2年間の派遣を終えて

サン・ディエギート・ハイ・スクール・アカデミー
日暮 康晴

受け入れ校での活動

受け入れ校の授業では主に宿題の確認や授業内活動の答え確認、漢字や語彙のゲームの際の進行、文化紹介のスライド作り、及びその実施などを行いました。派遣2年目からは授業の進行を任せられることも多くなりました。経験豊富なリードティーチャー(以下、LT)からは毎日学ぶことばかりで、教え方の改善点・アドバイスや自分では気付いていなかった癖の指摘など、大切なことをたくさん教えていただき、この2年の間にしっかりと教師として成長することができたと感じています。文化紹介のスライドは主に節分やお月見などの行事についての発表で、今の日本人がそれらのイベントを生活の中でどのように楽しんでいるかを伝えるように心がけていました。また、デジタルポートフォリオをはじめとするオンラインサービスの活用など、自分が得意なことを活かしてLTのサポートができたのはとても良かったと思います。LTが授業を主導している際にはあえて目立たないように学生の様子を確認することもありました。一歩引いて教室を見渡してみることで、前に立っているときは見えなかった学生1人1人の様子がわかるようになり、そのことを授業計画の提案や実際の活動に活かすことができました。時には1クラスが40人以上になることもあり、クラスをまとめるだけで一苦労という時もありましたが、時間が経つにつれてクラス全体の雰囲気がどんどんまとまっていくことを実感できました。

授業外での活動

授業外では主にJapanese National Honor Society(日本語を勉強する学生の活動団体、以下JNHS)の活動に参加していました。学校内外にかかわらず、日本語・日本文化関連のイベントや、ビーチ掃除などのボランティア活動など活動内容は多岐に及び、自分は学生の監督役として参加していましたが、学生と一緒になって活動を行うことがほとんどでした。教室・学校の外でいきいきと活動する学生の姿は教室内で目にするのとはまた違い、とても新鮮です。活動の1つに、近隣の中学校での放課後日本語・日本文化クラスがありました。派遣1年目にそのクラスに来てくれていた学生が翌年高校に入学し、日本語のクラスに入って「あのクラスが楽しかったから日本語を続けたくなった」と言ってくれた時には、自分のしたことが繋がっているのだな、と感慨深く感じたことをよく覚えています。
ACTFL(全米外国語教育協会)やCLTA(カリフォルニア州外国語教師会)のカンファレンスでは、上で挙げたデジタルポートフォリオについてLTと一緒に発表させてもらえました。また2年目のCLTAカンファレンスでは、それまでの自分の経験・アイデアをまとめた1人での発表の機会もいただきました。教室の外でも色々な形で、たくさんの経験を積ませてもらったと思っています。

学生を導くものとして

自分自身、アメリカ派遣中に様々な方と出会い、色々な形の学びを得ることができましたが、それよりもこれからの国際社会を担っていく学生たちの支えになれたことが自分にとって一番の経験だと思います。日本に行ったことのない学生であっても、日々の授業活動の中で他の言語・文化について楽しみながら知り、それらを尊重することを学んでくれていたらそれに勝るものはありません。
また、自分の派遣校は日本の高校と交流があり毎年日本から高校生が訪れていますが、その交流についても、直接顔を合わせる以外にオンラインサービスを利用した交流の形を考え、実施する機会がありました。テクノロジーの発達で簡単に世界中と繋がることができるようになっています。もちろん自分が主体となって他者とコミュニケーションすることも大事だとは思いますが、日本語教師という立場にとって学生のコミュニケーションをどう支えていくかということもこれからの大きな課題になるなと強く感じました。

2年間を終えて

この2年間で得たものは本当に自分の大きな財産になりました。これまでもいくつかの場所で教育実習などを行った経験はありますが、こんなに長く1つの現場にいることはありませんでした。2年はあっという間なようで長く、長いようであっという間でしたが、2年いたからこそ見えるようになったものは確かにあると思います。しっかり、じっくりとたくさんのものを見て、たくさんのことを考えることができました。毎日の活動を支えてくれたLTの先生、学生たちはもとより、出会ったすべての方に感謝しています。これからもこのようなプログラムが継続され、各地の日本語学習がより盛んになればと思います。今後は海外の方に日本語・日本文化の魅力を伝えることはもちろんですが、それと同時に日本語教師・日本語教育業界に興味がある人に向けて情報発信する場ができたら良いな、ということも考えています。帰国後は大学院で日本語教育関係の研究を続けていく予定で、これからも日本語教育には何らかの形で携わり続けていきたいです。

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