒には、補助教材を作ってチューターをしました。日々LTと共に、アイディアを出しながらレッスンプランを作成する時間は、教師として学びの多い時間になりました。日本文化の発表では、LTと共に生徒たちと日米の習慣や価値観を比較しながら、日米両方の国について意見交換をし、私自身日本のよさについて再認識することができました。また、料理作りや習字、運動会などの文化体験の時間では、生徒がいきいきと楽しんでいる様子が伺えました。LTからは、「いっしょにプランニングをすることで、生徒に合った教材を作ることができた」「一人一人の生徒をよりサポートすることができた」、生徒からは、「千鶴先生のおかげで、授業がとても楽しくなった」「どんな時も笑顔で教室にいてくれて、元気をもらった」というお手紙をいただき、とても嬉しかったです。

その他ワシントン州での活動

日本語の授業以外では、ワシントン州日本語教師会(WATJ)の活動に参加しました。特に印象に残っている行事は、ワシントン州の高校生対象の日本語イマージョンキャンプと日本語スキット・スピーチコンテストです。
イマージョンキャンプは、日本語で日本文化を学び、体験する行事で、毎年ワシントン州の高校生約100名が参加します。スケジュールや内容の調整、ボランティアの方々への連絡係を担当し、運営統括スタッフとして、2年間携わらせていただきました。スキット・スピーチコンテストでは、定例ミーティングにコンテスト実行委員として参加し、申込者の管理から当日の運営まで、担当させていただきました。
その他、地域の中学校や高校の日本語の授業のお手伝いや、JET Programで日本へ派遣される方々対象の日本語授業も担当させていただきました。日本語教育関係の先生方、在シアトル日本総領事館、その他地域の団体が日本語・日本文化関連の行事を盛り上げる中、その一員として、このような行事に参加できたことは、とても貴重な経験になりました。そして、地域のコミュニティーのみなさまがあたたかく受け入れてくれたことに、心から感謝しています。

異文化交流を通して学ぶこと

私自身、高校時代に外国語を勉強し始め、外国語学習を通して新しい文化や価値観について学びました。私も1人の日本人として、アメリカで出会う人々に日本を紹介し、心に響く何かを伝えたいと考えていました。授業で、感謝の気持ちを大切にするお土産文化、ものを大切にする考え方、生徒みんなが協力し合う日本の学校生活などについて紹介した時、生徒たちはとても興味を持って聞いてくれました。反対に、私もアメリカでの人種差別やセクシャルマイノリティー、教育の不平等、経済格差などの社会問題について話を聞いたり、色々な国にルーツを持つ人々から異文化について教えてもらいました。このような経験を通して、マスメディアから発信されるステレオタイプな情報を超えて、きちんと相手を見て現実をとらえようとする視点を育てることができました。アメリカでも日本でもグローバル化が進んでいく時代に、世界の人が文化的背景の異なる人々と出会い、交流していくことは、多様な人々が一つの社会で共に生きていくために役立つのではないかと思いました。派遣先では、異文化交流の活動として、日本の学校との文通や、姉妹校から日本人の生徒の受け入れをしており、私もそのお手伝いをさせていただく機会もありました。世界で、J-LEAPのようなプログラムや異文化交流を目的とした活動がますます広がっていけばと思います。

任期を終えて

LTは、生徒の興味やニーズ、学習状況に目を向け、柔軟に授業を構成していました。どうしたら生徒が楽しんで学べるか、またどうしたら一人一人の生徒が「できた!」と達成感を感じられるか、常に生徒の目線で考えていました。また、「Everyone gets it!/みんなわかる!」をクラスの目標にし、生徒同士が互いを思いやり、助け合いながら学べる教室づくりをとても大切にしていました。LTと2年間過ごして学んだことは、教えることとは、教師の一方通行ではなく、生徒の一人一人の存在や思いを大切にし、学習意欲が高められるように指導方法に工夫・改善し続けなければならないということです。教師は生徒とともに、成長していかなければなりません。新しい環境で、周りをよく観察し、自分が与えられた場所でどう貢献できるかよく考え、柔軟に行動していくことが大切だと思います。また、プログラム中に、J-LEAPの研修や学会など、教師としてさまざまな知識を吸収するための機会も多くあります。そのような場に積極的に参加し、教師として専門性を高めていくことも大事だと思います。
2年間国際交流基金をはじめとする皆さまのサポートのもと、自分の人生にとって、二度とないかけがえのない経験をすることができました。感謝の気持ちも忘れず、これからも日本語教育に携わっていきたいです。

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