オハイオでの2年間を終えて

ペリー・ハイ・スクール
廣池 桜子

‘Always be a learner’

アメリカで出会った最も印象深い言葉の一つに、‘Always be a learner’(つねに学ぶ人であれ)というものがあります。J-LEAPに参加した2年間は、この言葉の大切さを噛みしめる日々でした。
アシスタントティーチャー(以下、AT)として勤務した2年の間、私は、日本の文化を体験する機会や教材を作り、生徒により良い学習環境を提供することで、プログラムの内容向上に尽力していました。これらの業務を行う中で、生徒やリードティーチャー(以下、LT)との日々の関わりを通じて、私自身、アメリカや日本に関するたくさんのことを学び、同時に、「学び続けることの大切さ」を学びました。
ほとんどの人にとって、人生の中で学校に通えるのは限られた期間のみで、それ以降、学び続けるかどうかは、個人の選択に任されています。その中で、私は、教師として、学校を卒業しても学び続けることを選択した大人であると同時に、生徒にとって、その最も身近なロールモデルであらねばならない、と感じました。
J-LEAPの2年間の勤務を通じて学んだ、「学び続けることの大切さ」は、今後、教師を続ける上で自分の指針になると思います。日々業務に追われて、つい自分が学ぶことをおろそかにしがちですが、これからも、教師であると同時に、学習者として、常に新しいことを学ぶ姿勢を持ち続けていきたいと思います。

子ども達から学んだ、「学ぶことの楽しさ」

受入機関外では、オハイオ外国語協会主催の1週間のサマーキャンプで、アシスタント・インストラクターとして授業を補佐したほか、文化紹介のイベントを企画・運営しました。また、ケント州立大学で行われた、高校生向けのサマープログラムでも同様に授業を補佐し、JOIコーディネーターの方と一緒に、茶道、書道などの文化体験の授業を行いました。
勤務校以外で行った活動のうち、最も印象に残っているのは、学区内7校の小学校、幼稚園を訪問し、折り紙や紙芝居など、日本文化紹介の授業を行ったことです。普段、高校生を相手にしていることもあり、年少の子ども達のクラスで授業をするにあたり、不安を感じていたのですが、暖かく私を迎え入れ、熱心に話を聞いてくれる子ども達の純真さに、心を打たれました。また、そんな子ども達の姿をみて、「新しいことを学ぶのって、楽しいことなんだ。」と実感し、学びの原点とも言える、新しいことを知る純粋な喜びを思い出すことができました。
一生懸命取り組む姿を通じて、「学ぶことの楽しさ」を教えてくれていた子ども達に感謝しています。今後教師を続けていく上で、この「学ぶことの楽しさ」、「知ることの喜び」を生徒に提供できるように、頑張っていきたいと思います。

日米間の若者交流に関して

日米間の若者交流に関して、自分が寄与できたと思う活動は、ブラジリアン柔術を通じて、コミュニティの人たちと繋がりを築き、その結果、日本に興味を持つ人を増やすことができたことです。
ブラジリアン柔術を通じて知り合った方々は、日本との関わりがない方がほとんでした。そのコミュニティの中でお互いの文化を伝え合ったことで、新しく日本に興味を持つ人を増やすことができました。私と知り合ったことで、今後日本語を勉強しようと思う、という声や、私の話を聞いて、次の旅行先は日本にすることにした、という声を聞く度に、嬉しい気持ちになったのを覚えています。
また、彼らとの交流を通じて、「異文化交流」は、お互いの文化を伝えあって、初めて成り立つものである、という当たり前のことに改めて気づかされました。正直なところ、それまでの私は、日本の文化を伝えなければと思うあまり、アメリカの文化に関心を払っていませんでした。彼らと出会い、それまでの自分がいかに独りよがりであったかに気づかされました。
彼らとの関わりを通じて、相手の文化をリスペクトし話に真摯に耳を傾けることで、自分が伝えたいことがより相手に響くのだということ、それが、異文化交流に限らず、全てのコミュニケーションにおいて大切である、ということに気づくことができました。このことは、私にとって大きな収穫であると感じています。

今後の展望と、今後派遣される若手日本語教員の方へ

自分自身の経験を踏まえて、一番に思うことは、日本人が少ない地域に派遣される方こそ、積極的に地域のコミュニティとの関わりを築いてほしいということです。
私にとって、ブラジリアン柔術をはじめ、日本と関わりのない人々のコミュニティの中に入っていくことは、大変な勇気を必要とすることでした。ですから、同じような境遇にある方が、一歩を踏み出しにくいと思う気持ちは大変よくわかります。しかし、先述の通り、派遣期間を終え、自分がやり遂げたこととして一番に思い浮かぶのは、日本に興味のなかった人たちに、日本に興味を持つきっかけを提供できたことです。また、彼らとの関わりを通じて、アメリカの文化についてのみならず、日本の文化について、ひいては自分自身について知ることができ、日本語教師としてはもちろん、一個人としての自分の人生がずっと豊かになったと感じています。
今後派遣される方々にも、勤務校の活動のみにとどまらず、ぜひいろいろなコミュニティに足を運び、たくさんのことを経験して、見識を深めていってほしいと思います。私は今後、アメリカに戻り、日本語の授業でティーチング・アシスタントをしながら、教師として成長するため、大学院で勉強します。これからも、‘Always be a learner’の精神を大切に、いろいろなことにチャレンジしていきたいと思います。

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