ミシガン州での一年間

レイクビュー・ハイ・スクール
稲垣 明子

ミシガン州の日本語教育

ミシガン州は、アメリカの中西部に位置し、五大湖に囲まれた州です。面積は全米第11位で、人口は第8位となっています。冬には雪が多く積もり見渡す限り白銀の世界が広がります。夏は緑が生い茂り、絵葉書のような美しい景色を楽しむことが出来ます。デトロイトを中心に、自動車産業が発達しており、私のいるバトルクリーク市にも、自動車関連の企業が多く活動しています。
あまり知られていませんが、ミシガン州は、日本語学習者が全米で5番目に多い州です(国際交流基金2015年度海外日本語教育機関調査より)。日本語を教えている大学・短大機関は17校あり、受講者は1,793人に上ります。また、高校以下の機関では46校で、3,031人の学習者が日本語を学んでいます(2016年秋時点、在デトロイト日本国総領事館日本語教育調査より)。また、日系企業も多く進出しており、日本人の多いデトロイトやグランドラピッズ、バトルクリークにはそれぞれ日本人補習校があります。私のクラスにも、両親が日系企業に勤めているという学生が多く、学生に日本語を学ぶ動機についてアンケートした際には、「日本語は学ぶと将来役に立つ」と答える学生が少なからずいて驚きました。日本人の友人がいるため、コミュニケーションをとれるようになりたいと答える学生もおり、アメリカの中でも日本に関する関心が高い州の一つだと言えると思います。

Lakeview中学/高校の日本語クラス

私の勤務先の中学校では8年生から日本語のクラスが開講されており、高校では、4年間を通じて日本語を学ぶことが出来ます。昨年度は中学校で約25名、高校で約100名の生徒が日本語を学んでいました。校区で日本語の教員は私のリードティーチャー(以下、LT)1人なので、LTと一緒に、朝中学校で1時間目を、その後高校で3~ 6時間目まですべての日本語のクラスを教えています。
アシスタントティーチャー(以下、AT)としての私の主な業務は、授業でのLTとのティームティーチング、テストの採点や、教材作り等です。ティームティーチングでは、主にLTと会話のデモンストレーションや、発音、文字の書き方の指導などを行っています。また、LTが英語で説明している間は私が生徒のところを回って理解度を確認したり、ペアワークに加わったりして、LTに気づいたことをフィードバックするようにしています。教材の準備に関しては、新しい文法やルールをなるべく楽しく学んでもらえるよう、できるだけイラストを盛り込み、わかりやすくなるように考えながら作成しています。
また、学生たちは授業以外で日本語に触れる機会があまりないため、学生たちが授業で学んだ日本語を使えるように、昨年度はGlobal classmateというプログラムに参加し、日本の高校生と日本語と英語で交流をしたり、学生が自分たちで作った日本語の絵本を近くの小学校の生徒たちに読み聞かせるなどの活動をしました。

夏休みの日本語キャンプ体験

夏休みにミネソタ州で開催されている日本語のサマーキャンプに5週間スタッフとして参加しました。 このキャンプでは、全米から日本語を学びたい高校生が集まり、4週間日本語漬けの日々を送ります。学生たちは日々の授業や2つの大きな日本語でのプロジェクト、キャビンでの生活やクラブ活動などを通じて、1年分の高校の日本語の単位を1カ月で取得するため、あらゆる場面で日本語を使うことが求められます。私はクレジットティーチャーとして、自分のクラスの学生の授業と成績評価を担当していました。LTから離れて1人で教えることに最初は緊張や不安もありましたが、大変ながらも楽しく非常に充実した日々でした。同じ学生を毎日3時間教えるので、いつも教えている高校や中学に比べてだいぶ進度が早く、毎日のプランニングが大変でしたが、学生たちの吸収が早く上達も速いので、教えることにとてもやりがいを感じました。学生たちはつまらないとすぐ集中力が切れてしまうので、学生たちの関心が途切れないよう常に意識しながら授業を行うようにもなり、とてもいい勉強になりました。学生達と同じキャビンで寝起きを共にするので、教えること以外の大変さもありましたが、学生達ととても濃い時間を過ごすことができ、忘れられない夏の思い出になりました。このキャンプを通じて、教師として1人で教える経験を積むことができたので、J-LEAPの2年目にもキャンプで得たものをぜひ活かしていきたいです。

1年間が終わっての所感と2年目の展望

最初高校で働き始めた時には、アメリカの高校の自由な文化やシステムの違いなど、驚きや新鮮に感じられることが多くありました。アメリカの高校では、バックグラウンドや家庭環境、学力、文化、日本語を学ぶ意欲が異なる様々な学生たちが一つのクラスで一緒に学ぶので、多種多様な学生に同時に対応していくことが最初はとても難しく感じられました。色々と落ち込むこともありましたが、時々学生がくれる温かい手紙などにすごく励まされ、また頑張ろうと思えました。学生の中には、日本語を学ぶ意欲が低い学生もいますが、日本語のクラスをきっかけに、少しでも日本や日本語に興味を持ってもらえたり、いつかどこかで私が教えたことが役に立ったらいいと、気長に種をまくような気持ちでこれからも頑張りたいと思っています。また、アメリカで生活する中でこれまでに色々なアクシデントがありましたが、そのたびにいつも周りにいた見知らぬ人が助けてくれ、そのことにとても感謝しています。日本にいた時には知らなかったアメリカの人の優しさや温かさをこの1年を通じ沢山知ることが出来ました。
2年目は、1年目の経験を活かして、より学生にとってわかりやすく、楽しめる授業をしていきたいです。また、機会があれば、他の日本語を教えている機関や、J-LEAPプログラム同期の学校に授業の見学に行かせていただいたりして、色々な日本語の教え方を吸収し、日本語教師としてもっと成長していきたいです。

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